マガジンのカバー画像

短編小説

21
運営しているクリエイター

2015年3月の記事一覧

短編小説 人生

明日の12時に僕は死んでしまう。
知ったのは一週間前だった。
知った時から僕の人生が始まった気がした。
死を怖がって泣きたい気持ちもなく、ただ、したいことを始めた。
明確な区切りは安心をもたらしてくれる。
人生の終わりに気づいたのはそれくらいだった。
食べたいものを食べて、笑いたい時に笑う。
殴りたい奴を殴って、むかつく奴に大声で文句を言った。
僕は人間から解放されたモンスターになった気分で町を歩

もっとみる

短編小説 飴

ムカつく

なんでそんな顔でこっちを見る

「こっち見んな」

「なんでさ、いいじゃん別にぃ」

いいわけないだろ。

好きなんだよ

でも、好きな人いるんだろ

だからさ……

「ウザイこと、この上ないからこっち見んな」

俺を見ないでくれ

見透かされたら、惨めなんだよ。

「うぷぷっなにそれ?」

友達の関係でも辛いんだ

ほっといてくれ

どうしようもないのが滲み続けてるんだ。

「とにか

もっとみる

短編小説 ぐるぐる

ぐるぐる
お父さんは僕を抱えて廻ってくれた。
僕の笑い声がアクセルになって、
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
あの時の楽しさは大人になると失ってしまう。
その事に気づいたら、
大人になったことに嫌気がさした。
煙草も酒も、
慰めにはなるが、
あの時のお腹から溢れる楽しさを味わうことはできない。
ぐるぐる
ぐるぐる
無邪気にお父さんに自分の全てをゆだねて廻る
もうそんなことはされないのだけど

もっとみる

短編小説 好き嫌い

野菜は嫌いだ。

そう言うと君は好き嫌いはよくないと言う。

だから僕は君に言い返す。

好き嫌いは必要なんだよ。

ぼくは野菜は嫌いだけど君は大好きなんだ。

君は好き。

野菜は嫌い

嫌いと言う概念がなければ好きという概念も無いんだよ。

だから、好き嫌いは必要なんだ。

僕にとってはね。

君に好きと言えないのはとても辛いよ。

笑顔でそう伝えると

君は満面の笑みで

「ありがとう。でも

もっとみる