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人生の交差点

駅前のカフェには多種多様な人間模様があいまみえる。机の上に新聞を広げたまま終始俯いている老人、靴を脱ぎ両足をソファに乗せ膝を抱えたまま虚空を見つめるお婆さん、両耳にワイヤレスイヤホンを装着しノートパソコンに没入している若者の隣には濃いめのメイクで着飾った女性が落ち着きのない様子でスマホを弄っている。およそ接点を持たない人達が織りなす人生の交差点を眺めながらすする一杯のコーヒーはいつもよりほろ苦く感じた。第三者目線で他者の人生を傍観していた自分も、いつの間にか舞台上で自分という役を演じていたことに気づいた時にはコーヒーカップの底がこちらを見つめていた。自己がありその周りに他者が存在するという傲慢な価値観は呆気なく崩れ去り、歴史という物語の中では皆同価値のエキストラを演じているすぎないという事実に辟易としつつも、朝から美味しいコーヒーとカイザーサンドを食べられるだけでもうどうでも良かった。

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