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靴のオキシ漬け

嫁がカギを失くしたと涙目で言ってきた。
新婚旅行先で記念に買ったキーリングごと失くしてしまったらしい。相当落ち込んでいた。

つい最近、近所の公園を通ったことがあったので、僕は1人でその公園に向かい、カギが落ちてないか探した。
子供達や犬を連れた奥様方の視線を感じながらも、僕はイチョウの落ち葉を足でかき分けて公園内をくまなく探した。
しかし結局、カギは見つからなかった。残念。

あきらていたその瞬間、僕はある事に気付いた。犬のウンコを踏んでいたのだ。

最悪だ。家に帰り、ひたすらタワシで靴を洗う。僕は貴重な平日休みの昼下がりに何をやっているんだ。お気に入りのニューバランスのスニーカー。996。グレー。ウンコ。洗う。

ウンコの汚れは綺麗に取れた。ついでにこれまでの汚れを一気に落としてしまおうと、オキシクリーンを利用したオキシ漬けをやることにした。

※イメージ

バケツいっぱいに水を入れ、オキシクリーンを溶かす。その中に靴をドボン。そのまま数時間漬け置きするとピカピカになるのがオキシ漬け。

次の日、オキシ漬けをしていた事をすっかり忘れていた事に気づく。結局ほぼ丸一日漬けでしまっていたのだ。
バケツ内の水は真っ黄色に変色していた。びっくりした。これは汚れなのか。僕の足はそんなに汚いのかとショックを受けた。

しかし驚いている場合ではない。このままだとせっかくのスニーカーが黄ばんでしまう。洗剤で全身全霊を込めて靴を磨く。水を絞りだす。黄色い。また洗う。絞る。黄色い水。洗う。しぼる。黄。アラウ。シボル。キ。アラシボキ。

数回の洗浄作業を経てようやく絞り水の濁りは取れた。あとは日陰干しで乾燥させればいいのだが、僕はこういうのをあまり待ってられないタチなので、コインランドリーに行く事にした。

コインランドリーには靴乾燥機なるものがある。その中に靴を突っ込みスタート。100円で20分。自販機で買った抹茶オレを啜りながら、少し離れた所で優雅に乾燥を待つ。

タイマーが残り1分になったところで、その靴乾燥機の前に1人の男性が現れた。どうやらその人も乾燥機を使いたいらしい。
終わったらすぐに出してあげないと、と僕は少しソワソワしながらも乾燥機に近づいていった。

タイマーが鳴り、僕の靴の乾燥が終わった。その瞬間にその男性は僕の靴を出し、その辺の床にポイッと置いた。

えっ、と思わず口に出してしまった。その男性は僕に気付き、気まずそうに離れていった。

これは普通の事なのか?人の靴勝手に出すかね?そして勝手に床に置くかね?どうもモヤモヤした気持ちが晴れないまま、結局20分そこらでは全く乾かなかった靴を持って家に帰る。新しい靴買おうかな。

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