【単発】深夜テンションの産物

作文や読書感想文を母親に代行させてた文章構成力ゼロ眼鏡が
夜中のテンションで作ったものです
作中出てくる料理はコチラ

308号室 紀伊埜本 直葵(キイノモト ナオキ)&栄村 舞衣(エイムラ マイ)
インターホンが鳴った、恋人の舞衣が帰ってくる時間ではない
早帰りの連絡も受け取っていない、舞衣ではないだろう
モニターを見た、知らない人が映っていた
好青年という概念を擬人化した様な男だ、少しソワソワしている
そういえばついこの間、引っ越し業者のトラックがマンションの駐車場に停まっていたな…
さっきまでやっていたゲームの主人公の様に推理をしようとしたが
でかでかと『御挨拶』と書かれた包装紙に包まれた粗品であろう物が見えた時点で単純に引っ越してきた人という答えが出て終了した
「…はーい、今出ますよ」

「こんにちわ!あの、307号室に引っ越した贄田 賢作(ニエダ ケンサク)です、ええと…」
彼は困った様な顔をしながら部屋番号の下にある僕の苗字…紀伊埜本が書かれたプレートを見ている
まぁそうだよな、デザイン性重視で振り仮名を入れてないから無理もない
「きいのもと、です。すみませんね不親切なプレートで」
「紀伊埜本さん…改めまして307号室に越して来た贄田です!そしてこれは粗品です!荷解きをしないといけないのでこれで!」
引っ越しの挨拶品を若干強引に手渡され、そそくさと部屋に入って行ってしまった
中身は…クッキーだ、偶然にも僕が好きなジャムサンドと恋人が好きなシガレットだった

贄田さんは見た目通りの好青年らしくマンション内はほぼほぼ贄田さんの話題で持ち切りだ
「重たい荷物を部屋前まで持っていってくれた」とか「階段や通路ですれ違うといつも会釈をしてくれる」とか「ご飯を作ってもらった」とか色々だ
舞衣から「(マンションの)入り口でお絵描きしてたら贄田くんにすっげぇ褒められちった~えへへ~」と聞いた時には何故か取られるんじゃないかと思ってしまって慌ててしまった
これくらいで大好きなきぃちゃんを捨てるワケないだろ!と恋人にスケッチブックで軽く叩かれて正気を取り戻した

狭い部屋が1週間限定で若干広くなった、帰省シーズンなので舞衣は実家で両親と過ごしている
僕は新入社員が揃って帰省した皺寄せで帰省出来なかった
贄田さんも帰省しなかったらしく毎朝マンション入り口で会う
僕より楽な仕事なのか、体力があるのか、贄田さんは朝でも元気そうだった

いつもより若干忙しい職場でいつもより疲弊して帰って若干焦げてたり半焼けだったりするトーストを齧る、安い8枚切りのせいか2枚食べても足りない
僕は料理が出来ない、壊滅的に 大好物のトーストすら満足に焼けない
そもそも舞衣に料理や家事を取られている、一回皿洗いで僕が大怪我してからというものありとあらゆる家事を禁止された
上達しようがない、トースターと電子レンジは今回特別に許可が下りているから使えるのだが…
3枚目のトーストを作ろうとしたその時インターホンが鳴った
モニターには贄田さんが映っていた
「どうしたんですか贄田さん」
「他の人は帰省か何かで留守みたいで出てくれなかったんですよ~晩ご飯一緒にどうです?」
8枚切りトースト2枚では足りないと腹が言っている気がする
「別に、いいですけど…」
「やったぁ!えっと、僕の部屋で食べます?それとも紀伊埜本さんの部屋まで持って行きましょうか?」
「あー…片付けとか考えるとどちらの方がいいですかね…」
「じゃあ僕の部屋ですね!ささ、行きましょう!」

隣人…贄田さんの部屋だ、下駄箱の上には恐らく両親であろう男女との写真が飾られている
「あと炒めるだけなんで座って待っててください!」
「あ、はい。分かりました」
料理を待つ間、部屋を見回した
本棚には家でも作れるカクテルとか料理本が多い、あと漫画だ
テレビの前にはゲーム機とカードケース、見覚えのあるタイトルが多い
コルクボードにはポストカードと写真、そして…
Smalt JayBlue…?
なんてこった…僕の絵だ、一時期血迷ってネットプリントに登録した僕の絵だ!

