メトロイドドレッドRTA界隈の連射が云々という話

 先日メトロイドドレッドRTA界隈で起きたことについてツイートしたら思ったより広まってしまったのと、ちょっと本質とずれたことを書いてしまった気がしたので改めて書いてみる。別にこれを読んでどうしろとかそういうのはなく、単に事実をまとめようと思った次第。多少は主観が入ってしまうができるだけ客観的に書きたい。

元ツイートはこちら。

自己紹介

 メトロイドドレッド走者です。そこそこ速いです。以上。

背景

 discordサーバーがスピードランナーたちの議論・交流の場。少なくとも2000人は所属していると思われる。これとは別に日本語サーバーもある。大事なことは基本的にメインサーバーで議論や周知が行われる。

何があったのか

 1月7日午前8時に突然「連射コントローラーの使用を認める」という発表があった。それまでは連射コンの使用は禁止だったが、許可した上で、連射速度の上限なし、さらに連射コンの有無でカテゴリ分けをしないというのだ。カテゴリは分かれないが、申請時に連射コンの有無を設定でき、後からフィルタリングすることで連射あり・なしそれぞれのリーダーボードを見ることはできる。起きたことはこれだけなのだが、その決定自体が反対の人もいるし、決定に至る経緯について納得いかない人もいる。

連射コンの是非について

 メトロイドドレッドというゲームは連打が必要な場面がいくつかある。基本的に連打が速いほどタイムが縮むので、ある程度詰めると「いかに連打を速くするか、または苦手な連打をどう補うか」と言ったことも考える必要が出てくる。連打をしながら他の操作が必要になる場面もあり、そのあたりをどうするかといったスキルも問われる。
 連射コンがあるとこれらが解決されてしまうわけだが、当然賛否両論ある。ちなみに発売1か月もしないうちのメインサーバーでのアンケートでは半数以上が反対だと答えている。

Strongly Disagree + Disagree = 56.2% (画像クリックで他のアンケート結果も閲覧可能)

決定までの経緯

 おそらく11月頭ごろ、メインサーバーに連射コンに関する議論用スレッドが開設された。当初は「一部の連射コン使いたいと騒いでる人たちが何か言ってる」という認識で(個人の感想)、ある時見たら連射速度の上限を何Hzにするかといった議論がされていた。その後しばらく見るのを控えていたが、スレッドは日本時間1月1日にアーカイブ化(誰もコメントできなくなる)され、7日朝に例の発表があった。おそらく議論をもとにモデレータたちで話し合ったのではないだろうかと思われる。議論用スレッドに参加した人数(発言したことのある人数?)は50人近く。

決定後の反応

 日本人コミュニティの間では否定的な意見が多かった。主に「なぜ別カテゴリにしないのか」「なぜ唐突に決まったのか」という2点。前者は、連射コンの有無でタイムに差がつくのは明らかなので同じリーダーボードで競うのは不平等であることから。今まで連打法についてあれこれ考えてきたのが馬鹿みたいになるという意見もある。
 後者については、以前NMG(No Major Glitch、深刻なバグなし)カテゴリを設置する際に「NMGを設置するべきか」「何がMajor Glitchなのか」を決めるためのアンケートがあった。これは全体メンション付きで通知され、メインサーバーにいる人全員の意見を反映しうるものだった。コミュニティの総意を問う手段としては適している。しかし今回はそれがなく、唐突に「決まった」とだけ周知された。ルールが変わるという大事なことなのにもかかわらず、コミュニティの総意を問うことなく一部の意見で決まったというのが納得いかない点だろう。決定後にメインサーバーにそれはおかしいと意見を言う人もいたが、「それは十分に議論された」として聞く耳を持たれなかった。

連射コンを認め、別カテゴリにしない理由

 決定後の抗議への反論や、議論スレの内容の一部を拾ってみたが、連射コン賛成派の意見は次のようなものだった。

  • 連射コンを使わない人は連射コンを使いたい人、使わざるを得ない人を阻害するべきではない。

  • 連射コンはアクセシビリティ(取っつきやすさ、とでも訳すべきか)のためのオプションである。使いたい人は使えばいいし、使いたくない人は使わなくていい。フィルタリングすればいいのに、何が問題なのか。

