『ハイスペックママはご注意ください。』
続きです。
6)ハイスペックママはご注意ください。
スクールの保護者には、働いているお母さんと、専業主婦の方と両方いるけれど、どちらのパターンも、自分自身が、高学歴だったり、資格を持っているケースが少なくない。
子供を育てながら、仕事と両立できる機会は、名古屋のような地方都市には、多くない。
十分な時間があり、かつ能力も高い女性たちは、子育てにも、完璧なプランを練り上げることができる。
毎日、完璧なまでのスケジュールに埋め尽くされた生活をしている、小学校高学年の男の子の最近のつぶやきを思い出した。
「僕、自分の空いてる時間に、自分の好きなことをやっちゃいけないって、なんとなく思っているかもしれない。」
出口先生との昨年の対談では、保護者から『とてもよいお話を伺えました。』『肩の力が抜けました。』と、感謝の言葉が溢れたが、その後の塾通いは、やめさせられない、という。
海外で出会った優秀な学生達に、小学校時代を、どのように過ごしたか、職業柄、よく、きいてしまうのだが、『連日のように、夜遅くまで塾に通っていた』という学生に出会ったことがない。
「毎日、塾ばかり通っていたら、主体性を、無くしてしまいますよね。」
出口先生が、おっしゃった。
「世界で言われているのは、これからの時代に必要なのは、
『自己肯定感と執着力』。
好きなことを最後までやる力は、ベンキョウより大事なんです。」
そうですね。
「でも、和世先生、そうはいっても、現実は、いい学校に行けば、いい大学に行ける、そのためには、小さい時から、塾にも通わせないといけないという気持ちになります。」
こんな保護者の言葉が頭をよぎる。
7)世界の変化
大学までしか、多くのお母さん達は考えない。それから先は、自力で、ということでもあるのだろうが、
ここから先の時代は、いい大学に入れば、いい仕事につけるという具合にはならない、という感覚は、あまり無いようにに思う。
「今すでに、いい大学から試験を受けて、安定した人生を送れる就職先であるはずの官庁などでも、3年以内に、30%の若者が辞めていますからね。」
出口先生がおっしゃった。
前回、出口先生との対談に参加した保護者からは、
『子ども達が大人になる頃には、人手不足だから、職にあぶれることはないというお話を聞いて、肩の荷が降りるような気持ちになりました。』
『 ‘好きなことをやらせるのが良い。’ という言葉が心に残っています。』
という言葉が聞かれた。
でも、子ども達は、高学年になると、エスカレーターに乗るように、塾通いを始め、友達と外で遊ぶ時間や、本を読む時間は、削られていってしまう。
出口先生は、先日、対談に参加したお母さん達に想いを馳せるように、優しさとある種の願いを込めた様子で、こう解説してくださった。
「人間暇になるとロクなことを考えませんから。全ての情熱を込めて子供にかかる。生きた社会から切り離されて生きているお母さんたちも被害者なんですよ。」
「優れた能力を持つ、優秀なお母さんだけにおかしくなる。賢いお母さんが、完璧な教育プランを作ると、子供は逃げ場がない。理屈にも合ってるから、反論もできない。あなたのためを思って、これこれ マルマルだから、こうした方がいいのよ、と言いった具合に。」
「お母さんが変わらないと(仕事をしないと)世の中の変化がわからない。」
一方で、働いているお母さんたちは、専業主婦の人たちのように、子供に時間をかけてやれないことを、後ろめたく思っているお母さんも少なくなく、
‘働きたくて働いているお母さん’も、‘働かなければならなくて、働いているお母さん’も、
また、‘好きで専業主婦をしているお母さん’も、‘仕事と子育ての狭間で、専業主婦の道を選んだ人’も、
みんながハッピーになるには、どうしたら良いのだろう。
8)どんどん新たな仕組みを作る
出口先生は、背景の異なる子供達が相互に交流することで学びあうという、スクールでクラウドファンディングにも取り組んでいる 『まぜまぜプロジェクト』 も、応援下さっている。
オンラインのプラットフォーム上で、日本の異なる背景の子どもだけでなく、
世界中から、子ども達が参加できたら、とても素晴らしい。ダイバーシティーを学ぶ、世の中の変化を肌で感じる、これ以上の場はない。
世界中から留学生が集まるAPUの学生さん達に、お力を借りし、
その場に、出来れば、保護者の皆さんにも参加してもらいたい。
そんなことも、ご相談したところ、二つ返事でご承諾をいただいた。
出口先生は、新しい取り組みや、チャレンジについて、いつも、どんどんおやりなさいと背中を押してくださったり、応援してくださる。
四角四面なことが多い日本の社会の中で、そんなふうに応援してもらえることは、大人でも、心がホッとするし、柔らかな気持ちになる。
そうだ、あのことも、相談してみよう。
9)お金の勉強
