【単発】酒場でヴァイオリン弾きたいレラジェと付き合わされてるバルバトス

作文や読書感想文を母親に代行させてた文章構成力ゼロ眼鏡が
夜中のテンションで作ったものです

ワイルドミリタリー兄ちゃんなバルバトスさんとエレガントお貴族兄さまなレラジェさんという見た目属性が反対なやつらが仲良しなのが好きなんだ

作者の僕は腐女子ですし版権推しカプをズルズル啜りながら書いてましたがこの2人は『コンビ』です、この時間軸ではコンビだ!


設定
酒場と狩猟場エンカウント繰り返して仲良くなりたてくらいの時期
レラジェは見極め期間終了+警戒解除してきたので天然ボケ出てきてる
バルバトスはアモン&プルフラスと舎弟ズ以外で久しぶりに友人出来て嬉しい


「酒場でヴァイオリンを弾きたい だから、ステージのある酒場を見付けてきてくれないかバルバトス」
白ワインをもう5杯は飲んでいるレラジェが唐突に言ってきた
こいつは急にこんな事を冗談抜きで言ってくるヤツなんだと最近理解し始めた
本気で酒場でヴァイオリンを披露したいんだ
「…しゃーねェなあ、探しとくよ」
向こうは「ありがとう」とだけ言ってこの日は解散した

探しとく、と言ってもステージ付きの酒場なんてそうそう見つけられない
ステージがあっても「活動してる人じゃないとダメ」「常連以外お断り」…制約はそれぞれで中々見つからない
レラジェは『趣味』でヴァイオリンをやっているだけで演奏者としての活動は一切していない
動画さえ上げててくれりゃあ「活動してる」の条件がギリギリ満たせるんだがあいつは全然そういった事に興味がない
『初代魔王の右腕サルガタナスの養子』という立場を振りかざせば誰でも演奏を聞きたがると思うが、そういった親の立場を良くも悪くも利用する事が苦手な男なのは付き合いがまだまだ短い方の俺でも分かる

捜索範囲を人間界まで伸ばしたらすぐ見付かった

予約は必要だが、予約さえしちまえば演奏出来る

「オイ、ステージ付き酒場の件なんだが」
「見付かったのか?」
普段通りの淡々とした受け答えの中に若干喜びが見える
「ああ見付かったぞ、人間界の酒場なんだが…行けそうか?」
「行ける、場所は?」
食い気味なあたりかなりウキウキしてるなァ…
酒場自体の場所や近所の駅、待ち合わせ場所、その他諸々を教え最後に釘を刺す様にこう言った
「なるべくラフな服で来いよ、ラフだぞラフ」
「分かった」
本当に分かったのか?
レラジェは服のセンスが古い、いや古いと言うよりタイムスリップしてる
はるか昔の貴族連中が着る様なフリルが付いてるシャツとかゴッテゴテのクソ重てェコートを平気な顔で着やがる
召喚される時の服は貴族が着てる様な狩猟服、パーティやるぞと初めて誘った時には燕尾服で着たヤツだ
釘刺しておかねェと絶対に騒ぎになる

レラジェはマイペースだが根は真面目なヤツなのは分かっていた
なるべく約束した時間より5分早く着く様にしてたんだが…
どうやら俺が思っていたより真面目なヤツだった様でもう着いてやがったし人だかり…というか主に女達に囲まれていた
普段より貴族感は控えめだが貴族にしか見えねェ!
俺に気付くと女達を軽く躱して近付いて来た、貴族だ どうみても貴族だ
古臭ェ木製のヴァイオリンケースと暗緑色のリボンでまとめられたローポニーが余計に貴族感を出している
「お前にとっちゃそれがラフな服なんだなァ?えーっと…」

やっべ、こいつの人間界での偽名知らねェ!
というかこいつも俺の人間界での偽名知らねェよな…
察したのか周りに聞こえないレベルの声量で「レイモンドだ」と伝えてくれた
「レイモンドよォ…」
「コートもベストも着ていない、だからこれはラフな服装だ」
「イマドキのラフな格好は襟もフリルも付かねェって言えばよかったぜ…」
予約した店で名前確認があるから、そこで俺の偽名を確認してくれと言っておいた
…昨日の電話で言えばよかったなァ

