私の人生には事件が起きない

人生には事件が付き物だ。果てし無くも飽く無き日常が、変わり映え無くも甘美な日々こそが何よりも素晴らしいのだと、事件の訪れは俄かに知らしめる

しかし私の周囲に未だ事件は起きない。私に訪れた物は事件と云うよりは歴史と呼ぶべき物たちで、貿易センタービルに飛行機が突っ込んだり、東北地方を巨大な津波が襲ったり、それを画面越しに眺めていた

昔誰かが「1人の死は悲劇だが、数百万人の死は統計に過ぎない」などと言ったらしい。
しかし1人の死は大抵歴史に残らない。ニュースになってもせいぜい10日で忘れ去られて行くだろう。何故なら人は毎日死んでいるからだ。翌日には事件を覚えていない人も居る程に早い

しかし事件の当事者やその周囲にとっては決して終わりなどは中々訪れないだろう。身近なら身近な程に永久の出来事として記憶に残り続ける

私の母は45年保育士をしている。彼女の教え子には事件が訪れた者もいる。秋葉原の歩行者天国で襲われた者、警察署から脱走した外国人に襲われた者などが居た。
彼女は多くを語らない。内心は察しようもない(話されても困ると言えるが…)

私は「ルックバック」を観てそんな事を思い出した

2024年07月01日