天號星を観劇したオタクの日記
『天號星』2023年 劇団☆新感線 43周年興行・秋公演
元禄の世を舞台に豪華キャスト陣が暴れまくる!渾身の“入れ替わり”本格バトル時代劇!
天號星そのものの感想ではなくて、お話の内容にも触れておりますが天號星を観た早乙女太一さんオタクの感想文です。
ストーリー上の大事な部分のネタバレも沢山出て来ますのでご注意ください。
早乙女太一さんへ、いつも激重を綴っていて申し訳ございません。
太一さんの当て書き
最初からアクセル全開の話になって申し訳無いけれど、ラストの"無宿渡世の宵闇銀次"は早乙女太一さんだとしか思えない。"宵闇銀次"を見ながら早乙女太一を見ているという感覚になる。この感覚は私がオタクだからもうだめです。
業も恨みも昔も背負い、敢えて選んだ地獄道を今も生きている早乙女太一さんに思ってしまう。だから私は"宵闇銀次"生存説強火です。彼の続きは現代で!ではないのですわ。こちとら爆泣きなのですわ。
これ、口上部分の「地獄道」の読み方が「じごくどう」ではなくて「じごくみち」であるところがまたにくい。「じごくどう」だと宗教的な意味になりますが「じごくみち」であることでそういった意味ではなく、幾多の困難を乗り越え今後も待ち受ける現実に通る道というように思えます。そう思っています。生きるこの世は地獄であります。
彼の生存如何についてですが、本当に不思議と初見のときからなにも不安を抱かなかった。捕まったのか、生きているやら死んでいるやら…とも思わなかった。彼は今日も力強く生きている。主にアプリでお元気なご様子の生存報告をなさってくださっています。今日もお健やかなお姿をありがとう。
(早乙女太一さん公式アプリが9月24日にリリースされました!有料での登録となりますが、更新頻度が高く配信はアーカイブも残っていてとっても楽しめています!マメな更新をありがとうございます!ハピネス)
とあるご感想で、『天號星』は痛快活劇に仕上がっているのに半兵衛だけがやけに不条理にまみれて描かれている(※意訳です)というものをお見かけしたことがあるのですが、自分の感覚としてはまさにこれ…というものが言い当てられていると感じました。
舞台上に作り上げられた『天號星』というフィクションのなかで生きた早乙女太一だけが生々しく現実的。幸も不幸も入り乱れていて突然の不条理に襲われる、とても人間の人生。というような感覚です。転生したら天號星だった。
もっとわかりやすい部分で言えば娘さん二人という設定ですが。
かずき先生が"今の"早乙女太一さんを当て書きするとこんな風になるんだ……と、もう本当に胸がいっぱいです。沢山の謎の剣士を見てきたから尚更。
仲間と家族と自分を守るために強くなった男。めちゃくちゃ格好いいです。ついに全てを背負ってしまった。なんて自己犠牲的で献身的なんだろうか…と思ってしまいます。幸せになって!!
新感線が総力を挙げて太一さんに書いたお話、
初見の印象は太一さんに対する送り出しかと思った
主人公太一さんじゃん…!?
主演におられてクレジット1番手の古田さんが、藤壺屋半兵衛がストーリー上で退場するとは思わないじゃないですか。最初に観たときの感想は、「え…!?古田さん死んじゃうの…!?」でした。主人公だったんじゃないの…!?
