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無伴奏チェロ組曲、。、。

鳥が朝を告げていた。声の質が先ほどまで鳴いていたやつとは明らかに違う。フクロウは黙りこくって、知らない鳥が代わりに鳴き出す。何かの使命ように彼らはかわりばんこで鳴きつづけなくてならないらしい。日勤があり、準夜勤があり、夜勤があり、それがぐるぐると絶え間なく回り続けなくてはならない。

外に出ると、丘の上の赤い十字架が木の隙間からかろうじて見える。
朝といっても外はまだ暗いが眠れそうもないし、散歩することにした。何も意識せずぶらぶらと歩くだけだ。途中コンビニにより、朝食を買って帰ればいい。
どれだけすすんでも、どれだけの景色を堪能しても必ず僕の視界の右側には小さくなった赤い十字架が見えた。コンビニから出ても少し歩けば右側に赤い十字架だ。今度は大きい。
赤い十字架は丘の上で教会の頭に突き刺さっていた。

アパートに帰って窓を見た。電線の上には鳩が、その奥、少し上には赤い十字架が。この街は赤い十字架を中心に駅前のロータリーのようになっているのかと思う。
家から出る。ロータリーを回る。一周すると家に帰る。そしてロータリーの中心では夜になればライトが付き、もの寂しい街を十字架が赤く照らしている。

街は覆い被さり、包み込む。

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