見出し画像

不思議✨骨董招き猫せんきっつぁん物語24「羽が見せてくれた夢」

オレの名前は千両箱のせん吉
今はせんきっつぁんと呼ばれている

さて、オヤジの背中に生えてきた羽だが
どうやらオヤジは困るどころか
それを楽しんでいるみたいなんだ

どう楽しんでいるかと言うと
店の仕事をしている時、オヤジは半分宙に浮いている
もちろん客からはオヤジの足元は見えていないから、問題ないわけで
スイスイと楽に移動している

それは大した事がないんだが
ビックリしたのは、オヤジが柄にもなく絵を描き始めた事だ

実はオヤジ、若い頃は絵描きになりたかったらしい
それが夢叶わず、どうしてだかめし屋のオヤジになったみたいなんだ

オヤジの描いた絵は空を飛び
その時に見た景色の絵だったから、
凄く珍しい絵だった

見たことがないような景色や風景で
空から下を見るとこんなふうに見えるんだなぁとオレも感動したぐらいだ

ある時、その絵を買いたいと言う奴が現れた
そして何故こんな絵が描けるのか教えて欲しいと言ってきた

オヤジは暫く誤魔化していたが、とうとう誤魔化しきれなくなってきて
ある日そいつに打ち明けたんだ

その瞬間だった
あたり一面が真っ白になり何も見えなくなった。
そして何故か店の中に雪が降り
その中に立っていたのはおかみの神(龗神)と呼ばれる神様だった

その神さまはオヤジに
「その羽、天に返さねばならん。
長く保てば、今のままではおられんようになる」と言って
オヤジの背中に手を当てると何か唱えた。

すると、羽はオヤジの体をスッと離れてパタパタと羽ばたくと消えていったんだ。

呆気に取られているオヤジに
「この絵は、もらっていくぞ」と言うとおかみの神(龗神)は龍に姿を変え絵と共に空中に消えていった

それから季節が移り変わったある日
龍が爪に絵を引っかけて飛んでいる姿を見たと言う話しが伝わってきた

それはきっとあの時に消えていった龍だなと思っている

背中の羽が無くなったオヤジだが、あれからもせっせと暇を見つけては絵を描いている。
若い頃の夢を思い出して幸せみたいだ。

亀甲水の本当の力は、そこにあるのかもしれねぇな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?