【メロディの発明史Part4】 パンクロックのベースライン

パンクロックのメロディ構成が完成に近づいて来たのは1968年頃の事だった。順を追って聴いて行こう

パンクロックで最も重要な骨組みとなるベースラインが登場したのは、1958年のエディ・コクラン「サマータイム・ブルース」だった

このベースを弾いているのはコニー・ガイボ・スミスという方のようだ

続けて、エディ・コクランに影響を受けたザ・フーによるカバーを聴いてみよう

非常にパンクらしいメロディ展開をしている。
しかし同時に「これハードロックじゃないか?」とも思う人も居るかも知れない。
ハードロックとパンクロックはどちらもフーが発明したとさえ言われている程であり、初期のハードロックはフーの影響でパンク進行を使う事が有った。
例を幾つか挙げよう

ハードロック代表レッド・ツェッペリンによるエディ・コクラン「カモン・エブリバディ」のカバーである。非常にパンクでハードな曲展開が聴ける

これらのハードロックバンドによる楽曲はリズム構築(ベース・ドラム・リズムギター)がパンクよりな為に、パンクっぽく聴こえるだろう

また、T・レックスが作った「20thセンチュリー・ボーイ」がハードロックと捉えられている事からも分かるように、70年代前半におけるグラム/パンク/ハードの分類法はかなり曖昧な部分が多かった。
殆どのグループがビートルズ、ストーンズ、フー、キンクスや50年代後半のロックから影響を受けている為に、ジャンルの垣根は判然としない所も多かったのだ。
これはパンクの始祖であるニューヨーク・ドールズも同様である。彼らは70年代だと当時はグラムロックだと捉えられていた

ではパンク進行がハードロックやグラムロックと完全に袂を分かつきっかけは何だったのか。
それはサーフロック、特にビーチボーイズのベーシストであるブライアン・ウィルソンの影響が大きい

サーフロックの影響が加わったパンク進行はラモーンズでかなり顕著だが、これはメンバーの4人がビーチボーイズの大ファンだったことに由来している。
他にダムドとピストルズがサーフロックを研究してパンク進行の開拓に大きく寄与したグループとして挙げられるだろう。
彼らの登場でパンクロックはハードロックと似ても似つかない物に成って行った

パンク進行が放つ最大の特徴である「ベベベベ・ベベベベ」と鳴り続けるベースラインはエディ・コクランまで遡る事が可能である

このベベベベ鳴り続けるベースラインを使わないとパンクには聴こえなくなる

(ハンブル・パイによるカバー。純然なハードロックである)


初期のハードロックにはパンク進行を使うグループが結構居たが、ハードロックがフーやエディ・コクランなどの影響を離れていく事で次第にこの技法は廃れていった。
70年代後半には既に使用者が激減している

もしパンクバンドを組みたいと思った時はベーシストを目指すのも一興だ。優秀なパンクバンドは大抵ベーシストが有能なバンドでもある。きっと挑戦の価値が有るだろう

2024年06月23日