【2】ずっと真夜中でいいのに。『正しい偽りからの起床』を読む

前回の補足として

 前回は本題の前置きの前置き、どんなに暇があっても読み飛ばす同意書や注意書き程の意味しかありません。書かない理由に対して書く理由が少しあるというだけの記事でした。
 その中でも問題意識の一部は書きましたが、それだけをもって試みの意義や目的とするのは弱かったかもしれません。ですから、不備があることを承知で、もう少し付け加えたいと思います。
 要するに、今回も本題に入れません。


私の問題点と解決

 前回挙げた「(楽曲への)考察記事の不完全さ」という問題点。これはまだ残る読解の余地への指摘でもありました。より深い読解のためには考察対象や問題設定を明確にするべきだとも書いています。しかし、私は音楽やポップカルチャー、文学面についても自信がなく、特に「詩」という分野は馴染みがありません。適切な文脈を踏まえた位置づけを行うのは私の能力をはるかに超えています。専門分野がないのであれば、読解での広がりも期待できないでしょう。
 また、SNSやライブ、雑誌等にも親しんでいないので作者本人の意図するところを理解しきっていません。しかし、これから知識を中途半端に仕入れても素直な読解の妨げになってしまうと考えるので、ここで深く参照し紹介することはしません。
 すると私の語る範囲は限られ、その価値もやはり些細なものになります。自己満足であってもそれは寂しいものです。上記の問題に対して、新たな視点の獲得を目指し『アルバム』を読解することにしました。
 音楽・歌声・パフォーマンス・MV等は基本的に対象とせず、歌詞から考えます。さらに解釈を一曲のうちに限定させず、アルバム内の数曲を横断する形で捉えてみようと考えました。

その意義

 個人の意見ですが、私たちの生活において音楽が占める範囲は拡大しているように思います。特にサブスクは技術的にもサービス的にも、好きなタイミングで作品に接続可能というのは画期的でした。
 今やもう触れる機会がありませんが、十年ほど前の実家にはコンポがありました。CDの入は稀で、代わりにレンタルしていました。買い物の後にTSUTAYAかGEOへ立ち寄り、旧作10枚1000円で借りる。翌日の返却までにPCにデータを取り込み、歌詞カードをコピーしてまとめる。楽曲は無地のディスクに焼き直すか、厚いUSBメモリの様なウォークマンに上限いっぱいまでコピーして聴きました。当時もシャッフル機能はありましたが、アルバム単位で一曲目から順に聴くのがほとんどだった気がします。学校に歌詞カードだけを持っていって、友達と回し読みした思い出も懐かしいです。
 少なくとも私はこの時期、『アルバム』を楽しんでいました。

 私はここで昔の行動様式を取り返そうと言いたいのではありません。種々のサブスクや現代的な楽しみ方は実際に定着しつつあります。ただ同時に、アルバム単位で曲を聴くことの価値はむしろ高まっているのではないかと考えたいのです。これを意義と言ってもいいでしょう。

私が意味するところの「研究」

 先ほど作者の意図や作品背景について、中途半端に知識を仕入れないつもりだと書きました。ここについても少しだけ補足します。
 特に近現代の文学の研究で、「作家・作品論」「テクスト論」という言葉に必ず触れるはずです。この2つは読者が作品に向き合う姿勢を表した言葉です(正確な理解は他の妥当な記事、書籍類にあたっていただきたいですが)。前者は、作者が意図する唯一の正しい解釈に力点を置いて臨みます。後者は、ある作品を読者としてどう読み取れるのかという部分に力を入れます。注意しておくと、「どちらが正しい・優れている」とかいう話ではありません。作家論への批判からテクスト論への変容は事実ですが、時代を経るにしたがって自伝的な要因を重ねる価値も検討されるだろうからです。

 小説や物語ではなく歌詞を読み込もうとする場合に、この2つを念頭に置いた読解は難しいかもしれません。私の聴いているアーティストに限っても、私自身の楽しみ方としても、どちらの姿勢で向き合うかは時と場合によります。音楽体験は、もっと大きな総体として受け取められています。
 ただ、研究者でもない私がそれでもここにこだわるのは、期待と諦めがあるからです。
 ずとまよを取り巻く独特の世界観は、この視点で捉えることも難しくないほど厚みがあります。解釈の際に自伝的な何かを読み取ろうとすれば、こぼしていくものが多くなります。
 そして、何度も触れたように私は力不足です。だからこそ、区分もないままに感想を書きつけるより、不格好でもテクスト論として整えてみた方が解釈の幅は広がると思っています。

歌詞の引用について

 歌詞の引用についての問題が最近でもSNSのトレンドに上がっているのを見かけました。この記事以降も直接かかわることでかなり心配はあります。引用のルールに従って記述しますが、至らない部分があれば率直なご指摘をいただければと思います。

最後に

 私の拙さから、読解の深さや妥当性以上に論述の姿勢についての批判が予想できます。ですが、私への批判が広がった先で多くの人が深く広く考えてくれるなら、むしろそれは喜ぶべきことでしょうね。

 次回投稿記事からアルバムと収録曲の概要に触れ始めます。

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