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参議院文教科学委員会(2019年11月19日)参考人陳述・質疑まとめ(1)

[昨日twitterに連投した内容をまとめてみました。一部誤字を訂正しましたが、内容はそのままです。私見が入りまくった「まとめ」ではありますが、よろしければご参照ください。]

※参議院ウェブサイトより引用
開会日 2019年11月19日
会議名 文教科学委員会
審議時間 約2時間30分
文教科学委員会(第三回)
   高大接続改革に関する件について参考人全国高等学校長協会会長
   萩原聡君、日本私立中学高等学校連合会会長・学校法人富士見丘
   学園理事長・富士見丘中学高等学校校長吉田晋君、福井県立大学
   学術教養センター教授木村小夜君及び日本大学文理学部教授紅野
   謙介君から意見を聴いた後、各参考人に対し質疑を行った。

 業務が一段落したので、参議院のインターネット配信で本日の文教科学委員会を視聴しています。まずは前半、参考人陳述の部分の概要を私なりにまとめてみました。精確な中身はそれぞれ見ていただくこととして、あくまで五味渕が理解できたまとめということでご参照ください。
 
 トップバッターは全高長の萩原参考人。全国の高校校長組織の代表という立場から、協会内のアンケートをもとに共通テスト記述式問題の採点体制・機密保持体制への不安と懸念の高まりを指摘、生徒たちの努力を適正に評価できるシステムの構築を訴えられました。
 印象的だったのは、高校現場が公正な入試を実施するためにどんな努力を重ねているかに言及し、そうした入試を経験してきた生徒や教員が受け入れられる体制を構築すべきであると発言なさったこと。高校入試には厳密さを求め、大学入試は業者ありきのグズグズが容認されるのなら、確かに矛盾ですよね。
 
 2人目は吉田参考人。同じく受験生の不安解消の訴えもありましたが、お話の中心は、むしろ中教審・教育再生実行会議での審議・検討プロセスの振り返りに置かれていました。でも、英語民間試験利用は当初から批判があったが、共通テスト記述式問題はそうではなかった、というご意見には??
 また、記述式問題導入を含む高大接続改革の手続き的な正当性を強調する陳述は、きょうは私立学校の生徒の代表者として、子どもたち自身がいまどんな思いでいるかを述べに来た(大意)、という冒頭でのお話とはいささか乖離していると感じざるを得なかったです。

 続いて木村参考人。ご自身の経験を踏まえつつ、記述式問題の試行調査の中身にまで踏み込みながら、それぞれ個性の異なる人間が記述した答案を短期間で大量に採点するという「無理」を通すことでどんな「道理」がないがしろにされてしまうのか、を丹念に説明していく陳述だと思いました。
 複数の複雑な条件付けは、受験生の主体的な思考をむしろ停止させ出題意図を忖度する姿勢のみをはびこらせ、さらに自己採点の困難さという別の課題が追い打ちをかける。出題と採点の一体性という当然の原則を反故にすることで、結果として採点受注者が採点基準を作ることになりかねない……

 最後の紅野参考人の陳述は、木村さんの問題提起をさらに具体化し、より広い視野に置き直すものでした。特に、受注業者の報告書に、採点業務中の問題作成者と採点実施者との連携に関する記述がない、という指摘にはビックリ。現在のセンター試験もそうですが、問題作成段階では作成者は非公開が大原則。
 ならば、採点中に浮かび上がる様々な疑問に対し、作問者と採点者はどんなやりとりができるのか?紅野さんは、記述式の問題は出題者と受験者の「対話」だと強調していましたが、共通テスト記述式問題の現状は、採点者と作問者、採点者どうしの「対話」も阻却してしまうことが指摘されたのだと思います。
 
 作問者の想定を超えた解答は実際にあります。小論文や記述式問題の場合、作問者はそうした答えをこそ待望しているところもある。思考と表現の「型」を押しつける記述式問題の強行は、この程度の「自由」や「多様性」さえ容認できない大人たちの器の小ささの方を露呈させてしまうのかも知れませんね。(前半了)