ミスドの思いド

 私はこの文章を、とあるミスドで書いている。
コーヒーがおかわり自由なのはありがたい。
しかも美味い。
コーヒーと言えば、甘いドーナツがお供なイメージだが、意外とエビチリも合うことに今日気が付いた。塩気のあるパイがいい仕事をしている。

 今年の初め、娘が学校を嫌がりだした。
行き渋り、というやつだ。
週に一度のペースで学校を休んだ。
朝はちゃんと起きる。ごはんも食べる。着替える。
玄関を出る直前、それは突然やってくるのだ。
「いやだ、いやだ、いやだ…」
何かを恐れている娘を見て、私も恐怖に駆られていた。
『どうなるのだろう?』
と。
今思えば『行かなければならない』という固定概念に、私の方が囚われていた。
苦しかった。

「甘いものが必要だ」

そう思った。
甘いもの、と言えば、ドーナツだ。鉄板だ。
娘が登校できた日は、吸い寄せられるようにミスドに来た。
その頃の限定ドーナツは、仏の某有名パティスリーとのコラボ。
普段より少し高級感のあるドーナツ。
ショーケースに並んでいるのを見るだけでも気分が上がる。
見た目が美しいのでトングで取る際、形を崩してしまわないか、とてもドキドキする。
そっとトレイの上に乗せた途端、美しいそれは急に『私のもの』になる。
支払いを済ませ、席に着くと、私は不登校に関する本を読みあさった。
ドーナツにはしばらく手を付けない。
コーヒーだけで集中力を高める。
落ち着いてきたころ、ドーナツを食べる。
本を読む。コーヒーを飲む。外を眺める。ドーナツを食べる。
甘い。苦い。甘い。胸がキュッとなって、ホッとする。
色んな感情に身を任せる。
コーヒーがおかわり自由なのは、本当にありがたい。

 現在の娘は、とりあえず学校に行けている。
新型コロナによる休校を挟んで社会も、私も娘も、変化があった。
ミスドは座席数が少なくなっていて、ちょっと寂しい。
そうだ、ハロウィンドーナツを買って帰ろう。
頑張っている君にも、甘いものが必要だ。


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