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郡上に移住(4)

ここ数年、「移住」というキーワードをあちこちで目にするようになりました。しかし移住について、実際のところどうなのか、具体的なことを知る情報があまりないと思いませんか。本だと痒いところに手が届かないというか、肝心のところがわからなかったり(自分で書いてみると、これは公開できないな、って部分は確かにあります)、ブログやSNSも意外と参考になるものが少なかったりします。
自分もそうした情報不足を体験したので、少しでも誰かの参考になればと思い、書いてみることにしました。また、移住した「郡上」という場所の素晴らしさも是非紹介したいという思いもあります。

「移住」に興味のある方、「郡上」に興味のある方はもちろん、「なんで移住するの」「田舎なんて帰りたくない、行きたくない」という方も含め、読んでいただける内容にしていきたいと思っています。

前回地域を郡上に絞ったところまでお話しをしました。今回は家探しについてお話ししていきます。都市部だと不動産サイトに情報は集約されていますが、田舎ではそうした情報はほとんどありません。この点は移住が進まない障壁になっていると思います。

不動産情報はどこから?

郡上の不動産屋は小さいところがいくつかあり、古民家を扱う主な不動産屋は2件あります。1件は物件数も多く建設も含め幅広く取り扱う不動産屋です。もう1件は田舎暮らし専門の不動産屋です。数も少ないので、情報を探すのは容易ですが、条件に見合った物件になかなかたどり着けません。

また郡上八幡は「チームまちや(http://machiya.gujohachiman.com/)」という、郡上八幡の町家を改修し紹介する取り組みがあります。八幡はたいへん良いところで、町家に憧れたりもしますが、田畑や車の便を考えると条件として難しいところがあり諦めました。町家の好きな方、郡上おどりの好きな方へは、お勧めします。

郡上市として、空家対策の一環として空家のマッチングもしています。(https://www.city.gujo.gifu.jp/life/housing/

またインターネットでは、以下のサイトはかろうじて、田舎でも多くの物件を検索できます。なぜか郡上市とは離れた不動産屋さんが目に着きます。おそらく持ち主の関係なのでしょう。(http://myhome.nifty.com/chuko/ikkodate/tokai/gifu/gujoshi/

こうした物件探しをして、条件に合う物件が出ないか待っているわけですが、なかなか出てきません。都市だと待っていると出てくるので、早い者勝ちになりますよね。田舎ではそもそも出てきません。

賃貸か購入か?

まず、賃貸か購入かの選択があります。田舎は都市部のように賃貸も情報が出てこないので、伝手(つて)が必要です。また賃貸は、地元の方々でも何回か引越しをするようで、引越しの手間と費用は考慮した方が良さそうです。数年後、あるいは数カ月後に引越しをする方も結構いらっしゃいます。
子どもの保育園は、数がないので、引っ越しても転園する必要はあまりなさそうです。小中学校は学区が広いので、学区が変わると転校になります。たまにそうした方もいらっしゃるので、田舎は転校がないとか、いじめが、という転校にまつわる問題は郡上ではあまり聞きません。

移住を考えると、地域の情報はやはり住んでみないと手に入らないので、最初は賃貸に入るのが順当な方法かと思います。親戚がいると話しは早いのですが、縁もゆかりもない場合は、その方が良さそうです。

私たちの場合、猫がいるので借りるわけにもいかず、また郡上でやっていく決意もあり、思い切って購入を選択しました。

古民家探しの困難

そもそも不動産屋が古民家を扱わないのは訳があるそうです。というのは価格が低いため仲介手数料が少なく、利益にならないからだそうです。安い物件だと、価格の5%が仲介手数料となるため、例えば100万の物件なら約5万ですから、お客さんを案内したり、売主と打ち合わせしたりしたら、人件費にもならない訳です。そうなると、ある程度の金額の物件しか扱わないことになります。田舎だと土地が安いため、建物が新しく価値のあるものでないとなかなか値段がつかないからだそうです。

