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閉じたままの パンドラの箱

■カサンドラ症候群とは
パートナーあるいは家族など身近にいる人が自閉スペクトラム症(ASD)のため、適切な意思疎通や関係性を築けない心的ストレスから、不安障害や抑うつ状態といった症状が起きている状態を指す言葉です。「当人の苦しみがパートナーや周囲の人に理解されず、孤立した状態に置かれること」がカサンドラ症候群の大きな原因であると考えられています。

大阪メンタルクリニックHPより抜粋


私は時々、あるカサンドラ女性の言葉を思い出す。

妊活に励む中で乳がんを患った末に
アスペルガー夫と離婚した彼女。

ある時彼女は言葉少なに私に言った。

「妊活はね、パンドラの箱。」

思いもしないものが飛び出してくる、
決して開けてはいけない箱だと彼女は言った。

それ以上は何も言わなかった。

仕事終わりに帰路に着き、
最後は自分の家の前の道端にそっと座る。

毎日暗闇の中、自宅の電気が消える時を
ずっと遠くから息を鎮めて待つ。

それが、気丈で誰に対しても誠実な彼女の
孤独な結婚生活だった。(後から話してくれた)

私はと言えば、
当時妊活を予定していたのだけど、
結局はその出発点を目指すこともやめて、
関係を終わらせた。

私と彼のパンドラの箱をもし開けたなら、
一体どんなものが飛び出してきたのだろうか。

と、想像してみたり。


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