新感線の看板役者で天號星クレジット1番手の古田さんが(劇中で)倒れ、太一さん(半銀次)を鍛え上げた友貴くん(朝吉)も倒し、全員いなくなっちゃった…と感じました。そこまでに粟根さんも成志さんも倒してきました。
最後に残ったその姿が、新感線で鍛え上げられ、経験を積まれ、強く強くなられた太一さんのお見送りのように感じたのです。どうだ早乙女太一はこれほど強くなったのだと、それを劇団☆新感線を挙げて見せてくださっているかのような印象を受けました。
それを思わせる脇の固めぶり。なんと手堅い配役。待ってましたとしか思えない粟根さんと成志さんの楽しく憎い悪いやつら(成志さんは新感線の劇団員さんではないのですが…)。見守り寄り添い、力を貸してくれていた聖子さん、よし子さん。そして最後に立ち憚る古田さん。
皆さんのお名前は書ききれないけれど、配役、その役柄、あまりに手堅すぎませんか??勿論いい意味で。この人のこの役、美味しいに決まってる!!観たかった大好きなやつ!それだけどっしりと安定したストーリーの上に主人公然となされた太一さんは、私には主人公だとしか思えませんでした。
クレジット2番手だったじゃん…!うそつき…!という気持ちです。まんまと最高のかたちで裏切られました。オタクとして、早乙女太一さんのファンとして、こんなに面白くて格好よくて有り難くて豪華なお芝居を観ることができて感激です。
数日間この文を書いている途中で拝見したいのうえさんのインタビューのなかで「新感線は一世代」と仰っていた部分が、寂しさよりもやけに納得のかたちで心に残りました。
それはまさに、『天號星』を観た自分が「新感線に鍛えられ送り出された早乙女太一さん」を感じていたからなのかも知れません。
(新感線が一世代のお話:いのうえひでのり「笑いは僕らのベース」 小劇場発の劇団☆新感線が貫くベタな笑い)
しかし太一さんの引き出しはこんなものじゃない、
俳優としての引き出しを全部乗せ、残りは朱雀で
わたくし早乙女太一さんの女形が大好きなのです。女形も踊りも。
中島かずき先生が初めて早乙女太一さんに書かれた『蛮幽鬼』の役では女形要素も踊り要素もありました。今回『天號星』のビジュアルが公開されて、宵闇銀次のキャラデザにやや女性的な雰囲気も感じていたので私としては期待も込めて太一さんのそういった部分も盛って来られるものかと思っていました。ところが幕が開いてみると、天號星において太一さんの"女形の要素"に関しては全くありませんでした。
(余談:以前中島先生が『蛮幽鬼』を書いたときに太一くんに女形の要素を盛ってしまったことを、そういった先入観に引っ張られて役を作ってしまったと後悔されているというニュアンスのインタビューを見た記憶があるのですが…web記事だったような気がしますがどれだけ探しても現在は出典記事を見つけられません。ご存知の方がおられましたら情報求めております)
なんてこともあったので(幻の記憶)今回もそうだったんだなと思いました。
私期待していました。太一さんの女形が大好きなんです。そしてワカドクロを観て、蘭兵衛を好きだと思って太一さんのことをしっかりと認識した個人的な経緯があります。だから新感線の舞台で、太一さんの持っておられる要素をあれもこれもまた観られることを期待していましたからその部分で言えば夢は叶いませんでした。残念と言えば残念でした。
でも思い直す気持ちもあって、『天號星』、あれだけ早乙女太一さんの持てる力を全部見せてきたと思いきやあの方はまだ見せていない部分があるのです。それが女形や踊りなどの部分になるのですが、しかもそれがすんごく強い太一さんの武器なのです。まーーーーだ必殺技を持っておられる。すごくないですか?すごいんです。まだあるの?あるんです。
そして新感線の『天號星』では観ることのできなかった部分というものは劇団朱雀で観ることができます。ナンテコッタそういうこと!?早乙女太一をもっと観たい?続きは劇団朱雀で!というわけなのですわ(個人の感想です)
すごいなあ…本当にすごいです。その部分を"敢えて書かなかった"というようにすら思えます。そんなことができるの…?愛と実力が無くてはこの本は書けない……そう深く感じます。
"朱雀"を感じる共通点
劇団朱雀をご存知で『天號星』をご覧になった方が口々に「ゆーけんwww」と仰っていたりいなかったりしたのをご覧になったことがございますか?無い?
"ゆーけん"とは、劇団朱雀で上演されるお芝居『安兵衛駆け付け ~高田馬場の決闘~』という演目に出て来る、早乙女友貴くん演じる中津川友範という人なのですがこの中津川友範をご解説しますと、かつて太一さん演じる安兵衛に剣で敗れ、その際顔に傷まで負わされた恨みを晴らすべく、絶対に自分が安兵衛を倒すのだと剣の腕を磨き遠路はるばる安兵衛を倒しにやって来るという情緒の激しいちょっと様子のおかしい人で、しかし安兵衛はかくかくしかじか事情があって今はへなちょこになっていたという…どこかで見たことがあるような人です。
つまり友貴くん演じる朝吉(新感線)とゆーけん(朱雀)に似て感じる要素があり、ゆーけんもまた「腑抜けたお前なんてお前ではない、強かったお前はどうした」と、結果として叱咤激励をする立場で、更に朱雀の別作品の『遠州森の石松 ~馬鹿は死ななきゃ治らない~』の石松(最新版は友貴くん演)には太一さんの役に対して言う「いいねいいねぇ」という台詞があり…『天號星』を観ているとなんだか朱雀で観たことあるなあ!という気持ちが湧くわけです。
