授業科目の位置づけ(情報文化概論と情報社会論演習)
あまりこうしたことを公にしたことがなかったのですが、書籍広報のため再開したtwitter(だがもはやfighters垢)や新しく作ったnoteがせっかくあるので書いて見よう思いました。
僕が本務校(筑波大学比較文化学類)で主に担当している講義と演習に、情報文化概論と情報社会論演習があります。
所属しているのは、文化科学領域情報文化学コースですが、専任教員は二人しかいない超弱小コースです。メディア論は学際的研究領域で、扱わなければならない範囲がかなり広くなります。事実、もう一人の先生と僕とは学位名は同じですが、研究の方法論はかなり異なっています。
情報文化概論は、そうした状況の中で、二人の専門領域に接しつつ、比較文化学類らしさを失わず、なるべく広くメディア論の展開を説明することを心がけています。僕の主指導教員であった佐藤卓己の『現代メディア史』を教科書に話しているのですが、これがまたちょうどこうした路線に当てはまるのです。
カリキュラム上、教科書の全てを話すことはほとんどないのですが、『現代メディア史』は非常によく練られた本で、いろいろな伏線がいたるところに仕掛けられており、「あの時に書かれたあれがここにつながってくるのか!」がたくさんあります。じっくり話すことができないのが残念なほどです。また、だいたい途中で終わります。ただ、消費社会まではきちんと話したいと思っており、そこまで行ければ話はだいたいまとまると思っています。(とはいえ、もっと見通しをつけられるように、一時、抜本的な構造改革をしようと思ったのですが、コロナ禍と単著執筆期に突入してしまい、途絶しました。)
要は、かなり手広く扱っており、どうしても自分でも手薄なところがでてきてしまうのですが、そこは毎年自分なりにテーマを決めて、授業準備にかこつけて勉強しています。
情報社会論演習は基本的には文献購読で、2024年度の春学期は下記を抜粋で扱う予定です。
アイゼンステイン『印刷革命』、マクルーハン『メディア論』、キットラー『グラモフォン・フィルム・タイプライター』、アンダーソン『定本 想像の共同体』、サイード『イスラム報道』、カミングス『戦争とテレビ』、ヤーヴァード『メディア化理論入門』。
(もう一冊増やす可能性が出てきており、その場合はマラニー『チャーニーズ・タイプライター』を考えています。)
(なお、昨年度はベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」、清水幾太郎「流言蜚語」、ハーバーマス『公共性の構造転換』、ボードリヤール『消費社会の神話と構造』、マキァーネル『ザ・ツーリスト-高度近代社会の構造分析』、ラマール『アニメエコロジー-テレビ、アニメーション、ゲームの系譜学』、アライダ・アスマン『想起の空間―文化的記憶の形態と変遷』を抜粋で扱いました。)
こちらも一応、比較文化学類のテイストを鑑みながら、また幅広いメディア論の領域をそれなりに見えてくるように、ある程度テーマを決めて選択しつつ、何度も読んだものと自分でも勉強したい文献を取り入れています。
春と秋のどちらかは理論的な書籍を中心にし、もう一方は近現代と戦後の日本メディア史の論文を中心に読んでいきます。本ばかり読んでいても、おもしろいんですが論文にはなかなかつながりません。そして、基本的に2年春秋でようやくひとまとまりと考えています(それでも網羅には程遠いのですが)。ですので、情報文化学コースを志望する学生さんにはなるべく4つ授業を受けていただきたいです。
どの授業もそうなのですが、授業は自分の勉強の機会としても位置づけています。特に、本はなかなか自分だけでは、直近で必要とするもの以外は読まなくなってしまうので。もともとメディア論・メディア史は幅広い領域なので、なるべく受講生のいろんな関心を刺激できるようにしつつ、ついでに自分も勉強していくというスタイルです。ちなみに、僕の専門に一番近い授業が、ここでは挙げなかったのですが、今年度の秋学期に開講する記号文化論です。この科目は専門に近い分、年々あれもこれもと付け足した結果、だいぶ肥大化(というかメタボ化)してしまったので、なんとか今年の秋学期までにダイエットしたいと思っています。
他には専門導入基礎演習や卒論基礎演習があります。専門導入基礎演習は今年からは論文の解析からはじめて、論文の読み方や発表の仕方についてしようと思っています。卒論基礎演習は応談科目で実質的には卒論中間発表会となっています。つまり、卒論の指導は科目外で個別で実施するということになっていました(正規ではない)。これについては色々考えまして、今年からは隔週くらい曜時限を設定して(候補は火曜6限)、文献購読や論文構想発表の時間を設定できればとは思っています。もちろん、あくまで希望者が集まればなのですが。学生にはどこかのタイミングでアナウンスしたいと思っています。
おしまい。
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