短編 スプラッター

僕は今、殺されようとしている。
まさか都市伝説が本当だったなんて…
廃病院の奥にある手術室で縛られている現実。
苦しい、恐怖で息が辛い。吐きそうだ。

ガタンと扉が開く。
燕尾服を着た男が入ってきた。
「ご気分はどうですか?」
柔和な笑顔で尋ねてくるが彼の目は光を反射してない。

口を塞がれている僕は答えることができず、ただ、相手を見ることしか出来ない。

「よろしい様ですね。では、解剖を始めます。あぁ、そうだ。ちなみになんですが服は脱がせませんよ。服は肉体の一部ですというのが私の考えでしてね。服を着たままやらせていただきますので。」

吐きそうだ。
逃げたい。
感情で喉がつまり、恐怖で寒く、身体が震える。
柔和な笑みを張り付けた男が知らない器具を持って近づいてくる。
嫌だ!
嫌だ!
嫌だ!

器具が僕の身体に触る瞬間。
ドンッと音と共に熱い液体が飛び散る。
液体が少し目に入り、目が痛いのを我慢して瞬きをする。

血が目に入ったこと、そして、その血が僕のものではないことにも気がついた。
目の前の燕尾服の男の首に斧が深く食い込んでいる。
燕尾服の男は驚いた顔で激しく瞬きをして、崩れ落ちた。

燕尾服の男の後ろに立っているのは知らない白衣の男だった。
「アハハッこんばんわ!私は江藤と申します!いやぁ良いタイミングでした。満足満足です!」

誰か知らないけど助かった!
力が抜ける。
涙が溢れて目が熱い。
助かった!助かった!助かった!
安堵で身体の力が抜ける。
そして、あわてて江藤に縄をほどいて欲しいと目で訴える。

「ん?あぁ縛られているんですね!いやぁちょうど良かった!」

えっ?
何を言っているのだ?
縛らていてちょうどいいとは?
恐怖で身体が強ばる。
強ばる僕を見て江藤が笑う。

「アハハッいや、私は貴方を殺したりしないですよ勿論!」

じゃあほどいてくれ!
お願いだから!
こんな悪夢を終わらせてくれ!

江藤はトランクからガチャガチャ何かを取り出す。

「アハハッ、ただ私は貴方に用があるのですよ!今殺されかけた貴方の目の前で殺そうとしたこの男がバラバラに解体されたら貴方はどんな反応をしますか?興奮しますか?恐怖しますか?私はその反応がみたいのです!自分を殺そうとした人間が目の前でバラバラにされて殺される。人によっては喜んだり、興奮したり。泣きじゃくる人もいます。何も感情を出さない人も!その反応は様々で私を最高に興奮させてくれるのです!」

何を言っているんだ!?
止めてくれ!
吐きそうだ!
恐怖なのか嫌悪感なのか悪夢に悪酔いしているのかぐらぐらする。

「さあっ始めましょう!」
そう言うと江藤は倒れた燕尾服の男を一度抱えて、場所を移動させた。
まだ息がある。
微かに動く男の胸をみて自分が解らなくなる。誰が殺されるのか解らなくなる。

燕尾服の男を動かした江藤は僕の身体を起こし、目に器具をはめた。
目が閉じれない。
現実しか見えない。

「さぁ、準備か整いました!」
近くで見た江藤は満面の笑みを浮かべているが彼の目は光を反射していない。


「アハハッでは! ショウタイム!」


目が閉じれない僕の前で燕尾服の男は解体された。

目の前が血で埋まる。

臭いが頭のなかに入り込む。

惨劇は誰に起こったのか僕にはわからない。


そして、
僕がどんな反応をしたのかは白衣の男しか覚えていないだろう。







ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?