暇を極める

趣味を聞かれる。

読書です、と答える。

するとたまに、お高く留まっちゃって…という空気になることがある。

文学少女だったの?なんて言われたこともある。

一部の読書習慣がまったくない人にとって、本が好きな人間は不思議な人種に見えるらしい。

しかしこちらは偏食の本の虫、村上春樹も三島由紀夫も短編しか読んだことがない。

そのくせサンドウィッチマンのエッセイは面白く読むし、同じ本棚に南総里見八犬伝が収まっていたりする。


本を読むからと言って頭がいいわけでも、話題に富んでいるわけでもない。

アナログが好きなのは事実だが、目が弱いから使わないだけで電子書籍も結構なことだと思う。

ネットサーフィンだってする。

ただその場合、同じ時間の読書と比べると、時間を無駄にした感は否めない。

しかし時間があまりにもありすぎて暇を極めたとき、あえてネットにどっぷり浸かることがある。

Googlemapだ。

ロシアとエストニアの国境沿いの廃墟を延々眺めたり、キルギスの高原で馬の群れを見つけて喜んでいたりする。

本で景色を空想するのも楽しいが、こちらは本物の景色を知ることができる。

ただ、海が怖くてたまらない。

航空写真の海を見ると、全身に鳥肌が立つ。

岸が見えない海のど真ん中が画面いっぱいに表示されると、動悸すら感じる。

そんな私でも楽しめるのが、ご存知の方も多いGeoGuessr

これはGoogleMapを利用したゲームで、世界のどこかのストリートビューへ飛ばされる。

通常表示される道路名などのラベルが非表示になるので、看板の文字などを読み取ってその場所を当てるというもの。

正解と回答との距離の誤差が少ないほど、高得点がつくシステムになっている。

あらかじめメンバー登録(無料)しておけば得点を記録しておくことも可能。

土が赤いからオーストラリアかな?というざっくりした勘で回答してもいいし、別タブでマップを開いて完全に一致する通りを特定するのも楽しい。

私はネット検索を駆使し、後者のパターンでまったく同じ位置まで突き詰めるのが好きである。

海が全画面表示されることもない。山の中に飛ばされることはあるけれど。


あるとき連休の予定がまったく埋まらず、丸三日近くのめり込んだことがある。

その時、時間を無駄にしたと思うと同時に、暇に打ち勝ったという妙な征服感があった。

自粛で暇を極めすぎた方は是非。