見てみようのコーナー
「見てみようのコーナー」 苦草堅一
カンガルーを見てみよう。
二匹いるね。
二本の足で立っているよ。
ぴんと背を伸ばして、お互いに威嚇しあっている。
頭がとても小さいね。
対して、体はとても大きい。
二十頭身くらいあるね。
肩回りも胸板もむきむきで、頭と胸部の比率が1:5くらいある。
あってはならないバランスだ。
カンガルーは小顔すぎて怖い。
尻尾だけで立つこともあるそうだ。嫌だね。
見ると、発見があるね。
頭くんを見てみよう。
全身が成人男性の頭部の数珠繋ぎでできているね。
人の形だけれど、頭だけで構成されているのが、見るとわかるね。
ふつうの二足歩行の人間では足の裏であるところも頭でできているから長年の歩行ですり潰れているけれど目鼻口の穴が開いているから頭だと分かるね。
頭同士が喋りあっている。気が合うようだよ。何より。
おなかのあたりにある穴を口と呼ぶべきかヘソと呼ぶべきかは、見ても判断に迷うね。
へそ芸人を見てみよう。
ブーメランパンツ一丁の人が、あぐらをかいている。
彼がへそ芸をする人のようだね。
身体を左右にゆすっているね。
両肘を合わせて、へそに当てた。
ぐりぐり押し込んだ、へそが広がっていく。どんどん広がっていく、どんどん腕がへそに入っていく。手首ぐらいまで入れたら、今度は両膝をへそに当てて、やっぱり、ぐりぐり。
へそに全身を捩じ込もうとしているね。丸まって、丸まって、だんごむしのようだ。肉団子にも見えるね。
時間がないから早送りをしよう。
あ、いまだ。
へそ芸人が、へそに収束して、消えたね。
これがへそ芸人の、へそに吸い込まれて「空間」に溶けてしまうという芸だ。
へそ芸人は、へそに吸い込まれることによって「自分」と「それ以外」を「反転させ」ている、と、あらびき団に出たときに語っていたんだって。へそに消えた瞬間、へそを起点に「裏返って」「世界になった」という状態が正しいそうだけど、見た限りでは消えただけだ。芸の世界は大変だね。
そういうわけだから、ある時期以降のあらびき団では、司会の東野さんの「中」にも「彼」がいた、ということになるらしい。
空間は他にもある。
とりたろうを見てみよう。
とりたろうは「寿司の形をした空間」だよ。
そこらへんにあることがある。
赤と白の二色が視界にちらついて、寿司めいたら、そこが、とりたろうだ。
赤身なんだね。
見えたら報告してほしい。絶対にだよ。
ほうれんそうおじさんを見てみよう。
朝だ。報告に来たよ。
「歯を磨きました!」
山に帰っていくね。
昼だ。相談に来たよ。
「歯を磨いたほうがいいでしょうか……?」
山に帰っていくね。
日が暮れた。連絡に来たよ。
「歯を磨くことにしました!」
毎日こんな感じだ。
見てみようのコーナー、今日はここまで。
見ようと思えばいろいろなものがいるね。
みんなは見られたかな?
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