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はじめに

『うわ、終わった』

最初に抱いた印象が、これ。

衝撃的すぎてこの感覚だけは今でも鮮明に思い出す。

かれこれ6年好きだった(もはや執着)デリナッシー君と別れて、約1年がたった2021年。(デリナッシーとの話もいつか書くかなぁ…笑)

「あなた、今年から2年運気が良くて、4月が本当の出会い。仕事運も最高ね!この人に出会うための仕事のようなものよ!」

と初めて行ったプロのタロット占い師に言われて、期待一杯に入った職場で、配属初日にここには出会いがないことを悟った。(職場は超平和です)

その瞬間にアプリを登録して、その週のうちにデートを申し込んだ。

その、15時のこと。


画面で確認できる相手のステータスは同い年のいわゆるハイスペ。引っかかったのは身長くらい。

『170かぁ…小さいって思ってしまうんだろな…高身長がいいってリクエストに書いたやんけ…』

自分のプロフィールや好み、デートできる日時を選ぶだけでAIが勝手にデートの日時、待ち合わせのカフェまで決めてくれる。メッセージ交換もなし、そして、相手の顔も当日にお披露目…

今思えばこれが功を奏した訳だけど、だいたいこのシステムを言うと周りの人は眉間に皺を寄せる。

かなりの数アプリを試したし、もう何人と会ったのかなんて忘れたし、テンプレのメッセージ交換も嫌になっていた私は『顔より会って話さな何にも分からんがな!』と勢いだけで日曜日を迎えた訳です。

…要は焦っていた。

(あと、占いの結果に自ら寄っていきたくなる占い好きのあるあるだと思う。笑)


待ち合わせの当日のみ使えるメッセージ機能で、指定された場所に待ち受けていたのは、

“柄シャツ 半ズボン 青いサングラス 黒いマスク”


『うわ、終わった』


やっぱり顔を見れない人とマッチングなんて無謀だ、怖すぎる。そしてやっぱりちょっと身長小さい。いやそれよりとにかく怖い関わったことない人種だこんな格好の人どうしよう、てか青いサングラス?なんでサングラス?今4月やぞ?そんでそれにマスクしたら顔ほぼ分からないじゃん怖すぎる。この人本当にあんなに稼いでいる人なの?てか同い年なの?待ってやっぱり怖いわやばいぞこれは逃げる?やめる?まだ間に合っ

「ヒバさんですか?」

「あ、はい…」

はいおわりーーーーーーーーーーーーーー

会釈してちらっとずらしたマスクの下は髭。

ハイオワターーーーーーーーーーーーーーーーー

(この頃は髭は苦手だった)

(なんなら今も基本は苦手な)


この出会いから、約8ヶ月。

楽しくて幸せで嬉しくて、苦しいことになることなんてこの時はまったく予感していなかった。

絶望のどん底に落ちた気分にもなったけど、それも含めて、この出会いに後悔は、無い。

別れの日から2週間が経った今は、ちょっとしたことでは泣かなくなったし、こうして思い出も振り返れるようになった。

人間は、苦しい感情から逃げるために忘れることをするらしい。

確かに、悲しくも、こうして冷静になれている。

あの瞬間の苦しさも寂しさも悔しさも悲しさも、全てを失う日は来ないとしても、きっと薄れてしまうから。

感謝を込めて、残しておきたい。

ただそれだけのための記録。


(2021.12中頃)