中国残留孤児

中国残留日本人の国籍問題 ②

中国残留日本人の国籍問題 ①のおさらい。

中国残留日本人一世
基本的に中国残留日本人一世は日本国籍を死ぬまで保持し続ける。
これは中国残留孤児、中国残留婦人、中国残留邦人全てにおいて言える。
ただし、①日中国交正常化(1972年9月29日)以降に自らの意思で中国国籍を取得した場合、日本国籍が喪失する。
ちなみに、②中華人民共和国成立(1949年10月1日)から日中国交正常化(1972年9月29日)までに日本国籍を離脱して中国国籍を取得したとした場合、日中国交正常化の日が日本国籍喪失とされるので、一世であっても① ②のケースになると日本国籍を再取得する場合は帰化となる。

中国残留邦人二世

一世が日本人男性で日本国籍を離脱していない父の場合
二世はどの時期に生まれても日本国籍が取得できる。もし、何らかの事情で日本への出生届け提出の機を逸した場合は就籍にて日本国籍が取得できる。「残留日本人はスパイなのか」に登場する元日本兵の長男、次男、三世もこれに該当する。

一世が日本人男性で自らの意思で日本国籍を離脱した父の場合
二世が日中国交正常化以前に生まれていれば日本国籍が取得可能だが、二世が日中国交正常化以降に生まれた場合、父の日本国籍離脱の時期が二世の誕生日よりも早いと日本国籍の取得不可能、遅ければ取得可能になる。

一世が日本人女性の場合
二世が満州国崩壊から中華人民共和国成立までの間に生まれていれば、婚外子とみなされる場合があるので、日本国籍取得できる場合がある。
これは当時、中絶は富国強兵の施策のもと法律で原則禁止されてたので満州国崩壊(ソ連侵攻)から避難の途中で、ソ連軍や朝鮮人・朝鮮人保安隊などから強姦され妊娠した女性の多くが絶望して自殺をしてしまったが、中には出産をした人もいるので考慮されている。

ちなみに、二日市保養所の医務主任だった橋爪将の報告書によると、施設の開設から2か月間で強姦被害者の加害男性の国籍内訳は、朝鮮28人、ソ連8人、支那6人、米国3人、台湾・フィリピンが各1人。1947年秋の施設閉鎖までに約400~500件の堕胎手術をおこなったと推計された。

九州大学の産婦人科医だった、昇勇夫さん、101歳。
昭和21年から翌年にかけて、引き揚げの途中で性的暴行を受けて妊娠した女性の中絶手術に関わったことを告白。

「中絶は禁止されているのは承知のこと。
罪をかぶってでも助けてやりたい。
そういう気持ちが先にあった。」
九州大学が行った中絶手術は数百に上るといいます。(引用元

続き
二世が中華人民共和国成立後に生まれた場合、1965年以降に生まれたか、それよりも前に生まれたかによって国籍の取得方法が異なる。
まず、1965年以降の生まれであれば「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の批准に合わせて発効した改正国籍法(それまでの出生による国籍取得が父系主義だったのを廃して両系主義を採用)により母の国籍継承(取得)ができる。
ただし、これは一世が「天災その他その責めに帰することができない事由によつて同項に定める期間内に届け出ることができないとき」であり、届出をした日から日本国籍を有することになる。
二世が1965年以前に生まれた場合は父系主義により中国国籍となり、出生により日本国籍は取得できない為、帰化による国籍取得となる。

「国籍法及び戸籍法の一部を改正する法律」(昭和59年法律第45号)(国籍の取得の特例)第5条
昭和四十年一月一日からこの法律の施行の日(以下「施行日」という。)の前日までに生まれた者(日本国民であつた者を除く。)でその出生の時に母が日本国民であつたものは、母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつたときは、施行日から三年以内に、法務省令で定めるところにより法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
2 前項に規定する届出は、国籍を取得しようとする者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代わつてする。
3 第一項に規定する届出をしようとする者が天災その他その責めに帰することができない事由によつて同項に定める期間内に届け出ることができないときは、その届出の期間は、これをすることができるに至つた時から三月とする。
4 第一項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

以上は二世が出生によって日本国籍をどこまでとれるのかという話であって、帰化による国籍取得とは異なる。
なお、「中国に長期間滞在しづらくなるのが嫌」等の理由で、戸籍に関する各種届出を敢えてしないで、中国の旅券で入国している者については、たとえ一世でも法務省からは永遠に中国人として処遇され続ける。
つまり、中国の旅券で中国を出国して、日本に中国の旅券で入国をした場合である。

