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参議院文教科学委員会(2019年11月19日)参考人陳述・質疑まとめ(2)

[後半の質疑応答部分のまとめです。前半に比べてちょっとざっくりした感じになることをおゆるしください。] 

 佐藤啓さん(自民党)
 比較的「英語4技能」問題に焦点を当てた質疑でしたが、国家公務員試験でも民間英語試験を活用しているのにどうして大学入試では使えないのか? と主張する吉田参考人に、TOEFLを例に高額の受験料負担の問題を指摘されていたのは、評価できるポイントだったと思います。
 今後の高大接続のあり方について問われた萩原参考人が、大学・大学入試センター・文部科学省がきちんと話し合い一致できる行き方を探ってほしい、と「政治」の介入を暗にたしなめたのを受けた吉田参考人が、いつまでも決定しない大学が悪い、と責任を「丸投げ」したのはびっくりしましたね。。。
 
 伊藤孝恵さん(国民民主)
 文学部国文学科出身で、卒論が「漱石文学における「悪女」考」だったという告白(?)もあり。基本的には現行入試制度を変える必要性が本当にあるのか、という問いが中心だったように思いましたが、政策決定プロセスの不透明さに対する問題意識もうかがえました。
 紅野参考人からは、審議に参加するメンバーの選定の仕方、そもそも「結論ありき」だったのではないか、という指摘が。また、記述式問題について木村参考人が、「主体性」という言葉も10回くり返せば「主体的」ではなくなってしまう、と述べる場面も。確かに「言わされている感」が出てしまいますよね。

 高瀬弘美さん(公明党)
 質疑は「英語4技能」問題、とくに民間試験導入に向けた条件整備に関わる内容が中心。吉田参考人とのやりとりで、ICT環境の整備ができれば「4技能」の教育がうまくいくかのような立論はどうなのかな、と。
 
 梅村みずほさん(日本維新の会)
 
初質疑だそうで、緊張が伝わってきました。質問は情報開示のあり方について。吉田参考人は、「情報開示はきちんとなされてきた」、記述式問題についても、大学が採点業務を引き受けなかったからだ、とどこかのAIの方のような意見を長々と披瀝し、またまたビックリ。
 これについては、紅野参考人から鮮やかな切り返しが入りました。「情報開示よりも情報の集約、整理、分析の方に問題があったのでは?」。各大学で採点すれば、という一見もっともらしい議論には、「それこそ作問と採点の一体性原則」を突き崩すものだ、という批判で応酬も。
 梅村さんは、紅野さんの言葉を受けて、「目的と手段が入れかわってしまったのではないか」というコメントも紹介。時間をぎりぎりまで使いながら「実用的な文章」という問題の中身にまで立ち入った質疑で、紅野参考人の意見を引き出してくれた(?)ことには、ちょっと好感度上がりました(^^

 吉良佳子さん(共産党)
 いちはやく関心を持って取り組んできた方だけあって、梅村さんの質疑から、さらに切り込んでいく内容に。複数資料を「テクスト」として使う作問手法への疑問、萩生田文科大臣の発言の「エビデンス」の是非など、具体的な問題点を剔抉しようという意図が貫かれていました。
 必然的に参考人の発言もより立ち入ったものに。木村参考人は問題としての「質」の低下と、受験勉強の段階で生徒さんたちの柔軟な発想を硬直化させてしまうのではないか、という危惧を表明。紅野参考人からは、入試を変えることで教育を変えるという「高大接続改革」の本末転倒性についての指摘も。
 さらに、お二人がともに主張されていたのは、何でもかんでも対話文、複数テクストという作問のあり方についてでした。どこかの誰かが作問現場によほど強い圧力をかけているのでは? という(当然の)疑問から、新学習指導要領の問題へと話題が拡がっていく場面もありました。

 舩後靖彦さん(れいわ)
 障害のある受験生への配慮について、さまざまな当事者の声を紹介しながら、インクルーシブ教育という観点からの公平さ公正さを問いかける内容でした。確かに、障害を持つ受験生が能力を発揮できる環境をどう準備していくか。これは、現在の入試でも十分できているとは言えない。
 木村参考人からは、出発点が同じではないということは、全ての受験生が公平に扱われていないことを意味する、という発言があり、紅野参考人からは、センター試験に過大なリソースを費やす発想を改め、多様な入試形態を担保する中で多様な受験生と向き合う方策もあるのでは、という意見が出されました。
 
 以上、全体的に見て、「言論の府」に相応しい陳述と質疑がなされたと感じました。記述式導入の是非は勿論大問題ながら、その背景、決定のプロセス、さらには今後なすべき問題にまで議論が拡がったのは、問題意識を持った議員と参考人の方々、この場を実現させた関係者の働きかけが大きいと感じます。
 本日の話題には出ませんでしたが、中教審と教育再生実行会議、自民党の文教関係部会との関係性など、浮かび上がってきた論点もあります。新指導要領のイデオロギー的な問題についても、議論が深まる一つのきっかけとなるはずです。今後のアジェンダ設定は簡単ではないな、とも。

 ですが、まずは4人の参考人の方々、とくに木村さん紅野さんにはお疲れさまでした、と心から申し上げたいと思います。まずは共通テストの記述式問題の取りやめが短期的な目標でしょうが、その先を見すえた粘り強い議論の土台をどう作っていくか。後に続く者としての課題であると痛感しています。(後半了)