伊藤ちゃん
私の父は今年で60になる推定ファン歴50年の阪神ファンである。今年38年振りの日本一なので22歳、今の私と変わらない位の年齢から還暦まで経験したことのない日本一を味わえたということになる。
チャンスの場面で三振すれば「バッカじゃね」と言ってチャンネルを変え、少し経つとまたテレビをつけだし、お茶の間監督の性質を持つ典型的な阪神ファンである。
言うまでもなく、その息子の私は気づいたら阪神ファンになっており、「巨人は悪!」「ジャンパイア!」など勝手にイメージと言葉が染み付いていた。
今では母親に頓宮選手をピング〜、阪神の村上選手をヤクルトの村上選手の弟等と呼び母親を困惑させている。
なのでたまに本当は何!?と私が聞かれる。笑
優勝決定🏆の時と日本一の時の試合を録画し、それを何回も見返し、泣いている。
そんな報告も受ける今日この頃である。
そんな父親であるが、実は好きな選手や応援している選手が誰かというのを私は知らない。
唯一(2人いるので唯一とは言わないかもしれない)応援しているのは藤川選手と伊藤将司選手である。
10年以上応援しているのにその2人くらいしか名前を聞いたことがないのは意外である。
伊藤将司選手のことは伊藤ちゃんと呼び何故か好きなのである。
そんな父親にこの前大阪に出かけたのでお土産を買おうと考えていた。
何がいいか探していたが、いいものがすぐに見つかった。日本一記念の伊藤ちゃんのアクリルスタンドである。
2,000円と少々値は貼ったが、記念にと思い購入した。
家に帰り見せる(お土産ということは伝えず)と「おー!かっこいい!!」とテンションが上がっていた。
「いいよあげるよ」と言うと
「え!!くれるの!?」と60のおじさんのはずなのにまるで小学生のような反応と表情をしていた。
私が25年間生きてきて初めて見た表情であった。
思い返してみれば私は父親が苦手であった。
特に高校生の頃、野球を見たいなとテレビをつければ「勉強は?センター試験大丈夫?」
夜少し遅くまで起きてると「勉強しないの?」
と苦言を呈され、土日、父親が家にいる時はあまり顔を合わせたり、話したくなかったのを覚えている。
高校卒業後に私は大学へ進学し、一人暮らしが始まった。ますます父親とは疎遠になり、あまり連絡を摂ることも無くなった。
大学卒業後、地元に戻った。父親と特に変な距離感はなかったが、別に仲がいいわけではなかった。
特に趣味もないので土日はテレビで野球中継をダラダラとみるのが日課だった。
テレビを見ていると当然父親も見るので2人で「今のはないわ!!!」「さすがやね、!」
等自然に話に花が咲いていった。
そして今現在、私は少し遠いとこに住んでいるが、実家に帰り会えば阪神の話を延々とし、いつしか前感じていたわだかまりの様なものも無くなっていた。だからこそ今回の旅行で、父親が好きそう、喜びそうと思ったものを買っていったのだろう。
阪神タイガースを通じて、父親と息子のわだかまりがとけ、更に仲が深まった気がする。
それだけでなく、父親の少年のような顔を見させてくれたことにも感謝している。
次はどんな表情を見ることが出来るか、相手は60のおじさんだが、25の息子にとっては楽しみが増えた。
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