結局、古民家を不動産屋はあまり扱いたくないのです。

それじゃ売主はどうか。売主は、おじいちゃんおばあちゃんから突然、相続することになる人です。相続する人が別の地域や都市にいると、住むわけではないし、どうしていいかわからないから、とりあえず年に数回、掃除をしに行く程度、売るわけでもなく住むわけでもない状態が続くことがあります。すると徐々に、屋根から雨漏りしたり、窓が割れたり、水道が漏れたり、シロアリにやられたりと、修理箇所が多くなり、いつの間にか建物が売れない状態になります。そうなると、建物を壊して更地にしないとならなくなりますが、それも数百万かかるので無駄なお金は使いたくない。よって、田舎の物件は放置されて、次期に朽ちていくことになります。そうしたものが今後問題を生じた場合、使う予定の無い不動産が負債になる可能性もあるということです。

こうしたこともあり、安くても使ってもらえた方が良いと考える方は、賃貸とする場合は結構あるそうです。借りたい人と借主のマッチングはどのようにおこなわれるかというと、誰かが「借りたいけど、どこかないかな」というと、情報が広がり、「ここにあるよ」と人を通じてやってくるみたいです。情報の広がりが思うより早いし、返事もちゃんと返ってくるから、すごいシステムです。ただ、やはり、あらかじめ住んで周りの人と仲良くなっておく必要がありますから、まずその地域の人とのつながりを作ることが重要です。

さて売買について話しを戻すと、売る方が積極的でない場合、なかなか物件は表に出て来ないし、積極的だとしても不動産屋が扱えない物件だとデータベースにのらない。そうなると田舎の物件を見つけることができません。空家には、今ではなかなか手に入らない木材や建具やガラスなどあるのに、ゴミとなってしまいますよね。勿体無いですね。

こうした背景を知り、都会的に探していても駄目だ、これは探し方を変えねばならないと思いました。簡単には物件へたどり着くことができないので、売りたい人とつながる方法を考えなければなりません。

それじゃどうする?

伝手を作る

地元で直接空家を見つけて持ち主に直接交渉するか、空家を仲介できそうな人を見つけるしかないと思いました。

直接持ち主にあたる場合、突然、どこの誰だかわからない人が売って欲しいと言って、売ってくれる人は、まあいないでしょう。なぜなら、持ち主の地域での立場があるので、知らない人が住み始めたとあれば地域が混乱し、なぜ売ったと責められることになることを恐れます。地域を守る手段として、代々親族が受け継いできているわけですから当然のことだと思います。余程、オープンな地域であるか、オープンな持ち主を探さないとならないので至難の業となります。

そこで、不動産屋に限らず、知人や、リフォーム業者、あるいは、その他の伝手で探せないかを考えました。

伝手を作るために、イベントなどを利用する方法もあります。チームまちやは見学会を実施しています。家にまつわるイベントではなく、例えば、町家オイデナーレ(https://oidenale.com/)、岐阜県移住体験Classca-gifu(https://classca-gifu.net/)、長良川おんぱく(https://nagaragawa.onpaku.asia/)などのワークショップ、あるいはゲストハウスや農泊(以下だけでなく、いろいろあります)など、あるいは仕事も同時に郡上カンパニー(https://gujolife.com/)など、様々な接点を作る機会があります。ただ難点は、検索してもなかなか出てこないことです。こうしたイベントで「移住したいな〜」と呟くと、誰かが反応して、話しが進み始めたりしますので、積極的に参加すると良いかと思います。

私たちは古民家改修専門の山石古民家工社(http://www.yamaishi.com)とのつながりが家探しの起点となりました。その頃、物件探しも兼ねて、郡上に子どもたちを連れて遊びに行くことが徐々に増えていました。たまたま、その機会で相談に立ち寄ってみました。どんな改修をするのかを紹介してもらい、更に物件も探しますとのことで、どんな物件が良いかの話をしました。

