【100文字小説】タリタ・クミ

娘さんの手に触れ、声をかけてあげてください、と医師は言った。
それで植物状態から脱することもある、と。

「タリタ・クミ」

私は由美子の左の手を撫で、ささやく。

ああ、イエス様。
どうか、右の手をお取りください。

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