忘春

どれくらい歩いたんだろう
光のない世界を
藍微塵(あいみじん)を纏った姿は
今も呪いで満ちている
涙なんかとっくに枯れて
抜け殻みたいな日々
どうか全部がなかったことに
何度そう思っただろう

待ち望んでいたかのように
芽生えたその蕾
全部もう引きちぎりたい

勿忘草泣いて咲いている
知らない意味ないこんなメロディ
もう春なんて来ないで
気が触れそうになる
「忘れたい」だなんて最低なことは
もう二度と言わないから
もし願いが叶うなら
もういちど愛を
他の誰かじゃない
あなたの愛を

深い穴に植え付けられた
トラウマが蘇る
あの日から私は一人で
生きていくって決めたんだ

当てつけみたいに誇らしげな
満開の桜並木
全部焼き払いたい

勿忘草泣いて咲 いている
効かない意味ないそんなセラピー
もう春なんて来ないな
こんな私には

昔、若い騎士が川の岸辺に咲く藍色の美しい花を見つけた
愛する人のためにそれを取りに行った騎士は誤って川に流された
死を悟った騎士は力を振り絞り掴んだその花を岸辺に投げた
最後にこう叫んだ「僕を忘れないで」そして亡くなった

残ったのは
私一人とこの花

勿忘草泣いて咲いている
知らない意味ないこんなメロディ
もう春なんて来ないで
気はとっくに触れている
忘れないよ絶対忘れないよ
苦しくても生きていくから
もし願い叶うなら
もういちど愛を
他の誰かじゃない
あなたの愛を

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