すると数日後、条件に合う物件がありそうだ、と連絡がありました。最初に見たのは、温泉の前の物件で、温泉が目の前にあるというだけで魅力倍増です。しかし、条件に合わなそうなため、どうしようか考えていました。
しばらくすると、もう1件の話があり、そちらを見学に行きました。ただ、条件にマッチしてはいないので、こちらもどうしようか悩みました。10年程空家になっており、不動産屋に載っていない物件なので、焦る必要は無いとのことでした。幸いまだ時間に余裕があったため、悩みながら、他の物件も探すこととしました。その間も何件か当たり、物件探しはそれから半年間程続きました。

家の見定め

家を探す中で感じたのは、まず「基礎の高さと状態」「柱と梁の太さと曲がっていないか」「家が傾いていないか」「床の状態」「屋根や庇の状態」「水回りと湿気」これらは良く観察しました。床の状態は子どもを連れているとわかりやすいです。子どもたちが歩いたり飛び跳ねたりしてくれるので、その音の具合で判断できます。
大工さんに言わせると、実はどれもなんとかなると言われますので、お金で解決可能だそうです。実は、これらの観点はそれ程重要ではありませんでした。

湿気に関しては、その土地の問題となることもあり、例えば、山が近いとどうしても湿度が高いし、地面もジメジメします。後々解決できない場合もあるので、湿気に関しては慎重になりました。

どの物件も50〜100年前後、そのままを維持しているので、それまでの時間経過を考えると大きな問題はないとも言えます。そのため、今残っている物件はそれ程、気にしなくても良いのかもしれません。心情的に改修を少しでも安くと思うので、変にこだわってしまいます。
結局水回りと床は全面的に改修したので、結果的には現状にあまり拘っても意味がなかったのかもしれません。もし費用をかけずに、そのまま使うところを多くしたいという方は拘った方が良いと思います。改修については次回に予定していますので、そちらをお読みください。

ひとつだけ絶対に確認が必要なのは、水道と下水道、つまり汚水の処理です。特に下水につなげるとか、浄化槽が必要になるとか、すると結構な金額になるため、予算を考えねばなりません。数10万、100万単位になることもあるので、これは絶対に確認が必要です。

それから多くの物件で前の方が住んでいた状態の物がたくさん残っている場合があります。残っている物は、そのまま使っても良い場合が多いし、処分をお願いすることもできます。気味悪く思われる方もいらっしゃいますが、あまり気にされず、建物だけに集中しましょう。お宝がないかと観察しますが、どのお宅もあまりお宝になりそうなものはなかったですね。

最初に見学したのが5月頃で、それから郡上へ遊びに行く度に、季節が変わるとどうなるか、周りに住んでいる人はどんな人たちか、何回か見に行きました。月に1、2回程度は通っていたと思います。また、小学校や中学校はどんなところか、買い物はどこでするか、病院や図書館など確認して周りました。夏には郡上に宿泊をして、物件探しをしたりもしました。何回か行ってみないとわからないことも多いので、決めるときは何回か訪れて考えることをお勧めします。もし見学した物件が先に別の方に決まってしまったとしても、それはご縁がなかったということ、と割り切って考えることにしていました。

やはり住むところを探すことが重要で、もちろん家の造りも重要ではあるのですが、家の造りよりも周りの環境や人々の方が重要なのかもしれません。自分が住むことになった時に、どんな暮らしをするのか思い描きながら考えることをお勧めします。

移住先の決定!

