ブタ心臓モデルにおけるインデックスガイド高周波通電に関する出力と接触力の影響 TactiCathと SmartTouchとの違い

J Interv Card Electrophysiol
. 2022 Apr;63(3):687-697. doi: 10.1007/s10840-021-01110-y. Epub 2022 Jan 8.
Impact of power and contact force on index-guided radiofrequency lesions in an ex vivo porcine heart model
ブタ心臓モデルにおけるインデックスガイド高周波通電に関する出力と接触力の影響 TactiCath, Sensor Enabled; and SmartTouchとの違い
Cristina Lozano Granero

要旨
目的:Lesion size index(LSI)およびAblation index(AI)は,出力,接触力(CF)および時間を重み付けして焼灼巣の大きさを推定する通電の質を表す指標である.in vitroでは焼灼の深さを正確に予測できるが、特定のパワーとCFの設定における病変の大きさの推定精度は十分に確立されていない。我々は、豚の心臓モデルを用いて、アブレーション焼灼巣のサイズと形態におけるパワーとCFの影響を解析するためにex vivo実験研究を実施した。

方法 市販の2種類のカテーテル(TactiCath, Sensor Enabled; and SmartTouch)を用いて、37℃生理食塩水に浸したブタ左心室に対して、異なる出力(25、30、35、40、50、60W)およびCF(10、20g)設定を組み合わせ、低指数(LSI/AI of 5/400)または高指数(LSI/AI of 6/550)を目指した24セットの垂直高周波通電が実施された。各施術後、焼灼巣の断面図を作成し、計測を行った。

結果 結果:480の焼灼が実施された。あるターゲットインデックスとCFに対して,両カテーテルでパワーの違いによる焼灼量と深さの有意差が認められ,一般に高パワーでは病変が小さくなることがわかった。CF10gではSmartTouchに比べTactiCathで特に小さく,CF20gではLSI/AIが低くても大きく,CF20gではLSI/AIが高くてもほぼ同じであった.一般に高出力での焼灼は低出力より広く,浅く,特にSmartTouchでは顕著であった。

結論 indexガイド下での高周波通電の焼灼巣のサイズと形態は、出力とCFの設定の違いにより大きく変化した

インデックス低値目標での焼灼
インデックス高値目標での焼灼

考察
どちらのカテーテルもCFに対して高い感度を示したが、違いがあった。TactiCathで焼灼巣は、CFが10gの場合、20gに比べて小さく、浅くなったのに対し、SmartTouchでの焼灼巣は、CFが低いほど大きく、深くなり、逆の挙動を示している。AIとLSIの式が現実に完全に適応する理想的な状況では、特定の値を目指した高周波通電での焼灼は、使用するパワーやCFに関係なく同じサイズになるはずであり、式はこれを予測するために理論的に開発されている(ただし、パワーやCFのすべての可能な値を調整してテストしたわけではない)[4、5、6]。しかし,我々は,異なるパワーとCFの設定によって焼灼巣の大きさにばらつきがあることを観察した。低いCFを使用したときに達成された大きな焼灼サイズは、方程式の最適でない数式調整と指標の本質によって説明されるかもしれない。低CFで特定のアブレーション目的を達成するために長い通電時間が必要であり、通電時間は焼灼巣サイズに関する強い予測因子である[16、17]。これはSmartTouchの場合ではそうであったが、TactiCathではCFを低くしても焼灼巣が小さくなることはなかった。TactiCathのCFのこのような挙動は、in vitroの検証研究[4]では観察されなかったが、その研究は20Wという非常に低いパワーしかテストされていないからかもしれない。

私たちの意見では、TactiCathのCFに関する知見は、低CFシナリオにおけるカテーテルの低出力供給によって説明される可能性がある。しかしながら、LSIとAIが開発された臨床シナリオである、PVIにおける高周波通電を行う場合、焼灼体積と深さは十分であると考えられる。しかし、この知見は、実際の臨床では、TactiCathカテーテルではより高いCFを達成することがより必要であり、TactiCathはより低いCFで十分なサイズの焼灼巣が確保できることを考慮に入れておくことが必要であろう。

特に、CFが10g以下でLSI 5を目標とした場合、TactiCathカテーテルの焼灼巣は特に小さく浅くなり、LSI 6を目標とした場合にも量と深さが小さくなることがわかった。この知見は、以前に発表されたin vitroの検証研究[4]と矛盾しており、低出力(20W)および接触力(10g)で低LSIを目指した場合、焼灼巣は浅いが概して広いことが判明している。しかし、この実験ではカテーテルの先端が平行であったため、このシナリオでは焼灼巣の大きさが拡大した可能性がある。

本研究の結果に基づき、仮説として左心房における高周波通電のテーラードアプローチが提案できる。達成されたCFと理想とする焼灼巣形成によって、出力と通電間距離を調整することができる(補足図2および図3)。後壁焼灼(LSI 5/AI 400をターゲット)に関してしては,一般に焼灼巣は浅く広くする為ため,高出力がよいと考えられる, interlesion distanceを長くし,通電時間を短くすることができる。後壁のアブレーションに高出力を使用することは、臨床で安全であることが証明されている[18]。しかし、前壁(LSI 6/AI 550をターゲットとする)では、十分な焼灼深度を確保し、スチームポップを防ぐために、低い出力設定が望ましいかもしれない。SmartTouchを使用し、前述のAI値をターゲットとするCLOSEプロトコルは、25-35W、 interlesion distance<6mmを使用し[19]、心房細動患者のPVIでの急性期耐久性が示されています。後壁のアブレーションの出力を上げれば、より短時間の通電が可能になり、一方、前壁では、同じ出力(35W)でも、インターレション距離を7-8mmと長くすれば、十分である。この方法は臨床で証明されていないが、手技時間を短縮できる可能性がある。