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青汁王子_三崎優太さんの投資法を体系立ててみた


概要

令和版ブラックマンデーの後、大変なことになったと話題になっている青汁王子こと三崎優太氏の投資手法について、本人の発信やインタビューなどを基に推定して投資手法を体系立ててみようという試み。
あくまで、断片的な情報をまとめてできるだけ整合するようにまとめるとこのようになるという事なので、三崎氏がどこかでこういうことだと話していたわけではないのでその点ご理解いただきたい。
そこそこ長い記事になるので全体像をまずは図で示しておきたい。
この図の内容は本文で解説しているので詳細はそちらを参照いただきたい。

三崎モデル

投資期間と目標利回り

投資目的として、事業資金の調達を挙げていた。事業資金の調達を三崎氏の株式投資に頼らなければならない状況ではなかったようなので、あわよくばという意味だろうと思うが、ここでは文字通り真に受けて投資期間と目標利回りをどの程度に設定していたのかを検討する根拠としよう。

まず、10年かけて2倍になれば成功という様な長期投資ではないと推察する。報道によると事前に20億円の資金があったとのことなので、年間10%の利回りで運用しても2億円。
株価暴落後の状況説明として会社の運転資金として9月末までに3億円程度の資金が必要とのことで、20億円の現物+信用まで使って10%程度の利回りが目標というのは間尺に合わないように思う。
目的の性質上10年平均で20%や30%あってもダメで、直近の期間に利益をあげねばならない。(1年目-10%、2年目、5%、3年目+70%のように時間が掛かったのでは意味がない)

これらを総合すると数か月から1年で数十%のリターンを狙う投資法であるという事が言えるだろう。
さすがに素直に考えれば無理のある目標設定だと思う。

それでも無理やり目標を実現しようとするならば、資本の回転とレバレッジが必要になるだろう。また、レバレッジはリスクを高めるのでリスクを小さく抑える方法をセットで投資法に組み込む必要がある。
リスクを小さく抑える方法は結果から見ると十分でなかったか、そもそもなかったかどちらかだと思う。

資本の回転

三崎氏が多額の投資をしたことがわかっている売れるネット広告社とTWOSTONE&Sonsともに短期間で多額の投資を実施している。
ふつうの個人投資家に当てはまるとは思わないが、これだけの金額を短期間に投資すれば自らの買いによって株価が上昇しているのではないかと推察する。同様に売りの局面においても短期集中で売ろうとすれば自らの売りによって株価が下降してしまうという事も想定される。
よって、数%の小さな値上がりだとせっかく値上がりしたとしても、自らの売りが利益を帳消しにしてしまう可能性もある。
従って、成功するためには大きな値上がりを必要とする投資手法と言っても良いと思う。

短期間で何度も資本を回転させなければならないという事を考えれば株価自体に影響を与えかねない小型株に多額の投資を短期間で行うというのは目標との整合性に欠けると私は思う。

資本の回転を確保するためには短期間で大きく株価を上昇を見込める銘柄選定基準が必要となる。銘柄選定基準については別項で検討する。

レバレッジ

信用2階建てでの取引を行っていたとのこと。これは勧めている人を見たことがないが、目標とは整合する。事後に個人資産がほとんどなくなってしまったとのことなので、資産のかなりの部分が株式であったと思われ、本当にフルでレバレッジがかかった状態であったという事だろう。

信用2階建てについて簡単に説明すると。
保有している株を担保にお金を借り、担保にしたのと同じ株を買うこと。
株価が下がった場合、値下がり分の損に加えて、担保の価値が足りなくなった分追加で資金が必要になる。ハイリスクハイリターンな方法。
詳しくは以下の記事を参照。

全くお勧めはしないが、信用2階建ては目標設定とは整合している。

集中と分散

銘柄分散は恐らくされていたのではないかと思う。この点はいくつか持っていたという発言があったことと、既に保有がわかっているTWOSTONE&sonsの保有額が5億円程度であることからの推測だが、数銘柄に分散はしていたのだろう。
以下の資料を見たところ、売れるネット広告社とTWOSTONE&sonsも同時期に保有していたの時期もあったのではないだろうか?

