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あの時、ゴミ箱でスイカの皮を探って齧った女の子

これは、私がまだ大学一年生の時、実際に起こった話。もう十五年も前のことだが、あまりにもインパクトが強くて、今でも時々思い出す。


あれは夏休み前の期末試験ウィークだった。四人部屋の寮で皆が猛勉強中。夏の夜が蒸し暑くて、耳に聞こえるのは扇風機のブーンブーンしかなかった。


突然、廊下で誰かが騒いだ。

普段なら、そう野次馬じゃないですが、先週は隣の寮に火事があったため、まさか!?と思って、窓の外にいる同級生の女の子・ヒーちゃんに尋ねた。

私「どうした?何があったの?」

ヒー「なんか、隣の寮のゴミ箱で、食べ残しを探って、見つけたスイカの皮を齧ってる女子学生がいるんだって!」

私「え!?また隣の寮?いや違う、え?ゴミ??」

ヒー「あの子を見て、精神状態がやばそうかもと、通りかかった他の学生さんがあの子を職員室に連れて行ったっぽい。」

私「そうなんだ…って、何で君がそんなこと知ってるの?部屋で勉強してるんじゃなかったっけ?」

ヒー「そうだよ。でもさ、私の親友の子、経済学部に居るんでしょう?ゴミ探る子、経済学部の子のようで、もうアチラでは大騒ぎになったわよ。」

私「そうなんだ…」


次の日は学年委員会の定例会がある月曜日だった。

メンバーとして会議に出席した後、私は思った。学年委員会の委員長は、学部の職員先生たちとも交流が頻繁だから、もしかして何か知らないかな?

ので、委員長に聞いてみた。昨日の件は本当なのか。そのあと、どうなってるのか。

委員長は、少しため息をして、そう教えてくれた。


噂になった件は、デマじゃなくて、本当だった。でも、一つだけ、聞いたことと違う所があって、それは女の子の精神状態が全くの異常なしだった。

じゃ、どうしてゴミを探るの?

女の子は、学校助成金で入学した農家出身の学生だった。うちの大学は、助成金を毎月1回、学校から学生さんの銀行口座に振り込むようにしてた。でも、今月の振込みはいつもより遅かったせいで、女の子は食費に出せるお金が一文もありませんでした。空腹に耐えなくなって、ゴミ箱のスイカ皮をみて、手を出した。

「でもこの件はもうおしまいだから、心配しないで。」委員長がこう言い残して、帰った。


私はショックすぎで、あの場で何もいえなかった。ショックだったのは、女の子の貧困ではなく、学校の無責任だった。

うちの大学は、大都会にある、百年以上の歴史を持つ国立大学だ。色んな学部を設置してますが、創立したごろが農業学院だったため、国から与えられた使命の一つは、農家出身の学生達をサポートすることだ。なので、大学には実家が貧乏で、バイトと助成金なしでは、学費と都会での生活を持たない、農家の学生さんがいっぱいいる。

だから、とても貧乏な学生の存在に関しては、そう意外なことじゃなかった。


何で急にこの話を書きたかったかというと、実は先月、ツイッターのタイムラインで、こういう話を読んだ。(えぇ、下書きは先月のことでした)

(原文ではない)

家が貧乏だから、やりたい事もできないし、学校もいけない。学ぶための道具さえ揃えられないし、食事だって満足できない。学がないから、まともな就職もできない。よって、低い給料しかもらえない。悪循環で人生も夢もおわりだ。  


正直、あの頃の女の子、その後、大学を卒業できたか、ちゃんと就職できたか、今は何をやってるのか、毎日お腹いっぱい食べれるか、人生の夢を叶えたか、私には全然知らない世界でした。

でも、うちの大学は、そう簡単に入れる大学じゃなかったから、あの子はきっと、必死に頑張って、誰かも想像できない努力をしって、やっと進学できたでしょう。

農家の子をサポートするって言っても、学校の助成金を手軽に得ることはないだからな。


貧乏だからって、諦めるじゃない。

これだけが、言いたかった。



いや、ついでに、これも言わせていただきたい。

お金があっても、やりたいことができるわけではない。
道具があっても、勉強に成果が出るに限らない。
学があっても、糞会社に会えない保障はどこにもない。
大企業に入っても、収入がいいに決まらない。(実際、今の世の中は破産する大企業は少なくない)

だから、諦めるには早すぎるのだ。


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