負の者たちへ
自分の生活に何の関係もない芸能人のゴシップ。2度と立ち上がれないように叩きのめす風潮にはうんざりだ。
不倫をこじらせたり、犯罪を犯した人物が身近にいたら勿論距離はとる。が、話題になってるあの人もあの人も、私の人生には何の関係もない。
なのに時々、ネットから放たれる負のエネルギーにやられてしまう。
人の挫折ってそんなに面白いだろうか。
身近にいたらどうするかな?とは思う。自己責任、身から出た錆、ざまあ、など私もその人と自分の関係性によって色々思う事はあるだろうし、冷たい視線にはなるだろうけど、そうなった背景やその人の人柄にまで興味がわくことはない。
過ち、犯罪、誹謗中傷を、やってしまう人と思いとどまる人には大きな差がある。
人や物を粗末にする人は、けして人から大切にされない。
残念なことに、今の世の中は人の悪事や秘密や失敗を暴く目ばかり増えてしまった。そんな暴露しかできない、その程度の知性しかないということだ。人の好奇心を満たすだけで、それ以上何も生まない行為だ。なぜそんなものが商売になるのだ。そんな人たちが同じ熱で、助けが必要な人を見守ってるとは思えない。一斉に目を閉じてるに違いない。嫌な世の中だな、と毎日思う。
コロナで奪われた幸福も沢山あるだろう。
私の兄弟は心を病んで療養中だ。
何度も立ち上がり、10年頑張って働き続けたが、コロナの恐怖はギリギリ生きていた兄弟を完全に壊した。
ただでさえ恐ろしい社会に、未知の感染症という新たな敵が加えられるのは、病気の兄弟にとってこの世の終わりのようだっただろう。
夜中に、マスクを何重にも着け、いくつもバッグを抱えて避難するぞと家族を叩き起こしたり、テレビに映る感染者数の推移を一日中声に出して読み上げ、部屋の温度と湿度に固執しリモコンを離さない。あらゆるウイルス知識を家族に披露して聞かせる。ワクチンはいつ接種出来るのか、お前ら高齢者は優先だからいいよな延々、そうかと思えばオカルト陰謀論を唱えだす。お前ら馬鹿にはわからないと家族を罵る。まったく眠らずドシドシと家中を歩き回り、仏壇のリンをチンチン鳴らしまくり、ほんとにもう異常を挙げればキリがない。
コロナの始まりは、我が家の緊急事態の始まりだった。
コロナ前までの兄弟は、病気なりに、それでも社会と関わることをあきらめず働いていた。それが本人と家族の希望だった。コロナの蔓延であっという間に壊れた。
兄弟は重度の鬱で入院が必要と診断されたが、コロナを理由に入院させる事が出来なかった。情勢が落ち着き、受け入れ可能になるまで待機という扱いだ。
10年も診た医師が、別の病院を紹介し、急いで入院を勧めた状態にも関わらず、だ。
両親は不眠不休で子の罵詈雑言暴力につきあい、もう限界だ1日も早く入院させてしまいたい、と泣いた。
それでも父は最近になって「あの時あいつを入院させていたら、皆んなが後悔しただろう」と言った。(いずれ閉鎖病棟に送るしかなくなるのはわかってはいるけど)コロナのおかげで家族を捨てずに済んだ、と言った。
大暴れが始まった頃、私が毎日のように実家へ帰るようになると、兄弟は少し静かになった。
両親は私に感謝したが、私は闇からじっと兄弟に狙われてるような、ものすごく嫌な気配を感じていた。兄弟として何かできる事はないかなと思ったが、一瞬で無理だなと悟った。
とはいえ私が見張りの1人に加わる事で、親は1人ずつ外出が出来るようになった。
さっそく、お前だけは俺の気持ちわかるよな?としつこく同意を求められたり、敵か味方か試すような言動に揺さぶられた。〜って知ってる?と、次々になぞなぞを出して、教えてやろうかと絡んでくるのも最高にウザかった。
病気だとわかっていても、1日で兄弟が大嫌いになった。
今まで私をお前、なんて呼ばなかったくせにどうした?急に家族を支配してる気になって。親をいたぶりつくしたら、最後私に向かってくるんだろう?お前だけは好きだと言いながら、最後のエサにとっておいてるだけだろう?新しいオモチャが来たぐらいにしか思ってないだろう?
そう言ったら目を泳がせて黙ったが。図星だったか。都合悪いことは即座に消去なさるのが特徴なので、こちらも遠慮などしてやらない。
負けたらすぐに、別の喧嘩をふっかけてくる。そしてまた負けて「まっお互い様だよね」とふざけたことをぬかす。
「怒らせた方が使う言葉じゃないねwそういう所じゃない?」と言ったらまた黙る。ほらほら急いで消去しなよ。でもね、他人は忘れてなんかくれないよ。
自殺するぞ監禁されてると通報するぞと、両親を脅し衰弱させ、実家に籠城してるような兄弟に、容赦などしない。
私は酷い人間で結構だ。
しかし、私には私の想いがあった。
私たちは友達のように育ち上下関係はなく、一度も喧嘩したことがなかったのだ。
だから、さよならの気持ちで一生分の喧嘩をしてやった。
私がもっとも身近なライバルで、嫌な奴だったなら、兄弟は社会人になり競争社会に出ても嫌な人間に対処できたんじゃないかって、そう思ってきたからだ。
親は私の口撃を止めはしなかった。
変な話、私が刺激したせいで自殺するなら、それでよいと思った。
父が母が育て方を後悔し自分の人生は何だったんだと思い詰めてる姿はもう沢山だ。そこを過ちにされてしまうと、私まで間違って育ったことになってしまうじゃないか。
お前のせいで死んだんだー!と、それで終わりに出来るなら、もうそれでいいやと。
兄弟の事を思うと私の未来は暗い。残念に思う。
でも、私はこれまで幸せだったし、この先いろんなその時がやってきても、きっと乗り越えると思うのだ。
両親が生き抜く姿を見守りたい。
これは、夜中に書いたラブレターみたいなものだ。朝には書いた事を後悔してるだろう。おわり