若者が労働時間を減らしたいと考える理由は「給料が低いから」である

2ヶ月前の記事がノートのお勧めに出て来た

相変わらず世のジャーナリストはどこか不誠実な印象を私に与える

若者が労働時間を減らしたい理由は、経済学の教科書にも載っているとてもシンプルな理論で大方説明出来てしまう。それはトレードオフ理論だ

トレードオフ理論の説明はとても簡単だ。
国民は時給が上がると長く働き、時給が下がるとあまり働かなくなる。この現象は経済学の世界ではとても有名である

では何故人々は時給が下がると労働時間を減らしてしまうのだろう?
解説しておこう

時給が1000円の場合、働いていない時間の価値は実質『-1000円』になる。
働く時間を1時間増やすごとに、私たちは1000円を受け取れるので、働く時間を1時間減らすことは1000円を失うに等しい。
つまり余暇の価値は1時間あたり1000円となる

では時給が1万円だったらどうだろう?
働かない時間を1時間増やすごとに1万円を失う事になる。余暇の価値は1時間あたり1万円だ。きっと貴方もいっぱい働こうと考えるに違いない

これは給料が安く成れば成るほど、働いていない時間の価値が働いている時間に対して相対的に上昇してしまうためだ。労働は疲労や怪我のリスクやトラブルの可能性やストレスを常に伴うため、余暇よりも本質的な価値が常に低くなる。
結果として給料が下がるほど人は余暇の時間に価値を見出し、給料が上がるほど労働時間に価値を見出していく。
様々な統計や行動経済学の実験が示している理屈通りに、若者たちは余暇に価値を見出しているのだろう

かつてアメリカの車メーカーであるフォード社は、平均収入の3倍を労働者に支払っていたという。その結果恐ろしいほど生産性が向上したと言われている。
とはいえ現代の豊かな社会では産業を拡大する余地も必要性もあまり無い。フォードは周囲にライバルの車メーカーがあまりおらず、初期の車需要は甚大だったためその様な真似ができたのだ。ナッシュ均衡にまみれた現代ではとても無理である

今後人手不足の時代に認知適合した未来の若者たちがバリバリ働きだすだろう。長くなるので詳細は省くが、今の20代や30代はあまり働かない事が社会貢献になる事も知っておいて損は無い。
労働供給をもっと渋っても何も問題ない。
消費者の豊かさと労働者の豊かさはトレードオフに直面するため、労働供給を減らして社会を困惑させる事にも価値があるのだ。このまま下らない産業やブラックな中小企業はぶっ潰してしまおう

そして焼け野原のようになった2040年以降の日本では、今の10代以下の若者達がバリバリ働き出して、日本社会の再編が少しずつスタートしていくだろう。私たちが働かない事で未来の若者を支援出来るのだ

日本政府の国家運営がなかなか良い腕とセンスをしているため(少なくとも私はそう思う)金利が上昇しない。恐らく出来ればしたくないだろう。
彼らは失業率と金利と労働生産性と、賃金と投資の関連性をよく理解しているようだ。この点に関して私は政府をけっこう信頼している。
日本政府は市民へ労働供給を渋るように言外で要請しているのだ。若者たちはその要請に応えているにすぎない

2024年05月08日