改修を考えるとそろそろタイムリミットとなってきました。移住をするなら子どもたちが小学、中学に変わるタイミングと考えていたので、転校を考えるとそろそろだったのです。そこで、見学した中で、一番良いと思った物件にすることとしました。11月に決めたので、およそ半年間考えさせてもらいました。

決め手になったのは、次のようなところです。

物件自体は、昭和後半の古民家というか中古と言ったところでしょうか。築40年程の比較的新しい物件でした。昔ながらの作りになっており、土壁、瓦屋根、柱も床もしっかりしてそうな印象でした。改修してもらう山石古民家工社の先代が建てたということもあり、信頼できる点もポイントでした。屋根は雨漏りしていないし、梁は歪んでいないので問題ないだろうということ、床下もあけてみないとわからないけど、歩いた感じ床板はしっかりしていることも良い点でした。子どもが飛び跳ねても、響きが少ない印象的でした。

周りの環境としては、すぐ近くに歩いて行ける温泉と道の駅があります。すぐ温泉入れるのはやっぱりいいですよね。道の駅には野菜の直売もあって、地元の採れたて野菜が安価に購入できます。それから川もすぐ近くにあり、いつでも川遊びができます。ちょっと上流に行くとオオサンショウウオもいるというくらい水も綺麗です。実はとてもユニークなところがあって、家の前が線路なんです。鉄ちゃんなら泣いて喜びそうなロケーションです。

その他に、山もついていました。契約時にはどこの山かわからず、購入後調べたら竹林でした。春は筍が取れます。これは思わぬプレゼントとなりました。
条件の重要項目として、畑や田んぼがあることを理想としていましたが、それはあきらめました。いくらでも余っているから、後からでもなんとかなるよ、とのアドバイスをもらい、まずは家の造りを重視しました。

家探しの反省

家探しの反省点は、できれば近所の人たちと交流する機会を作れば良かったと思ったことです。時間に余裕あれば、しばらく賃貸で住んでからということもできたでしょうが、今回は時間がなかったためできませんでした。チームまちやのような仕組みがあるといいのでしょう。結果的に、実際に住んでみて、周りの方々にとても良くしていただいていて、良いところに移住できたと思いました。地域によっては保守的なところもあると聞いていますので、やはり交流する機会を作れるといいのかもしれません。今回はお世話になった山石さんに良いところを選んでいただいたことも大きかったと思います。地域を知っているからこそ、移住者が馴染めるか、考えていただいたので、もし交流できない場合は、地域感のある方の考えを参考にするのが良いと思います。

購入手続き

さていよいよ購入手続きです。実は購入に際し、不動産屋が間に入っていません。不動産屋は仲介するだけで、実際の契約は司法書士の方がするんですね。司法書士の方に契約書を作成していただき、金額の振込の確認をして成立となります。さらに司法書士の方に登記をお願いして、登記簿ができたら完了となります。必ずしも不動産屋とやりとりする必要がないと言うことを学びました。

不動産屋が間に入らないメリットは、不動産屋の場合、仲介手数料を取られますが、司法書士の方は仲介手数料を取りませんので安くなります。デメリットは、不動産屋による物件の評価がないので、物件に何かあっても保障がないということです。とは言え、田舎の安い物件ですから、多少のリスクも含め、決める必要があるということです。

実は、不動産屋が間に入らないことで、後で困る事案も発生しました。ローンの関係で、不動産の価値がわからないから、難しいと言われることになりました。不動産屋の算出がどこまで信頼できるのかわかりませんが、銀行としてはひとつの指針となるようです。

ちなみに司法書士さんや登記などで20万前後かかりますので、予算化しておく必要があります。

まとめ

そんなこんなで、とうとう移住の第一歩となる家を手に入れました!
パチパチパチ!
とにかく伝手を作ることがまず第一だと思います。そのために賃貸に住んでも良いですし、ゲストハウスに入ってしばらく暮らすことも選択肢のひとつと思います。その地域の人々と話しをして、関係を作ることが一番と思います。その中で、世話好きの方を見つけるとベストです。

さて次は改修のお話しをしようと思います。購入だけでなく、賃貸も改修が必要になる場合があります。いろいろな考え方があると思うので、その辺りの話しを書きたいと思います。

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