見出し画像

郡上に移住(3)

ここ数年、「移住」というキーワードをあちこちで目にするようになりました。しかし移住について、実際のところどうなのか、具体的なことを知る情報があまりないと思いませんか。本だと痒いところに手が届かないというか、肝心のところがわからなかったり(自分で書いてみると、これは公開できないな、って部分は確かにあります)、ブログやSNSも意外と参考になるものが少なかったりします。
自分もそうした情報不足を体験したので、少しでも誰かの参考になればと思い、書いてみることにしました。また、移住した「郡上」という場所の素晴らしさも是非紹介したいという思いもあります。

「移住」に興味のある方、「郡上」に興味のある方はもちろん、「なんで移住するの」「田舎なんて帰りたくない、行きたくない」という方も含め、読んでいただける内容にしていきたいと思っています。

前回はどうして移住しようと思ったかを書きました。そして今回はようやく、なぜ郡上という場所を選んだのかお話ししようと思います。

どこに移住しようか?

仕事柄、様々な都市を訪れる機会を得ました。多くの場所を経験することで、経験値も高まり、直感的に、ここはいい町だな、と感じることがあります。

名古屋は良さげなところだと思い引越しました。実際に東京よりも暮らしやすく、実はとても気に入っています。ちなみに最初の紹介に忘れておりましたが、私は東京出身です。名古屋は生活するには良いところだと思いますし、もし名古屋をお考えならオススメします。実は住んでみるまで名古屋がいいと思っていなかったんです。名古屋をうまくアピールしている情報があまりないんですね。もしかしたら名古屋の人は、あまり人に来て欲しいと思っていないのかもしれません。名古屋以外に都市部でいいなと思ったのは、福岡、神戸もいいなと思いました。長野や沖縄や北海道なども、勿論とてもいいんですけどね。

さて名古屋を離れることになり、それではどこへ移住するかが問題でした。付近に縁もゆかりもありません。そこで、いくつかの条件を考えました。まず条件を考えるにあたり、西美濃に職場があり、また名古屋の子ども園(前の記事を参照)へ、ちょくちょく行くことがあるため名古屋の周辺で検討を始めました。

まずは豊田市や日進市、長久手市、瀬戸市など検討しました。

豊田市は、都市部にはトヨタがあり、工場地帯というイメージですが、実は市のほとんどがとても良い里山です。足助という紅葉で有名な場所は、昔ながらの古い町並みもあり、移住者も増えているところです。鉄砲を撃つお祭りもあり、なかなか良いところです。奥地には古民家や田畑も豊富で、移住の条件として必要なものは揃っているなと思いました。

条件を考えながら移住場所を探す中で、一番重要な条件は職場から1時間という単位でした。もちろん豊田は良いところだし、かなり魅力的なのですが、踏み切れないのは通勤の問題があったからです。これまで西美濃へは名古屋から電車で通勤をしていました。おおよそ1時間20分前後かかっていました。そうすると、それと同等か短いことが必要であろうと考えました。東京では1時間は短い方なのですが、名古屋や岐阜では1時間の通勤は長いと思われていますし、確かに片道1時間往復2時間は結構時間を消費することになります。なるべく近く、あるいは時間をかけてもそれに見合う環境であればと思いました。豊田などで移住先を探しながら、通勤条件だけではなく、いくつかの条件を考えて移住先を検討する必要があると思い、何を条件とするか考えることとしました。

移住の条件

・職場(西美濃)へ1時間以内で通えること
・名古屋へ1時間半程度で行けること(多少伸びても良い)
・川(空気と水)か海が綺麗で、すぐに遊べること
・田畑が手に入ること
・食べ物が美味しいこと
・小中学校が近くにあること
・工場や送電線などないこと
・古民家、できれば改修があまり必要でないもの
・文化があること、魅力的な人がいること
・イ◯ンがないこと
・ゴルフ場が近くにないこと
・温泉が近くにあるといいな

これらの条件は決して絶対ではありません。他の条件により変更することもありえます。探す中で、全てを満たすことはなかなか難しいと思いました。とにかく、この条件をなるべく満たす場所を探すこととしました。

それぞれの条件は、こんなことを考えて設定しました。

「川が綺麗なこと」と「田畑が手に入ること」「食べ物が美味しいこと」について前回の通り、食のための環境として重視しています。特に大事なのは、お米を育てることです。また、子どもたちが川遊びが好きで、いつでも遊べるといいなと。それ以外に期待しているのは、私が小中学生の頃、釣りキチだったので、また老後に釣りできるといいな、と思いました。