「2名で予約したブラッドだ、ブラッド・アーチボルド・ロビンズ」
「レイモンド・ラトクリフ・ジェフリーズ…」
「お前はいいんだよ名乗らなくても」
店員がクスリとしたがすぐに表情を戻して案内をする

とりあえずビールと白ワインを頼んだ
「1杯飲んだら演奏する」
「おぉ、そうか で、何曲演るんだよレイモンド」
「周りの空気次第で何曲するか決める」
頼んだモノが届き、乾杯を済ませてお互い一気に飲み干した
ウキウキしてんのか緊張してんのかワイングラスの持ち方がビールジョッキ持つみたいになっている、シュールだ

「…行ってくる」
ヴァイオリンケース片手にステージに向かい、そしていよいよ演奏が始まる
一応酒場だ、アイリッシュ音楽とかそういうノリの良いヤツをやるんだろう
そう思って店員に2杯目のビールとフライドポテトを頼もうとした矢先だった
聞こえてきたヴァイオリンは明らかにクラシックのソレだったが…
俺の知っているクラシックのテンポじゃなかった、速い
客達がどよめいている そりゃあ当然だ酒場で演奏する様な曲じゃねェし
酒場で演奏するにはあまりにも勿体ない上手さ、何で酒場でコレ披露しようと思ったんだよレラジェ…
弾き終わり、何秒かの間があり 演奏が終わったと分かった客達は拍手をした
拍手がまばらになり、終わる そして2曲目、3曲目…と続いた
クラシックに学がねェせいでどう考えても「超絶技巧」としか言葉が出ない

長い5曲目が終わり流石に疲れたのか深々と礼をし、ステージから降りた
演奏者が元の客席に着くまで拍手が終わらず、座る前にもう一度礼をした

ヴァイオリンケースをそっと置き、感動冷めやらない店員を呼び付け白ワインとチーズの盛り合わせを頼み一息ついているレラジェに質問をした
「アレなんだったんだよ、曲名」
「…ニコロ・パガニーニ、24の奇想曲」
全然分からねェ
「最初の曲はスピッカート奏法が特徴的な第1番だ、我ながら飛ばしすぎたと思っている」
「まぁうん、ありゃあ凄かったな 一気に客の視線が酒ツマミからお前に行ったもんな」
白ワインとチーズの盛り合わせが届く
普段だったら丁寧にチマチマ食うところ一口でチーズを食い白ワインで流し込み話を続けている
「2曲目は第9番だ、今思えばこの曲から演奏するべきだったな…」
白ワインをぐいぐい飲みながら語る語る、止まらない

閉店ギリギリまで語りとワインは止まらず、最終的に店長から「演奏は素晴らしかったのですが…」とやんわり追い出され
ボトルを何本も開け割と酔っているレラジェの代わりにヴァイオリンを持ち、レラジェの親父さんに連絡をした

未だに緊張する、初代魔王の右腕への連絡は
人間を無慈悲に取り込み糧にする触手の悪魔というイメージが拭い切れねェ
初代魔王に次ぐ恐怖の象徴、今や子煩悩じいさんだがそれでも…

「あれ、意外とはやかったねぇ 朝帰りだと思ってたよ」
「あ…その、バルバトスです、レラジェはちょっと…飲みすぎたみたいで」
「迎えに来てほしいって?」
「はい…」
「住所さえ分かれば迎えに来れるけれど、分かるかな…」
店の住所を教えた直後、裏路地からスッとやってきた
「ふふ、飲みすぎちゃうくらい楽しかったんだねぇよかったねぇ」
サルガタナスさんにレラジェを預ける、細い腕なのに10cmも差があるのにレラジェを楽々と支えている
人間がいない事を確認して触手でヴァイオリンケースを丁寧に受け取った

「こっちに転送魔法を置いたんだ、バルバトス君も一緒に帰ろう」
「あ、あぁハイ、ありがとうございます」


あとがき
当然の様にヴァイオリン弾けるレラジェさんマジお貴族
パガニーニはラ・カンパネラの人って言ったら伝わりそう
24の奇想曲はヴァイオリンメインだから安直にやらせたかった
個人的にレラジェさんはAlexander RybakのFairytaleも出来そう、歌も込みで
歌ってくれレラジェ~~