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不思議✨骨董招き猫せんきっつぁん物語8「めし屋に起きた不思議」

オレの名前は千両箱のせん吉
今はせんきっつぁんと呼ばれている

さてオヤジの話しの続きだが
捨て子を世話していた頃から
めし屋のオヤジには若いオンナ⁉️がいた
オヤジはオンナの面倒もみていたんだ

「いい加減やめとけよ!」
とオレは叫んでいたが声は届かず
オヤジは相変わらずのお人好し

ある時オヤジは
気落ちが続いていたせいでバタっと倒れ
しばらく仕事ができなくなりそうだから
店を休むと言い出した

オンナは金を稼げないオヤジを見捨て
どこかに行っちまうかと思ったら、
どっこい急に1人で店をやり始めたんだ

まるで別人のように働く様子にオレはビックリした

暫く経って店が終わった時の事だ、
そのオンナが酒を飲みながら
急にオレを相手に話し始めた。

「アンタ、そこに座ってずーっと私の事を睨んでたでしょ。
私、アンタがいろいろ分かる事を知ってるんだからね。
どうして分かるか知ってる?
私、化け猫だもん。

最初は猫だったけど、ある時目覚めたら人間になってた。

可愛がってたあの子が死んで、
泣いてばかりいるオヤジが可哀想だから
私を人間にして下さいって祈ったら本当に人間になっちゃった。

猫だった時に餌を恵んでもらっていた時も、夜だけ人の姿になってからも
ずーっとここに通ってたんだ。

でもね、力を使い過ぎて
そろそろおさらばみたい。
オヤジの事、アンタよろしくね。」

そう言うと急に姿が見えなくなり、
右前足に黒いブチ模様のある白い猫が
鈴の音を鳴らしながら
よろめきながら店を出て行った

昼間じゃなくて、店が夜だけ開く事
オンナの右手にはアザがあった事

そうか、あいつだったのか
何でオレは気づかなかったんだ!
バカだ、マヌケだ、大バカだ

あいつは化け猫になってまで
オヤジのそばに居続けたのに
オレなんて座ってるだけじゃねぇか
情けねぇ

数日が経ち元気になったオヤジは、
オンナを探すわけでもなく
またいつものように店を始めた。

でも違っていたのは、
オヤジのブタの尻尾のように束ねた髪には似つかわしくない
鈴の飾りがあった事だ。
それが誰のものだったのかオレは知ってる。

全てを知っていて、アイツの最期を看取ったのはきっとオヤジだったんじゃねえかと思う。
きっとオヤジはアイツに感謝してたんだろうな

オンナっていう生き物は本当に凄えな

そしてオヤジはまた一人ぼっちになっちまったわけだが、前より元気になってる気がしてる

オヤジ、何にもできてねぇがオレもいるぜ


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