「先生、あの、まぜまぜプロジェクトで、企業にもご支援をお願いしているのですが、お金の教育もやりたいと思っています。
ハーバードでファイナンスのレクチャーを90分受けて、複利のお勉強とかもして、子ども達も、教えていただいたことは、理解していたのですが、レクチャーの
最後に、もう一度、‘それでは、みなさんは、持っているお金を、どうしますか?’との、質問に、
子ども達全員、やっぱり、なんかあった時にために、タンスに入れておきます。
と答えたんです。」
「どうしてなんでしょう。」
出口先生のお金の本も拝読した上で、質問をしてみた。
「それ、どうしてだと、思いますか?」
「なんでか、わかりますか?」
その先の出口先生のお答えに、私は、うなってしまった。
「そういう教育を受けていないからなんです。」
「他人事なんですよ。」
学校でも、塾でも、教わったことを、『自分のこととして、考えてみる』、という教育を受けてないからんです。
『これを覚えなさい』、『これを解きなさい』、といわれてやっているから、自分ごとではないですよね。
回路を開かないと、自分ごとにはならない。
10)他人ゴトと自分ゴト
例えばね、
海外の津波にニュースを見たら、普通の人は、かわいそう。と思うかもしれませんが、
自分には、関係ないことと、大半の人は思う。
でも、APUだとね、ルームメイトが、その国から来ていたりしてね、お父さん大丈夫?となる。
同じキャンパスで学んでいて、ルームメイトの友達の友達、といったら、もう、みんな関係がある人になるでしょ。
関係あることは、自分ごとになりやすい。
APUは、自分ごとになりやすい構造になっているんですよ。
他人事である限り、知識は、死んだ知識のままなんですよ。
『死んだ知識で、人間の行動は、変わらない。』
「なるほど、前回、APUで、合宿をさせていただいたとき、学生のみなさんが、
なんというのでしょうか。
みんな、優しい。気立てがいいというのでしょうか。
そういう背景もあるのですね。」
私が、前回のAPUでの合宿を思い出しながら、お伝えすると、
「気立てがいい、ですか、それは、嬉しいですね。」と、出口先生は、好相を崩された。
「自分ゴトで考えないと。これを勉強することは、自分の人生にどんな関係があるんだろう、というふうにね、それでないと、
腹落ちしていない。」
『他人ゴトが、自分ゴトになると、人は、優しくなる。』
最後のこのお話しで、私は、とても、気持ちがあたたかくなった。
3月のAPUでの合宿で、子ども達が、ものごとを、『他人ゴト』から、『自分ゴト』にするきっかけ
となるような体験ができることを心から願う。
昨年から、溜まっていた、たくさんの疑問が、少しずつ解きほぐされていく感じがした。
今晩は、この他にも、浦島太郎に代表される、民話についての考察、引きこもりの問題、
出口先生のお嬢様が学ばれたシカゴ大学の図書館のこと、本についての話し、人間の孤独について、
など、話題は、多岐に渡った。
それらの話題についても、時間を見つけて、文字にできたらと思う。
最終章) スクールの子ども達へ
帰りがけ、出口先生から、中学生向けに書かれた、ご自身のご著書 『おいし人生を生きるための授業』
を、スクール生に向けて、プレゼントいただいた。
『幸せって何だろう?』『勉強って何だろう?』 『社会とは?』 『仕事とは?』
と、4つのテーマ(時間割)に分かれていて、子ども達に、語りかけるように、
普遍的なテーマについて、わかりやすく説明されている。
スクールに帰ったら、子ども達と一緒に読もう。読み聞かせもしたいかな?
(翌日、名古屋のスクールに帰って、子ども達に、その本を見せると、『勉強って何だろう?』から読み始める子が一番多く、子どもの個性によって、幸せって? だったり、高学年になると、仕事とは?から読み始めたりして、反応が様々で興味深く感じた。社会や政治については、やはり、こちらからの働きかけが、少しばかり要りそうだ。)
今晩は、この後、お宿に帰ったら、今度は、温泉宿の部屋のテレビで、夜10時20分から、
出口先生が出演されている 『100分で名著』で、貞観政要を紐解きながら語られる 『優れたリーダーの条件』について、を観る予定だ。
「3畳の部屋には、テレビはありますか?」出口先生が気にかけてくださった。
わたしが、今回、昔の湯治の宿のスタイルの3畳の部屋に泊まっていることを、会食の冒頭でお話ししたことを覚えていてくださった。
たった今まで、目の前でお話ししていた方を、今度は、テレビのブラウン管越しに観るというのも、
なかなかにエキサイティングだ。
その前に、温泉に入れるかな。
今夜は、年始早々、素敵な時間をいただいた。
今年は、なんだか、いいこと、たくさん、ありそう。
出口先生、貴重なお話・アドヴァイスの数々、本当に、ありがとうございました。
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