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冷えケツ

ケツを出しながらネタを書くことがある。

そういう趣味でも、ケツを冷やした方が頭が回るからくりの人間でもない。はたまた、ケツのネタを書いているわけでもない。ちゃんと「寒いな」と思いながら書いている。

私は一つのことを長時間集中してやることが、結露ができた窓に張り付くレースカーテンくらい苦手だ。あのレースカーテンは触ったときに水すぎてびびる。

何をしていても、思考がサッサのサと飛んでしまい、結局全て中途半端に手をつけてしまう。そして、気がつけばケツを出しながらネタ帳を広げている。信じられないくらい情けない。

例えば、YouTubeのコメントを返そうと思い、パソコンを開けるとラインが来ている。同期から「これ見てくれへん?感想ちょうだい。」とネタの動画が届いている。それを見ながらカッカッカと笑い、見終わった後、そうだ、自分たちのあのネタ動画、ファンクラブにアップしないとと思い、軽めの編集に取り掛かる。動画の書き出しをしている最中に机の右に置かれた積ん読を眺める。岸本佐知子先生のねにもつタイプと考えるナメクジに目をやる。「考えるナメクジ」はナメクジには脳味噌があるという最高の謳い文句にまんまとのって購入した。悩んでナメクジを手に取る。人をダメにするソファにどかっと落ちて読書を始めると、いやはや読書には香り高き珈琲でしょと、ちょび髭をはやしながらお湯を沸かしにキッチンにいく。ちょび髭が生えそろった私はドリップコーヒーを淹れながら、ピトピトとゴールデンドロップ(最高の紅茶を淹れるための最後の一滴、多分紅茶にだけ使う)をくまなくコップに落としていると、昨日味噌汁を吹きこぼしたコンロの汚れが気になる。ちょび髭を刈り取り、お気に入りのウタマロクリーナーでキュッキュと掃除して、頑固な油汚れにざまあみやがれとつけ置きをする。はっと時計を見ると23時。ああ、風呂入らなと風呂を沸かすと間も無くして、「お湯張りが終わりました」が耳に届く。「り」の滑舌悪いな、と思いながらもズボンとパンツを脱いで洗濯機に放り込む。あ、そやそや、風呂の前に動画の感想を送らねばと思いながらラインを開けると、「この日バイト入れていい?」とにぼしから連絡。ええよと返した後に、「あ、ほんなら明日しかネタ合わせできんやん、今から作るか。」と新ネタを考えだす。ネタ帳に「どうもにぼしいわしです。宜しくお願いします。」とだけ書いてうんうん唸る。唸っても出てこないので、休憩がてら、ぼちぼち動画の書き出しできたかな?とパソコンに戻る。できた動画をデスクトップに一旦保存すると、ツイッターに通知がきている。皆様リツイートといいねご苦労さんです、いつか一杯やりましょうねと労う。そのままツイッターを眺め、仲間の芸人の140文字以内の頑張り・センス・焦りが入った告知ツイートを見ながら、ケツが異様に寒いことに気が付く。ああ、またやってしまった。完全に生気を失った冷え冷えのケツをさする。ケツ側も神経をやられてさすられてることに気がつかない。サーモグラフィー大喜利をするなら間違いなく今だ。冷えケツが確実に笑いを取る。

お風呂と最高の珈琲は冷めているし、油汚れと分離した五徳にもう一度油汚れがつきそうになっている。ファンの人に動画を提供できていないし、ナメクジの脳味噌も理解できなかった。極めつけは動画の感想を求めていた同期に、ネタがおもんなすぎて無視したと思われているかもしれない。自分のネタ帳を見ると礼儀正しく挨拶しているだけで一度もボケていない。

ひとまずケツを温めなければと、お風呂の追い焚きボタンを押す。ガス代もったいないよ〜っというアナウンスが聞こえる。給湯器にメンチを切り、香りが死んだ珈琲を電子レンジに入れる。電気代もったいないよ〜のリズムでピピピと出来上がりを知らせてくる。取り出した珈琲はベロに火が通るくらい熱い。温めすぎた。一旦冷ましている間に続きのネタを書こう。そういえば、ねにもつタイプ途中までしか読んでない、読ーもおっと。



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