コインランドリーばなし

乾燥機がエラー。100円玉を呑まれる。2年ぶり2度目である。
何度か入口を開閉してみたものの、エラー音が延々と鳴り響き、そして何事もなかったように料金表示に戻る。
諦めて隣の乾燥機に濡れた洗濯物を突っ込んでいると、後ろから「おねーさん、それ、壊れちゃったの?」と声をかけられた。
洗濯ものを抱えた男性である。
「そうなんです。100円、吞まれちゃいました」と返すと、「それなら、おばちゃん呼んでおいで。隣にいるから。たぶん鍵かかってないから」
そういいながら隣の家のチャイムを押して、ドアを開けてしまう。
「おばちゃーん、ちょっと来て」
それから間もなく、ぱたぱたと足音がして、確かにコインランドリーの大家さん?が出てきた。
頻繁にお掃除をしておられるので、何度か挨拶をしたことがある、かなり年配の女性である。
「はいはい」
「おばちゃん、機械こわれちゃったって」
「あらまあ。ごめんなさいね。ちょっと主人に直しもらいますから、少しお待ちいただける?」
さらにお年を召したご老人が工具を片手にコインランドリーに入ってきた。
一度ブレーカーを落とし、全ての機械を止める。
見守る客一同。
もう一度電源を入れると、洗濯機やら乾燥機やら、動き始めた。
乾燥機も治ったっぽい。
助けてくれた先客にお礼を言っていると、ご老人がしきりに謝りながら、話を始めた。
この店が来年でちょうど50年になること(おめでとうございます)
最初は24時間営業をしていたが、夜中にいたずらされることが多く、終夜営業をやめたこと。
呼びに来てくれた先客は何と県をまたいで、わざわざ遠くからこのコインランドリーに通い続けていること。
野菜を届けてくれたりすること。
他のお客も「ここは安いからね、車出してわざわざ来てるんだよ」と話に加わった。
佇まいが素晴らしさにひかれて、私もついついこの場所に通ってしまっていたが、まさかコインランドリーの常連と世間話をすることになるとは思わなかった。
十年も通ったかいがあったというものだ。ほくほく。

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