桐谷さんの投資手法を体系立ててみた【詳細編】

導入

前回の記事では下図にまとめた桐谷さんの投資法の概要を説明した。

投資手法の全体図

今回の【詳細編】では上図に示した"投資資金"と”投資判断の方法”の構成要素について説明していく。

投資資金

この投資法は、余裕資金の中で投資を行うことを前提としている。同時に長期の分散投資を志向するものでもあるので、生活資金の中から余裕資金を投資資金に振り向け、生活資金と投資資金は明確に区分する。
また、分散投資と言える程度までポートフォリオを大きくするためには少なくとも数十万円できれば数百万円の資金が欲しい。後述する通り投資資金の中に現金を保有する必要があることも踏まえて、配当金は投資金の中で管理し再投資に振り向けることとする。

投資判断の方法

1.個別銘柄のスクリーニング

この投資法は優待と配当によるインカムゲインを重視する投資手法であるため、自分にとって使える良い優待のある銘柄であること優待利回りと配当利回りを併せた総合利回りが4%以上ある銘柄を選別するところから始まる。
この条件に適合しない銘柄は投資対象とはならない。

加えて、【概要編】でも述べた通り、桐谷さんの経済・個別企業の業績への見方は楽観的なもので、悪くなったとしても持ち直すという見方をしている。
従って、株価が下落しているという事は絶好の買い時という事を意味し、株価が下降トレンドにあること、特に年初来安値というのは買い時を知らせる好ましい条件と考える。

次に、安全性の評価である。
この投資法では優待だけでなく配当があることを安全性の基準として用いる。また、高い総合利回りを企業の健全性の尺度とするため、記念配当など一時的な要因でなく安定して高い総合利回りを維持していることを確認する。

最後に安全性の条件を満たした銘柄を投資候補として優待を受けられる最小単位の金額が小さい順に並べ、次に説明する資金ルールに従って、金額が小さい順に投資を実行する。
ただし、特別に魅力を感じる優待がある場合は優先順序を前後してもかまわない。

以上の内容をまとめると下図の通り。

個別銘柄のスクリーニング

【補足1】
このリスト化と順位付けは桐谷さんは直接言及していない。このリスト化は以下3つの条件の下で、金額が小さい順に投資することで、投資銘柄数を増やすことが分散投資につながると判断したアレンジ箇所である。

  1. 銘柄ごとの優劣を決める基準が示されていないこと

  2. 分散投資については明確に言及されていること

  3. 分散効果を得るための組み合わせ方については言及されていないこと

2.資金基準による投資判断

資金基準とは投資資金の現金比率を調整する基準である。
資金基準を構成要素として個別に立てている理由は、以下の3つの条件を満たすには、市場下落時に備えて現金ポジションを持つ必要があり、市場下落を判断し投資を実行する基準が必要となるためである。

  1. 桐谷さんは経済観に則り市場暴落時に積極的に投資を行っていること。

  2. 投資資金は生活資金とは別の余裕資金とすることが明言されていること。

  3. 信用取引を行わないことが明言されていること。

上記3つの条件を満たすため下記のような資金基準を設ける必要がある。
なお、この基準は私が桐谷さんの発言内容から設定したものである。

  1. 日経平均が直近高値の80%以上の水準にある間は投資資金の30%を現金で持つ。

  2. 日経平均が直近高値の80%を下回った場合、投資資金の現金すべてで追加投資をする。

  3. 日経平均が直近高値まで戻した時点から配当と損切・利確で得た現金は投資資金の30%となるまで再投資は行わない。

3.損切・利確基準

損切は基本的に行わない。正確には損切を行わないというよりは優待が受け取れれば良しとして、株価の上昇を期待する。
従って、優待の魅力がなくなった場合、優待が廃止された場合は損切の対象となりうる。
配当の魅力がなくなり、株価が50%下がった場合は損切する。

利確は想定した株価まで上昇したから売ると言うように積極的に狙って行う投資手法ではないため、思いもよらず値上がりし、今後配当と優待を受け取り続けることよりも売却益を得るほうが利益が大きいと判断した場合に行うものである。
基準はクオカードなどの代わりの利く優待株が2倍になった時に利確する。

まとめ

まとめてしまえば投資判断の方法は下記のとおり非常にシンプルな投資法である。

余裕資金の中で、良い優待がある総合利回りの高い銘柄に、市場・株価が下落傾向にあるタイミングで分散投資する。
気に入った優待がある限りは株価の動きは重視せず、特別でない優待銘柄が2倍まで成長した場合と優待の魅力がなくなった銘柄が50%下落した場合だけ利確・損切する。

これで、桐谷さんの投資手法を真似することが可能だろう。
ただ、この手法がリスクとリターンが見合ったものになっているのか?手法に改善の余地はないかといった点については検討が必要である。
この点については、”桐谷さんの投資手法を体系立ててみた【ロジック編】”で検討する。

参考資料


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