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《世界の医療事情》vol.19|少子化の現状と対策

日本の2022 年の出生数が、国の推計よりも11 年早く、80 万人を割っていたことが明らかになりました。少子化が進むと労働人口が減少するため、年金などの社会保障制度や経済成長にも影響が出ることは明白です。
医療への直接的な影響は、「健康保険料の負担増加」や「医療従事者の不足・人材育成の困難」、「地方の衰退」、これらによる「健康格差の拡大」
が懸念されます。
他の国を参考にしながら、社会保障制度の見直しや育児・介護支援策、医療・介護人材の育成、移民・難民受け入れの議論など社会全体で考える必要に迫られています。

GDP(国内総生産)比は、日本はフランスと比較すると約半分。
日本では、子育て世代 よりも高齢者向けのサービスに国費が多く使われる傾向にある。
2023 年4 月にこども 家庭庁が発足され、子ども予算を倍増する方針。
イーロン・マスク氏が「出生率が死亡率を超えるために何かを変えない限り、
日本は いずれ消滅する」とTwitter で発言したため世界で話題に。
出生数は2015 年までは 年約1%程度の減少だが、
2016 年以降は毎年3.5%程度減少し、少子化が加速している。


韓国:日本以上に深刻な少子化が進行中

2021 年の出生率が「0.81」と世界でも最低水準の韓国。
徴兵制度と就職難の影響で、大卒の新入社員の平均年齢が31歳と高いのが特徴です。また、結婚の際は男性が住宅を購入するケースが多く、不動産の高騰も未婚や晩婚の要因とみられています。結婚後も、教育にかかる経済的負担などから産み控えが進行。
しかし男性の育休ボーナス制度が導入され、男性の育休取得者が2021 年には26.3%まで上昇。2022 年からは育休中の父母に賃金の100%を3ヶ月間支給する制度も始まり、3 人目からの大学費用も全額支援されます。
これらの政策には日本円にして約8.7 兆円(2025 年時点)かかると予想されていますが、出生率上昇にはまだ結びついていません。

フランス:産めば産むほど有利なシステム

児童関連の手当が厚いことで知られるフランス。
出産費は無料、入院費・羊水検査・無痛分娩も保険の対象です。産後は骨盤底筋リハビリの処方箋が出て、無料で「ペリネケア」が受けられます。
2021 年には、女性は43 歳まで、未婚や同性カップルも不妊治療費が保険適用になりました。医療以外にも、3 歳以上の学童保育から高校まで学費が無料、子どもを3 人以上養育すると所得税の減税や年金加算、収入に応じた住宅補助手当など経済的な支援も充実。
フランスの出生率はアフリカ系やアルジェリア系の移民女性の多産によって2006 年以降2.0 を超えていましたが、移民2 世・3 世は少産傾向となり、2022 年には1.8 となっています。

ハンガリー:まさに「異次元」の少子化対策

GDP の4.7%を少子化対策に当て、移民に頼らず10 年かけて少子化を食い止めたハンガリー。2011 年に1.23 だった出生率を2021 年には1.59 に押し上げました。
2017 年から体外受精費用が全額補助され(回数制限あり)、国営の不妊治療機関も12ヶ所に増加。医療関連以外にも、結婚奨励金制度や約3 万ユーロを無利子で借入でき、3 人目が生まれれば全額返済不要に。大学学費のための学生ローンを借りていた女性が妊娠すると返済停止や免除、3 年間の有給育児休暇、4 人目出産で定年まで所得税免除、両親の代わりに孫を世話する祖父母には出産前の給与の70%に当たる育児手当など、まさに異次元の対策が世界の関心を集めています。

中国:一人っ子政策から180 度転換へ

急激な人口増加と食料難を懸念し、「一人っ子政策」を進めてきた中国。人工中絶の強要や男女比の不均衡が長年問題視されてきました。
2016 年以降、出生率が急激に低下し、2022 年には約60 年ぶりに人口が減少。労働力不足に対応するため2016 年に2 人目の出産を解禁し、2020 年には出生率1.34 と日本と同水準に。2021年には3 人目の出産が解禁し、「人口・計画出産法」に合わせて各地で少子化対策が本格化しています。
産休や育休、出産介護休暇制度が手厚くなり、出産費軽減のため医療保険と出産保険の加入が推進され、育児補助制度も実施。2023 年には体外受精などの生殖補助医療や無痛分娩も保険適応となり、動向が注目されます。

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