また、三世の国籍取得についても、これらの解説に当てはまる。
例えば、父が日本人(一世)、母が中国人の間に女性(二世)が生まれたとする。この女性(二世)が中国人男性と結婚して、三世が1965年以降に生まれていれば日本国籍取得ができる。ただし、女性(二世)も日本国籍取得が必要になる。

二世の多くは、中華人民共和国成立(1949年10月1日)から日中国交正常化(1972年9月29日)までに生まれており、文化大革命などもあったこの混迷期に日本へ出生の届出をする事は困難だった為、本来であれば出生により取得できるはずの日本国籍が取得できていない二世がほとんどであった。
その為、就籍による手続きで日本国籍取得ができる。

就籍
日本人でありながら戸籍のない者について新たに戸籍に記載されること。就籍をするには家庭裁判所の許可を得るか,または判決を得て就籍の届け出をすればよい (戸籍法 110,111) 。しかし,出生届が怠られたために無籍となっている場合にその届け出義務者があるときは出生届をすることにより,また乳幼児の場合には棄児発見調書によって同一の目的を達することができる。新たに就籍する者については,原則として,父母がある場合にはその戸籍に入籍し,父母がない場合には自由に氏を選定し新戸籍が編製される。(引用元

また、就籍については「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進並びに永住帰国した中国残留邦人等及び特定配偶者の自立の支援に関する法律」の(就籍等の手続に係る便宜の供与)第十二条で、手続を円滑に行うことができるようにするため、必要な便宜を供与するものとされている。この法律は一世が死後も適用される法律である。

例えば、日本人男性(一世)が死亡していたとしても、一世の妻である中国人女性との婚姻事実が証明できれば、二世や三世の就籍は可能となる。
就籍は出生届けをすることにより新たに戸籍に記載されるので、①日本側で日本人男性(一世)との婚姻事実を作る(結婚届提出)、②その後に二世の出生届けをすれば日本国籍取得となり、三世も可能となる。
①は死後婚姻という不自然に見えるが、就籍は「出生届けをすることにより新たに戸籍に記載される」ので、①をしないと出生による日本国籍取得ができないため、①をする必要がある。

最後に日本や中国では二重国籍は認められていないが、離脱に関して努力規定となっており(一般人の場合)、取り締まりなどをしているかと言えばしていない、二重国籍者の人数すら把握できていないのが現状である。
離脱ができないのは中国共産党のスパイだからだ!と言う人もいるが、以下の中国国籍法を見ればデタラメだと言う事が分かる。

中国国籍法
第十条
中国の公民は次の条件の一つを備えた場合には、申請、許可を経て中国国籍を離脱することが出来る
1.外国人の近親であること
2.外国に定住していること
3.その他正当な理由があること
第十一条
中国の国籍離脱を申請して許可された者は中国の国籍を失う。

以上が中国残留日本人の国籍解説になる。
とても複雑だが、要点を押さえれば問題無く理解できると思われる。

中国残留日本人は「背乗り(戸籍の乗っ取り)」というイメージが多い。
確かに過去、中国残留孤児だと言って日本に渡ったという話もあるので、少なからず背乗りはいるだろうと私も思っている。

戦後、残留孤児の帰還が始まると、たとえば方正ではみんな残留孤児だと言い張って3万5千人が日本に渡った。残留孤児の中には金を取って、ただの支那人を「身内」に仕立てる不埒者もいた。(折節の記 正論2012/7月号 より)

しかし、元通訳捜査官の坂東忠信氏のこの発言「「残留孤児の9割は偽物だよ」と私が調べた中国の警察官(彼も残留孤児関係者を偽装)がゲロってます。」には注意が必要である。

全否定する訳では無いが、残留孤児関係者を偽装した中国の警察官がゲロっているだけであってエビデンスは無いので、これを真にすると危険である。
厚生労働省が公開している中国残留孤児の判明率はこうなっている。

集団による訪日調査では、2116人中672人が判明(31.8%)
情報公開調査によるものでは、73人中10人が判明(13.7%)
(訪日調査の実施状況及び身元判明率の推移(平成18年8月31日現在)

集団による訪日調査と情報公開調査を合わせても3割以上は判明している。
調査は肉親とのDNA鑑定も含まれるので、有名だからと言って情報をそのまま鵜呑みにはしない方が良いだろう。

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