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桜が散る日は君に会いたい

「大丈夫だよ。次があるって」

私、賀喜遥喜の日課は失恋した親友の遠藤さくらを慰めることだ。

舞台は放課後の図書館。

今日も今日とて、意中の男に告白したが好きな人がいるときっぱり断られてしまった。

「あの男が見る目ないだけだよ」

机に突っ伏してピクリともしないさくらに言葉を投げかけて早五分、そろそろ生きているか不安になってきた。

「さくちゃん?」

ゆっくりと上がったさくらの顔は、涙でボロボロになっていた。

「死ぬ時は一人なんだ…」

「そんなことないよ」

「そう言うかっきーもいつか彼氏を作って私の側から離れていくんだ…」

実にめんどくさい。

世紀の大失恋のようなリアクションだが、これが月一で起こる。

どうせ来週には新しい男に目を引かれている。

「私って、かわいくないのかな?」

「めっちゃかわいいよ」

意味があるか分からないが、頭を撫でてやる。

「私のことを分かってくれるのは、地球上でかっきーだけだよ…」

どうやら効果ばつぐんらしい。

さくらは私の胸に飛び込んできた。

なんてことない女友達のスキンシップに、私の心臓は飛び跳ねた。

シャンプーの良い香りがするさくらの髪、私に絡まる細くて白い腕。

改めて感じた。

私はさくらが好きなんだ。

引き続き、頭を撫でてやる。

さくらを独り占めできる時間。

彼女には申し訳ないが、私はこの時間が大好きだ。

「かっきーは好きな人いないの?」

「え?」

再度心臓が飛び跳ねる。

「かっきーのそんな話、聞いたことないし」

つぶらな瞳が私を見上げる。

「そんなのいないよ」

作り笑いをして、誤魔化す。

「嘘ついてる」とさくらが拗ねる。

「かっきー、作り笑いする時片目つぶるもん」

図書館内が沈黙に包まれる。

「分からない方が良いこともあるんだよ」

無知は罪と同時に、幸せだと思う。

正直に打ち明けたところで何も変わらない。

いや、それは嘘だ。

何もかもが変わって、私の隣には誰もいなくなる。

「ふーん。かっきーがそう言うならいいけど」

そう言って、さくらは私の胸に顔を埋める。

「でも一つ言わせて」とさくらは言う。

「私は何があっても、かっきーの隣に居るからね」

涙がこぼれぬように上を向く。

「ありがとう」

私はさくらのことが好きだ。

でもそれ以上に、君の幸せを願ってる。

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