「小中学校が近くにあること」は妻からの要望でした。私はスクールバスでも良いかと思っていたのですが、何かあった時にすぐに対応できるように近くにある方が良い、ということで条件としました。後でわかったことですが、小中学校の体育館は避難所に使われることがあるため、田舎では比較的安全な場所に作られていることがわかりました。つまり小中学校が近くにある地域は安全であるということです。もちろん、役所なども安全なところにあるため、こうした視点で地図を見てみるのも面白いです。古墳も近くにあると安全の証拠だそうです。古墳時代にそれなりに良い場所が選定されていますし、古墳時代からこれまで何事もなく残っていることが証明になっているそうです。(古墳マニア談)

「工場や送電線などないこと」も食などに類似しています。送電線が実家の目の前にあって、雨の日などジリジリ音がするんです。テレビの映りが悪くて(当時アナログで)、ラジオもノイズがあり、何と無く嫌な思いをしていました。今はデジタルなのでノイズとは無縁だと思いますけど。以前の職場の校庭にも送電線があり、嫌だなという思いが再び沸き起こりました。田舎に行くと山などに意外に太い送電線があって、せっかく移住するなら送電線のないところにしたいと思っていました。

「古民家」というのは、憧れなんかも当然ありますが雰囲気とか二の次で、日本家屋の良さを大事にしたい、文化を残したいと思ったからです。自然素材で作られ、木材や土壁などの環境性能も建築的な文化の集約であり、そうした古いものを残していきたいと思っています。よく日本家屋の縁側は自然と生活の境界を曖昧にしている、という話しがあるように、生活する場が自然と接するような環境が良いなと思ったからです。また近年、古民家が空き家として朽ちていくことがよくあります。古民家に使われている材料は今ではなかなか手に入らない良い木が使われていますし、日本の伝統と文化のひとつである日本建築がなくなるのは勿体無いと思います。これから人口が減る中で、新しく建てるよりは、貴重なものを残して利用することで、単に建物を残すだけでなく、それを維持管理する技術や知識も継承して残すことができ、日本文化の継承に少しでも貢献できるといいなと思いました。

どの場所にも魅力がありますし、もし欲を言ってよければ、「文化があること」「魅力的な人がいること」。文化があるということは、文化を大事にする人々がいて、人々が協働したり、社会を醸成したりしたことの証しだと思うのです。ですから、そこには良いコミュニティがあるんではないかと思っています。人々がつながりながら生活していること自体重要ではないかと思うのです。もちろん文化はどこにでもあるのですけれども、つまり好みの違いがあるんだと思いまして、好みの合う文化があるといいなと思いました。

「イ◯ンがないこと」これは日本全国どこでも同じものが同じ価格で手に入り、とても便利ですから、もちろんたまに利用します。しかし、日本全国同じであることに個人的に魅力を感じず、地域によって多様性が必要だと思っています。イ◯ンがあるだけで地域性が失われているような気がしてげんなりします。できれば近くにあって欲しくないな〜と。

むしろ欲しいのは「温泉」。あるとよりいいなと思いますよね。温泉最高です。

まずはこれらの条件から移住先を考え始めました。

交通状況

仕事場の西美濃を中心に、電車あるいは車で1時間以内に移動可能な場所を探すこととしました。下の地図は、外側が高速で1時間、内側は一般道で1時間の範囲です。ちなみに、太平洋側は名古屋市を高速で通過してからとなるので、1時間以上かかり、桑名や四日市、東海市など無理そうでした。そうすると、東は可児、多治見、瀬戸、犬山、西は長浜、米原、東近江、南は大垣上石津、いなべ、北は春日村、谷汲、本巣、山県、関、美濃、郡上など、検討することになりました。移住促進を積極的におこなっている市町村は、長浜や山県、美濃、郡上などで、空家探しも含め色々と知ることができました。

画像1

まずGoogle Map を見て驚いたことは、これらの地域の平野から山へ変わるところ(下図の青いライン周辺)は、ほとんどの地域でゴルフ場になっているということです。いいと思った場所には、至る所にゴルフ場が散在していました。なんということでしょう!!なぜこんなにもゴルフ場が多いのでしょう?いい場所がゴルフ場に取られ、社会的にマイナスだな、と思いました。都市計画として上手な土地利用がなされていないなと思いました。

画像2

そこで、条件として「ゴルフ場が近くにないこと」を追加することにしました。勿論、ゴルフ場があるからその地域が駄目ということではなく、探せば良いところもあるはずです。今回は、時間的に限られていたので、対象から外すこととしました。つまり、ゴルフ場を越えた場所を探すこととなり、図で言うと青い円の外側で、奥地に行くことになりました。見てわかると思いますが、西は米原・長浜、北は本巣・美濃を越えるあたりに絞られます。

