「普通、大変」第3話

私、橘海斗は静かに生活したい。それは学校以外でも言える。
東京の時は兄貴や姉貴と歩いているだけで人が集まり非常に不便な生活の連続だった。だからこの町では目立つことなく普通の生活を送りたい。
そして今日は休み。
メガネ、帽子、マスク準備はOK。
ゲームセンターに来た。

最近テレビでクレーンゲームの特集が行われているのを見て自分の中のクレーンゲーム熱が出てきた。

百円玉を投入。

ティロリン

最近はスマホやパソコンでクレーンゲームをやりまくっていたがやっぱり実機でやるのが楽しいそうになってきた。

本当のところなら技を使って一発で取りたいところだがここは安定の三回で確実に行くか。でも今懐が少し寂しい…


辺りを見回す。


一発で行くか。


ポチッ


ウィーーン


ピロンピロンピロンピロン


ガチッ


ウィーーン


ガコン


一発成功。誰にも見られてないなら。

この調子で辺りを見渡しながら一発で取っていく。


ガコン


海斗「まぁこんなところかな、とりあえず誰にも見られずに済んだし、最高の気分...」
誰かが服を引っ張っている。

海斗「もしかして...」

小学生ぐらいの男の子がそこにいた。

誠君「お兄ちゃん、凄いね」

海斗「いつから見てた...」

誠君「最初から見てた」

海斗「そう...」

誠君「お兄ちゃん、僕をで」

海斗「それ以上言ってはいけないよ」
"この子は間違いなく弟子にしてください師匠とか言ってそれが広まってまた別の子に言ってあぁ考えるだけで"

誠君「弟子にしてください師匠」

海斗「思っていたことをそのまま口に出してしまった」

誠君「お願いします。師匠」

海斗「弟子とか取ってないし今までのもたまたまだから、あのおじいさんとかどういっぱい取ってるよ。あの人こそ達人みたいな見た目してるしあの人にしな、ほらほら」

誠君「あのおじいさん怪しいです。怪しい人について行ったらいけないって言われた」

海斗「俺も十分怪しいだろう」

誠君「お兄ちゃんは怪しくない」

海斗「どこ基準なんだよ。でも弟子も取るつもりもないし師匠でもないし、諦めな」

誠君「・・・」

海斗"ようやく静かになったか、うん?"

誠君「う、う、うわぁ」

海斗「わ、わかったよ。頼むから泣かないでおくれ」

ウィ〜ン

誠君「え、ホント」

海斗「お前、嘘泣きしてたのか」

誠君「えへへ」

海斗「全く最近の子供は」

誠君「子供じゃない誠だよ」

海斗「はいはい、誠君ね。でも今日だけだからな」

誠君「わかったよ師匠」

海斗「師匠はやめてくれ、目立つから...で俺になんのようなんだ」

誠君「実はどうしても欲しいぬいぐるみがあって」

海斗「ぬいぐるみ?」

誠君に誘導される

海斗「これか、ちょいあら」
ちょいあら:なんかちょっとあいらいしやつ

誠君「これ欲しかったんだけど、もうあと一回しか出来ない」

海斗「使い込んだのかお金、うん?誠、買い物帰りか」

誠君「うん...」

海斗「そのお金は自分のものなのか」

誠君「・・・」

海斗「親御さんのなら俺は君に教えることは何もないじゃあなぁ」

誠君「違う、違うよおつかい頼まれて余ったお金はお小遣いにしていいって、でも無駄しちゃダメだからねとも言われた」

海斗「それが今の状況ね、でもダメだ、約束を守れない子に教えることは」

誠君「お姉ちゃんの誕生日プレゼントを取りたかったんだ。いつも僕の面倒見てくれるから。グスン」

海斗「...泣くな、約束を守れなかったのはダメなことだ。だがその優しさに免じて取ってやるよ」

誠君「師匠...これお金」

海斗「それは大事に持っておけ、今日の反省と思って」

自分のポケットマネーを入れてスタート。

ガコン

海斗「ほらよ」

誠君「ありがとう、師匠」

笑顔で答えた。

海斗「おぉ、早く家に帰んな。心配してるぞお母さん」

誠君「バイバイ師匠」

海斗「またな」

海斗は見送ると家に戻った。

"今日は大変な目にあったぜ。だが"


誠君「ありがとう」


"たまには悪くねぇな"

次の日

華菜「今日はやけに嬉しそうね」

美月「昨日ね弟が私のためにちょいあらのぬいぐるみくれたの。ゲームセンターで取ったらしいの。でも無駄遣いしたから母親にはこっ酷く怒られていたけど」

華菜「やるじゃん弟君」

美月「詳しく聞いたら師匠って人が取ってくれたって言ってたよ」

華菜「何それ、まだそんな人いるのゲーセンで」

美月「でも若いんだってその人、いつかお礼言わないとな」

華菜「怪しいぞ、美月が目当てかもよ」

美月「えぇマジ、こわ〜」

そんなことは知らずに今日も橘海斗は登校するのであった。

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