みんなの日本語第10課・文型分析まとめ(パワポ画面PDF付)
こんにちは【日本語教師になる】ももこです。
この動画は、日本語を教える人のための動画です。この動画では、日本語の教科書「みんなの日本語」の教材分析をします。文型を分析し文型に関する知識、注意すべき点などをまとめ、動画視聴後、適切な教案・教材が作れる知識を得ている状態を目指します。
今回は、「みんなの日本語第10課」をまとめます。
今回の動画も
● 第10課の概要と学習目標
● 文型 ① ターゲットの文型を確認する。
② 各文型の解説
● この課でできる活動例
● 教師が知っておくべきこと
という内容でまとめていきます。
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みんなの日本語 第10課 概要と学習目標
●第10課の概要
・存在、所在を表す「あります/います」を学習します。
ものの存在、所在を言う場合、「あります」
人の存在、所在を言う場合、「います」を使います。
所有を表す(例えば「兄が二人います」のような)使い方は第11課で助数詞と一緒に勉強します。ややこしくなるので、所有を表す使い方はこの課では触れないようにしましょう。
・存在、所在の場所を表す「(場所)+に」がたくさん出ています。「Nの隣に」や「佐藤さんの右に」のような、位置を組み合わせた
「N1(もの/人)のN2(位置)に」という言い方を勉強します。
・存在するもの(存在する主体)が複数あり、その中のいくつかを例示して述べる場合の言い方「N1やN2」 を例文4で勉強します。
・今回の第10課では、主体を「が」と「は」で言います。学習者に詳しく説明する必要はありませんが、教師はこの2つの違いをよく知っておく必要があります。
これらを踏まえ、
●学習目標
人(動物)や物の存在について話せる
人(動物)や物の所在が言える。
自分の国や町にあるものを紹介できる。 などが考えられます。
もし、「こんな学習目標を考えました!」というアイデアがあれば、ぜひ、コメント欄で教えてください。
● 文型
① ターゲットの文型を確認する。
・この課で教える文型を確認します。 教える文型は練習A(ページ)にまとめられています。
学習項目一覧でまとめられている文章は、
このターゲットの文型を文法説明風に書くとこうなります。
書く文型の解説をする前に、文型を俯瞰して捉え、比較しましょう。
今回の文型は「あります/います」という述語の違いの他に、別の分け方で2つのグループに分けることができます。
「存在文」と「所在文」です。
1〜3が「存在文」、4、5が「所在文」です。
この存在文と所在文の違いは
・主体に「が」をつけるのか「は」をつけるのか
・場所を表すことばの置かれる位置
この2点です。
では、もう少し詳しく見ていきましょう!
存在文とは、主体が存在することを述べる文です。「あそこに電話があります。」であれば「電話がある」という電話の存在を述べています。
それに対し、所在文とは、話し手が、聞き手が既にその存在を知っていると想定しているものが「どこにあるのか」所在を述べる文です。「ミラーさんのうちは大阪にあります。」であれば、話し手が、聞き手が既にその存在を知っている「ミラーさんのうち」について、「大阪にある」と、ミラーさんのうちが「どこにあるのか」を述べています。
この所在文では、聞き手が既にその存在を知っているものの所在を言うので、「あります/います」の主体はすでに知っている名詞=つまり、旧情報です。
第59回動画「は」と「が」の違いざっくりまとめを思い出してください。
旧情報は「は」と「が」どっちになるんでしたっけ?
そうです、旧情報は「は」になり、主題化されるんでしたよね。主題化されると文頭に置かれることが多い。しかも所在文は「どこにあるのか」を述べるので、「どこ」という場所の情報と「ある」という述語の結びつきが強い。
これらを総合的に考慮し、旧情報についてどこにあるかを述べる場合は
Nは場所にあります。「主題、場所、述語」という語順になります。
存在文の方に戻って語順を考えてみます。
「が」を使う場合、日本語の基本の語順は「ガ格―ニ格―述語」の順です。しかし、たとえニ格でも、「時間」「場所」の要素はガ格より前に来るのが普通です。「場所」や「時間」の情報が状況設定に関わるためです。状況設定である「あそこに」を伝えたのちに、「電話がある」といった方が、聞き手に効率良く伝わります。だから存在文の場合、場所にNがあります。「場所、ガ格、述語」という語順になります。
学習者によっては、主語の感覚で「電話があそこにある。」の方がわかりやすいと感じてしまうかもしれません。しかし、日本語においては、状況設定である「あそこに」を伝えたのちに、「電話がある」といった方が、聞き手に効率良く伝わる!という日本語ネイティブの「感覚」みたいなものが存在します。え〜感覚??と思うかもしれませんが、その「感覚は大事!」だと私は思います。「先に場所を言ったほうが、ネイティブにとっては効率良く伝わる!だから、語順はこうなる!」時にはこういう強引と思える説明でいいんじゃないでしょうか。だって、私の手元にある文法書を紐解いても、「状況設定に関わるため文頭に置かれやすい」としか書かれていません。しかも、「状況設定に関わるため文頭に置かれやすい」という説明の仕方は論理的というよりは感覚的な感じだと思います。でも仕方ないですよ。言葉なんてそんなもんだから。ここは日本語ネイティブの感覚に自信を持ちましょう!
理由と語順がわかったところで、教える時のポイントを確認します。新情報のものを「が」で述べ、「場所にNがあります、います」の順番
旧情報のものを「は」で述べ、「Nは場所にあります、います」の順番です。「が」「は」と語順の組み合わせを間違えないように気をつけましょう。
さらに、この第10課ではもう一つ大切なポイントがあります。
述語「あります、います」の使い分けです。
主体が無情名詞の場合に「あります」を使用し
主体が有情名詞の場合に「います」を使用します。
無情名詞とは、意思のない物、植物、無生物のことで
有情名詞とは、意志のある、人間を含む動物のことです。
この使い分けは学習者にしっかり覚えてもらいましょう。
無情、有情の違いは、そのものに「意志があると感じられるか?」ということがポイントです。
例えば、「エビ」を例に考えてみましょう。水槽でエビが泳いでいるとします。エビは水槽に「いる、ある」どちらを使いますか?「水槽にエビがいます。」といいます。
しかし、今日はエビフライを作ろう!と、スーパーでエビがパックに詰められて売られているのを見つけたとします。「あ、あそこにエビがあります!」といいませんか?まだ生きていて、ちょっと動いたりしていても、パックに詰められて売られている状態だと、スーパーだと「エビがいます!」より、「エビがあります!」と言いたくなります。
水槽を泳ぐエビと、スーパーでパックに詰められて売られているエビ、生きているか死んでいるかも多少違いはありますが、実は「意志を持って動いているかどうか」という判断が本質で、私たちは自然と「いる」と「ある」を感じ、使い分けています。この違いが有情名詞と無情名詞の違いです。
植物に関しては命がありますが、日本人は植物に「意志を持つもの」と感じないようで、「ある」を使います。「木がある」とは言いますが、「木がいる」とは言いません。
存在する人や物の数量を限定する言い方「数量詞+あります、います」そして、所有していることを表す「兄弟がいます」のような所有文は、次の第11課で学習します。学習の負荷を抑えるためにも、第10課では数量詞は出しません。
② 各文型の解説
ここから、この課で学習する各文型について確認していきましょう。
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