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初めてのお見合い。②

実話です。
相手は公務員。給料よき。婚暦なし。年上で頼もしい男と紹介された。
でも私は独身主義。親の要求でお見合いに行くだけ。
優良物件とも言われそうな男は、私のポリシー破りの大ピンチになるのかな?

前回はコチラです:

散歩しようか

「初めまして。」

駅で集合した私たちはお互いに挨拶して、お散歩ルートに向かった。
ふむ。普通に礼儀あるの男のようだな。良くも悪くもない、本当にごく普通な感じ。でも、ちょっと気になることがあった。

どうして私に標準語で話しかけるの?

実はこの南の街は私の出身地で、地元の言語は標準語ではない。紹介人によると、相手は北方面が出身地ですが、今は南で働いてるので、現地語(即ち、私の母語)が話せる。本音で言うと、初めてそれを知る時、好感度に結構なポイントが入った。だけど、実際会って、彼からは一言も現地語を使わなかった。

偏見かもしれないが、標準語しかできないならまだしも。ここは私の地元だし、現地語(即ち、私の母語)もできるのに、なぜ全然それを使わないの?私の出身地を尊敬する気あるの?

少しモヤモヤしながら、散歩は続いた。そして、ありきたりのお互いの情報を探索する時間だ。

相手は公務員で、毎日定時退勤できるのようだ。職場は少し遠い隣の街にあるので、親と住んでるこの街に帰るのは三時間くらいかかる。ので、週休二日だけど、実際滞在できる時間は1日半ぐらい。んで、この1日半の休日はどう使うの?と聞いたところ、劇場でオペラを観るとか、シネマで映画を観るとか。

悪い、こっちの仕事は24/7オンコールので、そういった「スマホをオフしてね」なところはいけない。それに、こっちはインドア派で、シネマみたいな人波があるところより、家でDVDを見たほうが楽しい。ふむふむ、ほぼ確実に惚れちゃう心配はないようだな。相手もこの生活スタイルの違いに結果は察せるだろう。

その日、散歩ルートは何故か観光客がとても多くて、歩きにくいし、騒がしくてお互いの話もよく聞こえない。困ったなぁと思った時、ちょうど博物館の前に着いた。よし!博物館に入ろう。私の大好きな場所なので、もし相手と趣味が合えば、友人を一人増えても悪くないじゃない?

博物館へ勧めてみたら、相手が「いいよ」と即答した。いい反応だね。

博物館にて

外と相変わらず観光客が多かったが、外よりは静かで、少し落ち着いた。

最初見にいた展覧会は、定番の恐竜と化石だ。そこで、相手がいきなり旅行の話題を振ってきた。

相手:「旅行するなら、どこへ行きたいですか?」
私:「そうですね。昔留学した国かな?少し懐かしく思い始めましたので。」
相手:「そう。でもそういうのじゃなくて、山とか、海とか、そういうのどこに行きたい?」
私:「(あ、そっち系ね。はい、わかった)えっと、高いどころが怖いので、海かな?山登りは苦手かも。」
相手:「そうなんだ。南は山が少ないからね。でも僕、北出身で、故郷に高い山がありますよ。その山はね、すごく綺麗な景色があるんだ。僕、友人とよく山登りしました。特に高くて、危険そうなところが好きで、よく行きます。貴女なら、どうなりますかな?(笑)」
私:「(営業スマイル)そうなんですか、あははは。」

は???私の話を聞いた?高いどころが怖いと言ったところなのに、すぐ故郷の山をひたすらアピールして、どうする気?ていうか、私から何の反応を期待してるの?ねぇ?教えて??

もしかして、相手はただ本当に自分の故郷を愛してる故に、故郷愛が抑えなかっただけかもしれない。でも今まで現地語を一言も発してない点で、この「故郷愛」に素直に褒めることは、私にはできなかった。減点!

話題が続かなくて、そろそろ気まずくなるところ、博物館の休憩スペースにピアノが見えた。

相手:「実は僕、昔ピアノをやってました。」
私:「そうなんですか。いい趣味ですね。」
相手:「でも仕事してからは、忙しくて、何年も触れませんでした。貴女はどんな習い事をしましたか?」
私:「楽器は勉強したことがないですが、水墨画は学んだことがあります。」
相手:「おお?書道も?」
私:「いいえ、書道はやってませんわ。水墨画だけでした。昔、絵は悪くないのに、字が汚いから、絵に落款しないほうがいいかも、と、先生から揶揄されたこともありましたわ。」

ちょうどその頃、二人が歩き着いたホールは、なんと!水墨画の展覧会をやってた。普通に考えたら、いい機会じゃないですか。話題のネタにもなるし、相手の好みやリテラシーを知るにも絶好のチャンスだぞ!ギャルゲームなら、好感ポイントを稼ぐ素晴らしいイベントが発生するかもしれないだぞ!私はただ絵の展覧会が観たいだけですが(お目目キラキラ)

相手もこういう思考をしてるじゃないかな?と期待しながら、私はホールを入ろうとした。その時、相手が言った、「そろそろ、出ようか?」

え?

この時点で、私はほぼ確信した。相手は私に興味がない。多分、私と結びたいとちっとも思わない。それはこっちにとっての好都合だ。ふぅ〜 お気楽、お気楽〜

帰ろうか

博物館から出てきて、もうこのお見合いは失敗だと信じてる私は、気が緩んで、「友人とお喋りモード」に入った。ゲームとか、アニメとか、マンガとか、オタク話題を相手にガンガン投げ出した。

そこで、人形劇に対する共通の趣味を発見した。ただし、相手は古いのしか観てなかったし、私はほぼ新しいのしか観てない。でも大丈夫、新しいのを観れるところは私は知ってるから、相手に教えて、少し盛り上がった。

待ち合わせした駅に向かいながら、私は今日の出来事を振り返った。

確かに相手の生活スタイルや他の趣味など、私のと全然合わないだけど、相手は普通にいい人だし、誠実そうだし、お友達になってもいいと思った。

それに、少し不器用だけど、優しい。いい趣味を持ってるし、運動の習慣もあって健康のようだし、知性もある程度持ってるし、いい育ちの男だ。うちに帰ったら、独身の友人を相手に紹介してもいいじゃないかな?その友人もオペラとか山登りとかが好きで、似合いそうだし。うん、そうしよう。

後日談までプランした私は、その時相手の一言に、心がすごく動揺した。

「一緒に、ラーメンを食べに行かない?」

(続く)

次回はコチラです:


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