バスに乗れない

バスに乗れなくなった。

出勤するためにはバスに乗らなければならない。みんな鬱々としていて、負の感じが漂っていて、ぎゅうぎゅうと肩を寄せ合って、前々から嫌だったのだがとうとうだ。

なんかおかしいなと思う。
バスが来て降りる人なんていなくて、並んだ列がバスの中に入っていく。「僕は先どうぞ」なんて言って列の1番後ろにつく。いざ自分の番がくると運転手に「やっぱりいいです」と手を振っている。反射でだ。体が勝手に。
恥ずかしくなる。

翌日、起きれない。
快速で準備を済ませてバス停までダッシュする。角を曲がるとバスが乗客になろうとする列をちょうど呑み込み終わっている。
走りながら手を挙げてバスを止める。優しい運転手は待ってくれた。でも乗れなかったのだ。
「やっぱりいいです」乗ろうとしたバスを間違えたように取り繕っている。意味がわからない。
恥ずかしさは感じなかった。

何度も続くそれに運転手を巻き込むわけにもいかないと思いもうバスで出勤するのをやめた。


クソ暑いなか歩いて出勤するしかないのだが、別に体調もいいし、メンタルも元気だ。
職場に不満があるわけでもない。
どういうことだろう。

でもなんとなくわかっていたとも思う。
バスの中の雰囲気と会話が嫌だったと思う。
夢に出てきた描写はバスの中で声が聞こえる。些細な内容だった。
潮風がどうのこうの。僕はいくら沖縄でも海に接していない町なのに何を言っているんだと思う。でも口には出さない。
これだけ、これだけのことなのだろうか。わからない。こんなことのどこにバスに乗れなくなるだけの不満があるというのだろう。

頭の中がうるさい。
もうどうでもいいや。
イヤホンを耳に突っ込んでクソ暑い出勤ロードをかっぽしてやろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?