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不思議✨骨董招き猫せんきっつあん物語28「目の前で繰り広げられた光景」

オレの名前は千両箱のせん吉
今はせんきっつあんと呼ばれている

今日はちょっと血生臭い話しをするが大丈夫か?

それは千両箱の上で、のんびりとうつらうつらと居眠りをしていた時だった

急にギギーっと音がして扉が開き、中に2人の血だらけの男が入って来た

1人は頭から血を流し血まみれ
もう1人は足を引きずって唸りながら千両箱の前に転がった

そしてこの蔵の主人は、「夜までここに居ろ!医者を呼べば目立つから薬だけ運んでやる」と言って出て行った

暫くすると薬を持った主人が戻り、傷の手当をしながらこう言った

「新しき御世のための戰は頭を使うものだ。戰は歩みのためには無くせないが、古いものを壊す戰に血を流してはいけない。血を流せば外道になり下がる」と言って、苦々しい顔をしていた。

重々しい雰囲気にオレの眠気は吹っ飛び
ジーッとその2人を見ていた。

夜になり2人が外に出た瞬間
いつもはおとなしい主人が鬼の形相で唸り声を上げ2人を切ったんだ。

1人は後ろにのけぞりながら倒れ
千両箱のオレを見上げ、ふっと笑いながら息絶えた

もう1人は最後に一言だけ発した
その言葉は「おっかさん」

いつもは温厚で、2人の傷の手当までしていた主人がなぜ鬼のようにあんな事をしたのかわからない

暫くして主人がむせび泣きながら2人を運んで行く姿に、オレは物凄く哀しくなった

その時だった
むせび泣く主人を支えるように
そばに居たのがイヒカとミヒカだったんだ

多分主人は気づいていなかったと思うが
オレには分かった

イヒカとミヒカは「大丈夫です。あの2人はお守りしますから」とオレに言って
スーッと消えていった

千両箱の上にいた時代はそういう世の中で、不思議がいっぱいだった





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