アンケート回答に込められた笹岡くんからのメッセージ

※一年前に書いて温めていた記事を、このたび時勢(?)を鑑みて公開することにしました。

2021年6月14日、PRODUCE 101 JAPAN SEASON 2のファンブックが発売されました。その中に、練習生ひとりひとりの直筆アンケートのコーナーがあるのですが、笹岡秀旭くんのアンケート回答が「凄かった」ので、私なりの解釈について、お話させてください。

※以下、アンケートについてネタバレと私的見解を含みますので閲覧は自己責任でお願いします。本文そのままという、まるごと引用した箇所はほとんどありませんが、一文だけどうしても避けて通れないのでそのまま引用しています。

今回お話したいのは、アンケート1問目の解釈。
まず質問が、太古の昔からアイドル誌や女性誌なんかでよくある、「好きなタイプは?」というアレです。「知りたい!」という読者と「なんでそんなこと聞くん?」という読者に分かれるアレです。

近年LGBT問題について社会的に随分言われるようになったからか、質問文はそれなりに配慮はしてあるようで、「好きな女性のタイプは?」ではなく「好きな人のタイプは?」になっていました。

性的に女性を好きでなくてもいいし、受け取り方によっては恋愛観の話をしなくてもいい。そういうぼやかした質問であったと思います。でもほとんどの練習生が質問の意図を「好きな女性のタイプ」と読み替えて回答していましたね。女性性をイメージしたであろう回答や、好みの容姿についての回答も見受けられました。おそらくこの手の質問が聞きたいことは「それ」だろうと、誰もが察していたのだと思います。

そんな中、笹岡くんはどうだったかというと、書き出しからあまりに異色の回答でした。

まず、性別にこだわりはありません。

のっけから驚きました。この場面(アイドルオーディションの、特に濃いファン向けの媒体)でこれをはっきり言えるのは、本当に凄いと思いました。本心として、同じように思っている人は他にもいると思うのですが、こういうアンケートだとまず求められる回答を素直に答えてしまいがちではないでしょうか?その方が楽だし、角も立たないし。でもあえてこう答えたところが本当に凄すぎて私はもう凄いしか言えなくなりました。

以前、他のジャニーズのアイドルグループも、確か雑誌のアンケートで同じように質問文自体から否定するような回答をして、そのことがTwitterで絶賛されてバズっていたと記憶しています。逆を言えば、トップアイドルですらこういう回答ができる人は本当に少ないんです。まだ練習生という立場で、扱いはあくまで一般人の笹岡くんが、どうしてこんなことが言えるの?

私はもうこの1文目で感動してしまって、続く次の文の意味を最初はちゃんと理解できなかったのですが、本当の意味で更に凄いのがこの2文目だと思います。

「なぜなら」で始まるこの2文目は、一見、1文目の理由を説明しているだけに見えます。質問の「好きなタイプ」に対して結局何も具体的に答えていないように見えます。でも、そうじゃないと気づいたとき戦慄しました。笹岡くんの回答の意味を、私なりに解釈したものを掲載します。

「タイプなんてないです。タイプを決めつけることで可能性を狭めたくないです。性別すらも関係ないです。自分の常識や思い込みを超えて惹かれてしまうほど魅力的な人に将来出会えたら、それが一番素敵なことだと思います」

(笹岡くんが使った言葉や表現とは異なります。あくまで私個人の解釈です)

笹岡くんは、アンケートの質問自体の質の悪さについて一切責めず、自分の問題のように扱い、誰も傷つけない言い回しでこれを表現しています。

あまりにクレバーではありませんか?視点の高さがグローバルだなと。

そしてこの回答の意味を理解したとき私の頭に咄嗟に過ぎったのは、BTSが国連でスピーチをしたという話でした。私はARMYではないしBTSにも詳しくないのですが、この件で初めて国連スピーチの全文を読んでみたところ、笹岡くんの回答の裏に透けて見える考え方との一致具合に驚きました。

あなたの声を聞きたい。あなたの信念を聞きたい。
あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色や ジェンダー意識は関係ありません。
ただ、あなたのことを話してください。話すことで、自分の名前と声を見つけてください。

https://www.unicef.or.jp/news/2018/0160.html

笹岡くんはBTS好きを公言していますから、無関係ではないかもしれないと思います。まだ読んだことがない方はぜひ見てみてほしいです。

このような新しい価値観を持ち、柔軟な考え方ができるのは、これからの世の中で活躍する人にもっとも必要なことのうちのひとつだと思います。男だから、女だから、日本人だから、ミックスルーツがあるから、若いから、もう若くないから、そういう他者に貼られるレッテルを飛び越えて、自分は自分だよと言える勇気。そして自分自身にもレッテルを貼ることはしたくないという、しなやかな強さ。何でもカテゴライズしてレッテルを貼っていくのは(間違っているわけではありませんが)ある意味で「楽な生き方」です。そうして物事の表面だけを見ていたら、時には本質を見失う恐れもあります。でも笹岡くんの座右の銘「楽はしない、偉ぶらない、誰のせいにもしない」にあるように彼はそれを良しとしない。大変かもしれないけど、目の前にあるものをそのままの姿でまるごと受け止めることの大切さを、笹岡くんは知っているし、実践しているんだろうと。
笹岡くんもいつか国連でスピーチしたらいいんじゃないかと思いました。

いや本当にそう思ったよ。

皆さんはどう受け止められたでしょうか?

自分の道は、他の誰でもなく自分の価値観で切り拓いていく。
私にとっては、そんな強い意志を感じ取れるアンケート回答でした。

最後に蛇足ですが、笹岡くんの回答が「性別にこだわりはない、なぜなら〜」で終わっているため、「続きがあるのでは?」「結局タイプがわからないから知りたかった」のような感想も一部で見かけました。しかし、笹岡くんの回答はこれで十分で、これ以上はないのだと思います。私の解釈のところで書いたとおり、「タイプなんてない」のが答えです。「自分の好きなタイプ」を自分で決めつけて将来の可能性を限定したくないのだろうし、相手のことも「あなたはこういうタイプでしょ」と決めつけるようなことをしたくないのだと思います。性別の話から始めているためもしかしたら誤解を生んでいるかもしれませんが、特に自分のことをバイであるとかパンセクシャルであるとか宣言しているわけでもないと思います。むしろそういう「レッテル」を貼ることをしたくないというのが主旨だと思うのです。

笹岡くんはきっとこの自由で強くしなやかな魂と共に、これから広い世界へ羽ばたいてくれるだろうと期待しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?