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司法試験 令和6年 民事訴訟法 再現答案

はじめに

令和6年司法試験民事訴訟法の再現答案です。比較的、再現ができた方だと思っています。

民事訴訟法

設問1

第1 課題1について

1 

(1) 原告適格は、誰の名において訴訟を追行させ、誰に判決をするのが紛争の解決に有効かつ適切か、という観点で決せられることから原告適格は原則、訴訟物の管理権者に認められる。任意的訴訟担当は、例外的に、訴訟物の管理権者の意思に基づき訴訟を追行することが認められる者をいい、民事訴訟法115条1項2号(以下、「民事訴訟法」は省略)における「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」にあたる。

(2) 任意的訴訟担当は当該管理権者が訴訟に追行するよりも別の者に訴訟を追行させる方がより適切な紛争解決を図ることが出来る場合に有意義であり、かつ、必要性も認められる。もっとも、必要性が認められれば、いかなる場合も明文なき任意的訴訟担当が認められると考えることは、弁護士代理の原則や訴訟信託禁止の趣旨に反するため妥当でない。ただし、判例は、任意的訴訟担当は、選定当事者(民訴法30条)等の明文で規定されているものに限られると解するのは相当とは言えないとしている。

(3) これらを踏まえると、明文なき任意的訴訟担当は、弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止等の制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、任意的訴訟担当を認める必要的合理性がある場合に、訴訟追行権の授与があることを前提に認められる。

第2 課題2について

1

(1) 最高裁昭和45年11月11日判決(以下、「45年判決」とする)は、共同事業体の代表者である組合員の任意的訴訟担当を認めている。これは、仮に45年判決において、任意的訴訟担当を認めなければ、共同事業体を形成する組合員全員が当事者となる固有必要的共同訴訟となるので、1人でもかければ適法な提起をすることができず、不都合が生じることとなり、共同事業体の代表者である者に訴訟追行を認めることで上記問題を防止できるからである。また、共同事業体自体が契約の当事者となっているため、この代表者が訴訟を追行する必要的合理性も認められる。

(2) 本問においては、Xらは3人のみであり、45年判決で想定されるような問題は生じづらい。たしかに、本件契約の更新、賃料の徴収、訴訟上、訴訟外の業務についてはX1が自己の名前で行うことが取り決められていることから、X1に任意的訴訟担当を認める合理性は一応認められる。しかし、45年判決と異なり、本件契約の当事者はXらであり、かつ、X1が単独で訴訟を提起する理由は時間的・経済的負担が多い、というものにとどまり必要性が乏しい。

(3) これらを踏まえると、X1に明文なき任意的訴訟担当は認められない。


設問2

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(1) 私人間の法律関係は私的自治の原則が妥当することから、民事訴訟においては、裁判の基礎となる資料の収集、提出を当事者の権能かつ責任とする弁論主義が採用されている。そのため、当事者の争いのない事実、つまり裁判上の自白が成立した事実については、判決の基礎としなければならない。具体的な効果とし、裁判所は自白された事実について、異なる事実認定をすること及び裁判上の自白がされた事実について以後の審理を行うことが許されなくなり、また、当事者としては証明が不要となる。

(2) 裁判上の自白とは、①口頭弁論または弁論準備手続きにおいて、②相手方の主張と一致する③自己に不利益な④事実の陳述のことをいう。そこで、本件陳述について裁判上の自白が成立するかが問題となる。

(3)

(ア) 本件陳述は、弁論準備手続において行われている。

(イ) 「不利益」とは、相手方が追っている立証責任を免れさせるという不利益を指す。立証責任とは、ある事実が真偽不明の場合に、一方当事者が被る不利益ないし責任のことを言い、証明責任は、原則、当該実体法規が規定する法的効果が有利に働く当事者が負うとされている。本件陳述の内容は、用法遵守義務違反にあたり、本件契約の解除というYに有利な効果を生じさせるものと言える。したがって、本件陳述は自己に不利益な事実の陳述と言える。そして、これはXらの主張と一致する。

(ウ) したがって、本件陳述は形式的には裁判上の自白に該当する。しかし、本件陳述の内容は用法遵守義務に係るものであるが、本件陳述は賃料不払いの事実の有無を争点として争われている場面になされたものである。また、弁論準備手続期日は、自由な発言を許すことによって争点や証拠を整理し、口頭弁論の迅速かつ効率よく進めることを趣旨としている。このような弁論準備手続期日の性質に照らすと、争点に関わりのない陳述をもって裁判上の自白に該当すると考えれば、自由な発言を萎縮させ、弁論準備期日の趣旨を害することとなって妥当でない。これらを踏まえると、本件陳述は実質的に見て、裁判上の自白には当たらない。

2 したがって、本件陳述に裁判上の自白は成立しない。

設問3

1 確定判決は既判力を生じさせる。既判力は、主文に包含される訴訟物たる権利義務関係の存否のみに生じる。また、その基準時は事実真の口頭弁論終結時である。既判力が及ぶ場合、その作用は、①後訴の裁判所が、前訴の判断を前提として判断しなければならないことと、②前訴の既判力と矛盾抵触する主張を遮断する(遮断効)ことがある。

2 既判力の趣旨は、紛争の蒸し返しを防ぎ、法的安定性を図ることであり、遮断効の根拠は、十分な手続保障のもと、訴訟を追行した結果に対する自己責任にある。そこで、後訴において、本件セミナーを開催した事実を主張して解除権行使の主張することが遮断されないか。

3

(1) 本件セミナーを開催したことは、基準時よりも前の事実であるから、当該事実を主張して解除権行使の主張をすることは紛争の蒸し返しに当たると言える。しかし、本件セミナーを開催した事実を主張しなかったことについて、Xらが自己責任を負うと言えるか。

(2) 本件セミナーを開催した、という事実は訴訟物たる権利義務の発生原因に内在する瑕疵に基づくものではない。また、たしかに、ある事実の存在を認識しているがこれが解除原因に当たることを認識したのが基準時後である場合には、事実を認識できていた以上、自己責任に当たると思える。しかし、当該事実すら認識できていない状況においてまで自己責任を負う、と考えるのは妥当ではない。

(3) 本問において、本件セミナーを開催していたという用法遵守義務に反していたという事実を認識したのは基準事後である。賃貸借契約を締結し、目的物を引き渡した場合、当該目的物がどのように利用されるかは監視することができず、把握することができない。そうであるにもかかわらず、基準時前に本件セミナーを開催していた事実の把握を求めることは現実的でなく、かつ、そのような事実が把握できなかったことを調査不足として自己責任を負うと考えることは妥当でない。以上を踏まえると、本件セミナーを開催していたという事実を基準時前に主張しなかったことについてXらは自己責任を負わない。

4 したがって、本件セミナーを開催した事実を主張して解除権行使の主張することは遮断されない


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