うちの父の話をします【ヨリヨクラボ メルマガ】

こんにちは、ネクスウェイの米澤です。
あっという間に自分の執筆回が回ってきて、季節の巡りを感じます。

なんと今年は梅雨明けが8月までずれ込む可能性もあるようです。
…と書いていて、長引く梅雨よりも
8月がすぐそこまで迫っていることに驚きました。


さて、季節はどんどん移ろいますが、
私はというと実家に帰らない期間の最長記録を更新し続けています。
(メルマガ担当回のたびに書いている気がしますが…)

あれだけ毎月秋田に帰っていたのに、
とりわけ夏は、美味しいものがたくさんあるのに。


そういえば今朝、父から「そろそろ旬だから、週末枝豆送ってけら(送ってあげるよ)」と言われました。
今朝、というのも、実は私、毎朝、父からのモーニングコールで目を覚ますのです。

この話をたまにすると珍しがられることが多いので、
今日は人生で会っていない期間最長記録を更新中の、この父の話を
ちょっと書いてみようかなと思います。


話を戻しますが、私は毎朝、父からの電話の音で目が覚めます。
電話に出た時には寝ぼけ半分の脳も、前の日の出来事やその日の予定について話すうちに
段々と冴えてくるものです。
最後は必ず、私より少し早起きの父がテレビで得た
その日の東京の天気と星座占いの結果を聞いて電話を切る、というのがお決まりになっています。

時間にして、5分。

大して長くもないですが、これを毎日、
私が中学にあがり、父が単身赴任になった頃から15年以上続けているというと、
大抵とても驚かれます。

中高を卒業して、大学生になっても社会人になってもこの習慣は変わらず、
私はすっかり未だに、その日に傘を持つかどうか、
着るべきラッキーカラーの服はどれなのか、
この電話頼りになっています。


ですが、この朝の習慣が半年間途切れたことが、過去に一度だけありました。

大学2年の夏、父が脳出血で単身赴任先で突然倒れたのです。

その日の4日後は、私の成人式でした。
雪深い秋田は成人式をお盆の時期に行うのですが、私の成人式に合わせて
父は赴任先から、私は都内の大学近くのアパートから、
それぞれ帰省してお祝いをする予定でした。

それが、ある日そろそろ眠ろうかという頃、
突然母からの電話が鳴り、
そういうわけだからこれから父の赴任先に向かってみるというのです。

当然その日は全く寝られず、父との最後の電話を思い出していました。

ほとんどお休みしたことのない朝の電話なのに、
夏休みで早起きがいらないという理由で
その時に限って3日くらい間が空いていました。

そのことを少し悔やむ気持ちと、
悔やむことで事態が悪化しそうだと考えてしまう気持ちのせめぎ合いを
今もよく覚えています。

結局、来週は一緒に焼肉でお祝いしよう、と言ってあの日電話を切った父が目を覚ましたのは
そこから数週間後のことで、
言葉が少しずつ戻りはじめるまでには更に半年くらいかかりました。


ふと仕事で辛くなった時、どうしたらいいか分からなくなった時、
社会人の先輩である父とああだこうだと語らいながら酌み交わすお酒の味を、
なんとかして知りたかったと悔しく思う時もあります。

それでも、言いたい言葉が出てきづらい失語症と
舌に残る麻痺で発音が難しい構音障害と、
しぶとく付き合いながら発されるその少ない言葉数に
日々支えられていることが今の私の全てで、この状態に満足もしています。


まして、口の動きを見ることが出来ず
しっかりした発音が必要な“電話”という手段で、
毎日意思疎通をすることがどれだけ大変か計り知れません。

それでも父のリハビリのためにこの習慣が再開されたわけでは全くなく、
少し話せるようになった父が朝の決まった時間にまた電話をかけてくるようになったことは
ごく自然な流れでした。

病気云々の前に家族に対してあまりにもマメなことは父の個性であり、
私は私で、その電話がないと毎日の服装すら決められないのです。


少し病状が落ち着いた今思い出すのは、
人生でもう一度だけあった、父と思うように話せなくなった期間のことです。

父が倒れる約半年前、両親の結婚記念日のお昼頃「おめでとう」の電話をしようかと少し迷って、
まあ夜にすればいいや、と思ったら
なんとそこから二週間連絡がつかなくなったことがありました。

2011年3月11日、東日本大震災の、その日です。


コロナがあったり、先日の九州豪雨があったりするとやはり似たようなことを思いますが、
私は会いたい時・会える時に、会いたい人に会いに行けているのか、
話したいときに話せているのか。

今はこんな時期なので、気持ちのままに会うことは難しいですが、
せめて会いたいをしつこく伝え続ける自分でいたいなと思います。
それが、自分にとっても良かったりするものなのだということに、最近気づきました。

仕事でどうしようもなく行き詰まったときに
父がお酒を飲みながらだらだらと垂れる講釈は聞くことができなくても、
会いたい人がこんなにいるんだから!と思うことで、
まだもう少し、がんばれるような気がしています。

さて来週は、前回ディズニーキャスト時代のお話が大好評だった
ちひろちゃんからお送りします!


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