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「託されたもの、任されたものにちゃんと応えられるように」──市川太一インタビュー(後編)


声優としての活動も10年目に差しかかった市川太一さんに、印象的だった役や出来事について振り返っていただいたインタビュー。後編では、これまで声優を続けてきて思ったことや、ご自身のアイドル的存在についてアツく語る「一問一答」など、プライベートにも迫りました。

プロフィール

いちかわ・たいち●2月4日生まれ/東京都出身/ヴィムス所属/主な出演作品は、「神之塔 -Tower of God-」(夜/ジュ・ビオレ・グレイス)、「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」(清宮光瑠)、「終末のハーレム」(水原怜人)ほか。

今の自分の演じ方にも疑問をもたないといけない

──さまざまなキャラクターを演じるために普段からやっていることはありますか?
市川 芝居の引き出しを増やすためにも、人と会って話してみて「この人だったらこう感じるかな?」といったことを考えるようにしています。自分のなかにもっているものだけじゃなく、そうやって人と会話したり、現場でほかの方たちのお芝居を見たり、映像作品を見たりして、自分にないものを取り入れていく。そうすると、自分とは全然違う視点やアプローチがあることが知れますし、「必ずしも正解はひとつじゃないんだな」と実感できます。

──現場で見たほかの方たちのお芝居のなかで、最近特に印象的だったことは?
市川 「神之塔」を収録して思ったのが、内田雄馬くんのすごさです。彼が演じる王野成というキャラクターの役柄もありますが、セリフに引力があるというか……言葉で引っ張っていく力がある方だなあというのを感じました。お芝居だけじゃなく、モチベーターとして現場全体を引き上げてくれる存在ですし、助けていただいた部分がたくさんありました。そのほかにも、引き出しを増やすという意味ではないかもしれませんが、成功している人の本を読んだりもしています。アスリートの本を読んでストイックな姿勢を勉強したり、「自分ももっと頑張らないといけないな」と刺激を受けるので、行き詰まったときに読んでいます。

──特に印象的だった本はありますか?
市川 ジョッキーの福永祐一さんの「俯瞰する力」は印象的でした。もともとジョッキーとして成績優秀な方ですが、ナンバーワンになるためにそれまで積み上げてきた基礎などをすべてかなぐり捨てて、ゼロからスタートしたそうで。フォームから何から全部変えたら念願だったダービーで勝てるようになったと書いてあって、これまで積み上げてきたものをゼロにするってすごく怖いことだと思うのですが、そういう作業をやっていかないといけないんだなと思いましたし、今の自分の演じ方にも疑問をもたないといけないなと思って、ハッとさせられました。

心が折れかけたときに、役が自分を引き留めてくれた

──2015年から声優として活動してきて、改めておもしろさを感じる部分とは?
市川 学生時代はずっと部活しかしてこなかったので、友達とどこかに遊びに行くような〝ザ・学生〟みたいなことってあまり機会がなかったんです。当時できなかったことを役を通して体験して、失われた青春を取り戻すことができるのは、声優をやっていておもしろいなと思います。一方で、自分がやれなかったことや成し得ないことでも、想像を補完しながら言葉に説得力をもたせないといけないのが難しいですね。

──ターニングポイントなどはありましたか?
市川 「自分は今後も声優を続けていけるのかな?」と心が折れかけることもありましたが、そういったタイミングで主演が決まったりすることが結構あって。役が僕のことを引き留めてくれているのかなと、この10年間声優を続けてきて感じています。役との出会いや巡り合わせでなんとか頑張ってこれましたし、応援してくださる方や僕に役を任せてくださる方がいるから、僕は今こうして声優としてここにいるわけで。託されたもの、任されたものにちゃんと応えられるようにこれからも頑張りたいです。

──今感じている課題は?
市川 〝自信〟だと思います。俯瞰して把握しすぎているがゆえに、落ち着いたところに自分を置こうとするので……現場でも、2つのプランをもっていても無難なほうを選んでしまったり(苦笑)。そういうところを壊していきたいです。声優も10年目に差しかかってくるタイミングで、こうやっていろいろと深いお話をさせていただく機会を設けていただいてありがたいです。今後とも皆さんの期待に添える役者になれるように頑張って参りますので、応援よろしくお願いします。

▼▼市川太一さんに一問一答▼▼

Q1 好きな色は?
市川 オレンジです。元気になる色だから。寒色系の色を身につけることが多いのですが、色はオレンジが一番好きです。

Q2 出身地の自慢は?
市川 東京なので電車やバスが一定間隔でくることでしょうか(笑)。乗り遅れてもなんとかなります!

Q3 カラオケの十八番は?
市川 ほとんどカラオケには行きませんが、昔歌っていたのは秦基博さんの「鱗」ですね。曲が好きだし、歌うときのキーもちょうどいい感じでした。

Q4 自分の性格をひとことで表現すると?
市川 まじめ。小心者なので悪いことはできない。それゆえのまじめです(笑)。やんちゃだったことはほとんどないです。

Q5 好きな物、苦手な物は?
市川 好きな食べ物はカレー。自分でも作りますが、最近は鶏むね肉でひたすらドライカレーを作って冷凍保存しています。苦手な食べ物はほとんどないですね。小さい頃はひどい偏食で、エビフライとかハンバーグもダメでした。食べられるものがなさすぎて、ご飯にウーロン茶をかけて食べたり……親泣かせでしたね(苦笑)。

Q6 好きな季節は?
市川 冬が過ごしやすくて好きです。寒かったら着込めばいいから温度の調節もしやすいですし、冬の服装が好きです。

Q7 よく使うLINEスタンプは?
市川 ほとんど使いませんが、マネージャーさんとやりとりするときに「よろしくお願いします」とか「了解です」みたいなスタンプは使います。

Q8 自分にとってのアイドルは?
市川 競走馬ですね。ドウデュースという馬が好きでずっと応援しているので、レースがあるたびに応援につい力が入ってしまいます。ドウデュースの世代の馬たちは、ちょうど僕が競馬を始めたぐらいの年に出会ったので思い入れがすごく強いです。

Q9 1日のなかで好きな時間は?
市川 夜10時くらいのまったりしている時間が好きですね。「何しようかな?」「お風呂入ろうかな?」って考えながら、結局ぼーっとしちゃってます(笑)。

Q10 座右の銘は?
市川 部活の顧問の先生がおっしゃっていた言葉で「当たり前を積み重ねたら特別になる」ですね。例えば、挨拶ひとつをとってもできる人、できない人っているじゃないですか。だから、そういうところから丁寧にひとつひとつやっていこうと思っています。

【撮影:福岡諒祠/ヘアメイク:横手寿里/文:とみたまい】