まず地域を決めよう

移住空家紹介や不動産会社などあたり、条件に合いそうな地域はいくつかありましたが、条件を満たしているわけでは無いので、どこまで条件を満たすか毎回検討していました。家がなかなか見つからないのも大きな課題でした。地域をどこにするのか、家はあるのか、どちらも同時に決まるといいのですが、簡単には行きませんでした。

そこで、まず地域を決め、そこで家を探す、という順序に切り替えました。というのは、同時に探していると時間もお金も費やすことになります。往復の交通費は結構かかります。タイムリミットが迫って来たため、なるべく早く決めるようにしたかったからです。

直感的に良いと思ったのは、上石津、春日村、長浜、郡上でした。その中で、選択肢として外すことになったのは、上石津と春日村と長浜です。条件を満たす数が少なかったことです。特に長浜は郡上と近いので悩みました。長浜は空家の紹介も豊富で、茅葺の古民家もありましたが、良い家はやはり早く決まってしまいました。ちょっとタイミングが遅かったのかもしれません。

そうなると、直感を信じて郡上となったわけです。もちろん私の直感だけではなく、妻の意見もありました。環境の良さと文化、そして、少ないながらも、名古屋にいた時から関係する人とのつながりが決め手となりました。移住者の多い点も良いと思ったところです。先輩移住者には魅力たっぷりの方々がおり、どの人の活動もとても興味深く、より郡上に引きつけられたポイントです。また文化は、郡上踊りであったり、お祭りであったり、工芸であったり、狩猟であったりと、しっかりと根付いたものがあることに良さを感じました。

それから規模感も良いと思ったポイントです。人口密度というか、家のまとまり具合というか、人と人との距離感というか、コミュニケーションの取りやすさというか。うまく表現できないんですが、郡上八幡の町は歩いて回れるようなサイズ感があって、そんなところが良いと思ったのでした。温泉も所々ありますし、ちょっと足を伸ばせば、有名な下呂温泉へ行けるところも魅力の一つです。

何度か足を運び、色々なところを見ました。観光地なども行きましたし、山奥にもいきました。ここでは書ききれないことがたくさんあります。例えば(1)で書いているように、長良川は下水道により綺麗な川を維持しています。そうした表面的に現れないところも知ることも重要だと思います。家探しの時に、浄化槽はという話になり、初めてわかったことです。

目に見えない部分も意外に重要なので、意識して調べると良いと思います。

大失敗

一つ大失敗したことは、郡上は八幡と白鳥は昔から町だったので、光回線が通っています。そうなるとその周辺も光回線が使えるだろうと勝手に思い込んでいました。ところがいざ住んでみると、我が地域には光回線が来ていないことが分かったのです。まさかこの時代に光回線がないのか!
最初にWiMAXが回線として使えそうだったので契約したら、使えなくはないのですが、アンテナが少なく、回線速度がほとんど出なかったのでやめました。ケーブルテレビがあるのですが、初期費用が高く、テレビがないのでケーブルテレビをひくのに躊躇しました。かろうじてADSLがまだ受け付けていたので、ADSLを契約しました。なんとか使えるレベルで、オンライン会議などはとても無理でした。

そして2020年1月、ついに光回線がやってきました。まるでコロナに合わせたかのように。これがなかったら在宅勤務もできなかったでしょう。確認不足ではありましたが、移住2年でなんとかなってホットしています。

スーパーに行こう!

そして何と言っても驚いたのは、海がない岐阜県の郡上より北は、富山との流通があり、日本海の新鮮な魚が手に入ることです。愛知県は海に面していますが、名古屋でも美味しい魚はなかなか手に入りません。更に言うと、岐阜県の平野部は、名古屋よりも美味しい魚が手に入りません。美味しいものが好きな我が家にとって、美味しい魚が手に入らないことは大問題でした。それが、郡上は日本海の魚がたくさん安く売られているではないですか。これは地元のスーパーに行って初めてわかったことです。スーパーを回ることも重要なことだなと思いました。これは郡上を選ぶ一つの決め手になりました。

まとめ

あげればキリがないのですが、環境、人、文化など考慮して地域を考えました。感覚的に、何か新しいことができそうな場所だなと感じたこともあります。先輩移住者を見て、何か可能性を感じたからなのかもしれません。

田舎はどこも同じに見えますが、比べてみると、いろいろと違いが見えて来ます。実際に足を運び、人々と対話を重ねたり、役所で話しを聞いたりすると、いろいろとわかるので、とにかく量を増やすことが大事だと思います。日本海の魚は衝撃でした。

ということで地域は郡上に決めました。前に書いたように、郡上は東京23区の1.7倍もあるので、広い場所です。その広い中で、今度は家をどうやって決めたかを書こうと思います。

#移住 #郡上 #岐阜 #ライフスタイル #田舎暮らし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?