「あの贄田さん、この絵って…」
「はい!できましたよ、ご飯」
「あ、ありがとうございます」
ひき肉とモヤシを炒めたものが丼になっている、醤油の良い香りがする…
「辛いの平気か聞くの忘れちゃってたのでレシピよりコチュジャン少なくしたんです、足りなかったらキムチとか乗せてもいいかもしれませんね」
「あ、お気遣いどうも…ピリ辛程度なら大丈夫です…あの、贄田さん」
「なんでしょう?ご飯は多めに炊いてるので遠慮せずに食べてくださいね」
「ええと、あの…絵なんですけど」
「あ~!スマルト・ジェイブルーさんの絵ですか!僕この人の絵大好きで!」
スマルト・ジェイブルーは僕です、とは言いにくいな…
「中学の頃からずっと見てる絵師さんなんですよ、最近恋人が出来たみたいで本当めでたいな~もっと惚気てくれてもいいぞ~って思いながら見てるんです~!!」
何だろう、一気に怖くなってきた
いや、考えすぎだろ…そう思って箸を進めた、美味しい
腹が減っていたのもあってあっという間によそられた分を食べきってしまった
「クラ〇ル様様ですね~!紀伊埜本さんの口に合ったみたいで良かったです!」
「あ、食べ終えたので僕は帰ります…」
「えっと、結構具を作っちゃったので食べれるなら食べてくれると嬉しいんですけど…」
「……いいんですか?じゃあおかわりを…」

「いやぁ~食べた食べた!紀伊埜本さん小食そうなのに結構食べましたね~無理させちゃいました?だったらその、ごめんなさい」
3杯…いや恐らく茶碗がやや大きいから…約5杯か、舞衣だったら「いつ見ても細すぎ!もっと食べろ!!お医者さんやウィ○ボ君から痩せすぎってずっと言われてる自覚持て!」と更に食わされてただろうな…
みっともなく膨れた腹、ベルトはこっそり緩めたが苦しい
ワイシャツじゃなくて良かった、ボタン付きの服じゃなくて良かった
見れば見るほど恥ずかしい、自分の部屋ならともかく他人の部屋でこんな…
あぁあ消化しようとゴロゴロ鳴っている!やめろ!!僕の胃!!!
「うわぁ花紺青さんの絵みたいになってる…大丈夫ですか」
花紺青、僕の若干アレな絵を載せる方のアカウント名じゃないか!
僕がその、本人だと気付いているのかいないのか?!
分からない 分からない!今はとにかく自分の部屋に戻りたい!
「だ、大丈夫です…帰ります」
「隣だし送りますよ!」
「隣"だから"大丈夫ですよ…」

何とも言えない恐怖と純粋な恥ずかしさから逃げる様に帰ってきてしまった
苦しい、横に、横にならないと
右向きで横になりながらスマートフォンを見た
ずっと腹から音が聞こえている、さっきよりかはマシだがやはり恥ずかしい
舞衣からは「寂しくないか~」「実家でネコちゃん描いたぞ!見ろ!」と連絡と緩い画風の猫イラストが送られていた
起こった事を一通り伝えたら腹の自撮りを求められた
膨腹シチュエーションのネタに出来るだろうし花紺青名義のアカウントに投稿しようと思ったが
待てよ
これで投稿したら、答え合わせになってしまうんじゃないか?!
舞衣が帰ってきてから見せよう、うん…