  • 連打は走者を疲れさせるものであり、連射コンを使うことでより長く走ることができる。腱鞘炎を防ぐこともできる。

  • 連打も技術だが、連射コンを上手く使えるかどうかも技術である。

  • 身体障害者など連打が難しい人もリーダーボードに参加し、コミュニティの一員となることを可能にするためだ。

  • 別カテゴリにしてしまうと、連射コンを使わざるを得ない人のことを誰も真剣に見てくれないという現状を事実上継続することになってしまう。

  • 反対意見ばかり言う人は、上のような人たちのことを考えていない。

  • 別カテゴリにするなら、パッケージ版とDL版も別カテゴリにするべきだろう(これらはロード時間の差で数分の差が生じるが、現状別カテゴリではなくフィルタ分類扱いとなっている)。

もちろん一部なので他にもあるかもしれない。

個人的見解

 ここからは客観性0で100%個人の感想だが、次のような考えだ。走者人口を増やすという目的で連射コンを認め、且つそれを標準ルールにするという考えは分かる。しかし既に連射コン禁止というルールがあり、そのルールのもとで試行錯誤してきた多くの走者たちがいる以上、せめて決定する前にコミュニティ全体にアンケートを取るべきだったと思う。競技性という面でも突然の連射コン解禁はすぐには納得し難い。
 また、理由にやや無理を感じる。身体的な理由で連打ができない人のことを考えるとしても、別に連打ができなくてもこのゲームは走れる。仮に連射コンを使うとしても、同じカテゴリーにしなければ真剣に見られないかと言うとそうではないと思う。「連射コンOKにすることで辞める人よりも、新参入する人のほうが多い」と言う人もいたが、日本人コミュニティでやる気をなくした人が何人もいる。走っていた人がやめていく姿を見るのはつらいが、新しく入ってきた人はまだいない。
 連射コンOKくらいでやる気がなくなるのか、と思う人もいるかもしれない。連射コン自体が問題なのではなくモデレーター達への不信感のほうが大きいと私は感じている。RTAとは自分との闘いとも言うが、コミュニティに属して互いに競い合う、高め合うという側面もある。そのコミュニティをまとめる人たちが信頼できなくなるとやる気もなくなる、というのはそう不思議な話ではない。今回コミュニティ全体の総意を問わずに一部の意見が全体のルールになった(と少なくともそう見える)状況、決定後の意見に対して聞く耳を持たない姿勢から、私自身もモデレーターへの信用を失っている。ゲームは何も悪くないからRTAは続けるが。

ツイートした内容について

 まず一つ、違った内容があったので訂正。

> 同リーダーボード上に一人一つまでしか記録は乗らないので、同じ人が連射あり、なしそれぞれの記録を載せることができない

それぞれ申請した後、フィルタの項目からObsoleted runsをShownに変更することで過去全ての記録が表示される。やや見にくくなってしまうが。

 こちらは追加情報。

様々なカテゴリでWR持ってる人が突然消えました

彼が配信中に連射に関する通知があり、それを読んだあと突然配信終了、speedrun.com上の彼のメトロイドドレッドの記録が全て消えるということが起きた。「もうドレッドを走らないという意思表示なのではないか」と思われたが、本人に直接確認を取ることができた。連射OKになったことで動画タイトル変更やSRCの記録整理を行ったとのことで、まだドレッドを走り、動画をアップしていくとのことだった。ただ少なくとも1週間は配信をしないそうで、そこは残念。

 最後に、書き方が悪かったのがこれ。

でもね、身体的理由を考慮するなら言語的理由で議論に参加しにくい人のことも考えてほしかった

これは半分本音で半分皮肉。今回の決定を防ぐには議論スレで意見する必要があったのではないかということに対してだが、そもそもメインサーバーは人が多く、流れるのも速いので全てを追うのはほぼ無理。多くのチャンネルの中の一つである連射議論スレを見るのは連射コンに興味がある人であり、全体投票なしに連射ありにされると思ってない人がわざわざ見に行く場所でもない。見に行っても流れるのが非常に速く、未読分を翻訳するだけでもそれなりに時間がかかる。そんな中で出した結論が「身体的理由で~~」なのだから、上記のような不満となってしまった。また、身体的理由が連射コンOKの理由になるなら言語的理由で議論に入りにくかった人のことも考えないとフェアじゃないけど大丈夫?という皮肉も込めているが、ツイートするべき内容ではなかったと反省している。

最後に

 とあるRTAコミュニティで連射コンが解禁されたことでちょっとした騒ぎになった、というだけの話。今後この界隈がどうなっていくのか見守っていきたい。

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