https://www.buffett-code.com/shareholder/ea3d0fec6458242eb171424d252c9d53

これも推測の域を出ないが、仮に前述の2社を同時に保有していたとすると、分散投資をしていたとしても少数の銘柄であること、また、銘柄の特性に偏りがあったように思える。1銘柄が口座残高の25%以上で同時にあることから他に30銘柄に分散しているというポートフォリオはイメージしづらいし、両銘柄に多額の投資をする投資家が例えばNTTやメガバンクの様なコテコテの大企業に投資をしているとも考えにくい。
従って、分散投資と言っても特性の異なる業種や安定企業と成長企業に分散するといったものではないだろう。

銘柄選定基準

知られている投資先からその傾向を検討する。
現状知りえる範囲で投資実績のある企業は下記の2社。

売れるネット広告社
TWOSTONE&Sons

まず、2社に共通する特性を列挙してみる。

客観的に言えること

東証グロース市場上場企業。
小型株である。
高いPER水準。
成長志向の強い経営計画。
PR情報の適時開示が多い。
配当利回りは低い。

私の判断を含む評価

特に目を見張るような高収益体質ではない。
資産価値の面から見て割安感はない。
資本効率の改善や株主還元による株価向上が期待できる企業ではない。
業績予想を見ても大きな成長の見通しはない。
参入障壁が低く、業界内の競争は激しそうである。
独占的な地位・規模の経済などの競争優位性を持っているとは言い難い。
現在供給不足など一時的な好環境にもない。
WEBマーケティング事業など三崎氏のキャリアと親和性の高い事業内容を含んでいる。

推定

両社を見る限り資産価値や事業価値が過小評価されており、市場が本源的価値まで評価を戻すことによってキャピタルゲインを得るという考え方ではないと見える。

ならば、株価の上昇にはPERの水準から見て極めて高い業績の成長か市場の高い期待の醸成が株価上昇には必要になる。現実的には業績の成長によって株価を正当化するのは困難に思える。従って、ここから短期間で株価が上がるとすると、投資家の期待値を挙げることが現実的な打ち手にならざるを得ないだろう。

その点で積極的な成長志向をアピールするPRは重要な役割を果たしているように思う。M&Aや新製品・サービスの展開は適切な評価が難しいため、過大評価の機会になりうる。合理的に考えるとそれぐらいしか短期に株価上昇が起こる理由がないと私は思う。

これは私の見立てなので、三崎氏の狙いが実態の成長を期待したものなのか市場の過大評価を期待したものなのかは分からない。
ただ、投資期間と目標と整合させるなら、実績が出るより前に期待値で株価が動くことに期待した投資でなければ目標達成の可能性はないだろう。

銘柄選定基準を総括すると、あまり合理的なものとは考えられない。
市場の過大評価を期待する手法と評価するなら、他者は騙せても自分だけは騙せないという理屈になるし、実態の成長を期待する手法とするなら、とてつもない成長が必要でそのような期待に対して、根拠が乏しいように思う。

まとめ

投資法としてまとめると、以下のようになるかと思う。

あなたの良く知る業界で、新規事業やM&Aに積極的に取り組んでいてPRに熱心な小型株にレバレッジを掛けて集中投資せよ。さすれば短期の内にキャピタルゲインが得られるであろう。
図で表すと以下のようになる。

三崎モデル

このうち納得のいく論理がありそうなところはレバレッジを掛けて集中投資をすれば利益も損失も大きくなるという所だけだろうか。銘柄選定は会計情報を見る限り魅力的とは思えず、定性情報に基づいた感覚的なもののように思う。

あまり推奨されることのない方法の詰め合わせというのが正直な感想。
ハイリスクハイリターンを目指す手法だが、現実にはハイリスクに見合ったリターンが得られるようには思えない。


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