そういうところに勝手に朱雀のオマージュを感じていたりして。天號星は天號星で間違いなく完成しているけれど朱雀を知っていると二度美味しいような…
少々話が逸れますが、半銀次の太一さんが朝吉の友貴くんに「や、や、やり合ったんですか?あなたとわたしが?やり合った??」と言うところも、朱雀を観ている人からするとやり合っとるやろがいwwwポイントだと思っていますがどうなんでしょう笑
あとは今まで朱雀以外ではなかなか観ることができなかった面白太一さん!これはもう本当に天號星にてんこ盛り!歌要素もありますね!朱雀の太一さんはコミカルな役もヤラレ役もなされておりますしそして歌います。
こういった点に関しても、劇団朱雀への愛が無くてはこの本は書けないし作れない……と感じております。中島さんはじめ新感線の愛がすごい……
ミラノ座だから生まれた天號星
『天號星 戯曲本』あとがきに素敵なお話がありました。
中島さんは新感線のお話を書き下ろすにあたって会場のキャパシティ、会場のスケール感を意識してお話を書かれていらっしゃるとのこと。大きな箱ならスケールの大きな話になる。例えるなら国と国が衝突するような規模の諍いであると。近年はそれくらいのスケールの箱=お話が続いており、もう少し小さい規模の、人と人が個人の事情でぶつかり合うくらいのスケールのお話は書けていなかったとのことでした。それが久しぶりにミラノ座という、今までより少し小さなキャパシティの会場という巡り合わせで『天號星』が書けたというような内容でした。
『天號星』のお話が本当に好きです。早乙女太一さんの演じる『天號星』を観ることができて本当によかったと思っています。その『天號星』が生まれるにはミラノ座が必要だったのかと、そう思えました。
ミラノ座、まあまあずっと悪評をお見かけしていました。立地の治安であるとか椅子だとか動線だとか。そもそも新感線の新作なのに会場が狭すぎるだろうとか。私も参加するにあたりなるべく困難の無いように、つらい思いをしないように、嫌な思い出にならないようにと下調べや準備をいつに無く入念にするほど率直に言って警戒をしていた会場でした。
ですがミラノ座があって『天號星』が生まれたのだと思っていますから、そういう意味ではミラノ座に感謝が尽きません。新生ミラノ座、生まれてくれてありがとうございます。お陰で大好きな演劇を鑑賞することができました。
総括
"観たかった早乙女太一"じゃなくて、「観たかった」は超えてきたし"観れると思っていなかった早乙女太一"がいたような感覚かなあ と思っています。
『天號星』、本当にむちゃくちゃむちゃくちゃ面白かった。
先にも書きましたが、早乙女太一さんのお名前と存在は何となく知っていた自分が、初めてきちんと太一さんのお仕事を観て、役者さんとして認識したのが『髑髏城の七人 2011』通称ワカドクロでした。ワカドクロで初めて劇団☆新感線さんも知りました。友達に誘われて何も知らずに観に行ったワカドクロのゲキシネ、古田新太はいつ出て来るのかな~と思っていたら最後まで出て来ませんでした。
私に色々な出会いと感動をくれた新感線、早乙女太一さん。その粋を集めたような『天號星』を観ることができて、とんでもなく楽しくて面白くて格好いい舞台に立ち合えて本当に嬉しく思っています。『天號星』を観ることができて幸せです。
大阪公演はこれから!
『天號星』は10月21日、大好評のうちに東京公演を終えましたが11月1日より大阪公演が始まります!
ぴあ公式・チケットブックのリセールサービス、当日券、ご都合の付かなくなった方の譲渡などなどチケットはまだ手に入る機会があるかと思います!
ぴあ公式はリセールだけでなく何かよくわからないタイミングでチケットが復活しています。チェックしているといいことあるかも。
劇団☆新感線さんの公演は有り難いことに今後ゲキシネや円盤化もしていくと思いますが、やはり生の劇場で味わう臨場感は格別ですので!!!!
映像ではどうしてもフレームアウトしてしまう部分もございます。映像化される公演の内容はどうしても限られます。毎日違う楽しいこと(アドリブなど)が起きています。仮に10月11日に上映されたライブビューイングの映像が今後ゲキシネ・円盤になるのだとしたら、10月12日から10月21日に上演された生の天號星はまた違うものでした。10月21日東京千穐楽の天號星、めちゃくちゃ面白かった。ライビュ回もよかったけど千穐楽公演も映像で観たいよ~~~~~!という気持ちです。
日頃舞台は観に行かないという方、あまり普段観る系統ではない方にも楽しんでいただける作品であると信じております。
ここまで何だかシリアスな話を書き連ねてきましたが本編は本当に!!!!楽しいので!!!!楽しくて格好よくてあったかくて切なくて泣けます。
是非ぜひご縁がございましたら今のうちにお楽しみください!世界一格好いいわたくしの推しがおりますので見てきてください!!!!
格好いいんだからわたしの推しは~~~~~~~!!!!!
大阪公演もどうぞ皆さまお怪我ご不調の無きよう、ご息災を心よりお祈りしております!
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