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【新型コロナウイルス】寄贈マスクに添えられた漢詩に想う

新型コロナウイルスの感染拡大が広がるに連れ、日中でマスクの支援が行われています。その荷物に漢詩が書かれていることが話題ですね。

山川異域 風月同天

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住む場所が違っても、風月の営みは同じ空の下でつながっている

日本から送ったマスクの箱に、漢詩が書かれていたことがニュースになっていました。同じ痛みとして分かち合おうというメッセージですね。

唐全盛の時代。
日本からは多くの修行僧が唐に学びに行きました。その際日本の長屋王が中国・唐代の高僧に送った1000着の袈裟に「山川異域 風月同天 寄諸仏子 共結来縁」(別の場所に暮らしていても、自然の風物はつながっている。この袈裟を仏弟子に喜捨し、共に来世での縁を結ぼう)と刺しゅうされていたとされています。

青山一道 同担風雨

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同じ山を見る近隣同士、ともに風雨に耐えよう

先日中国からマスクを送ってもらった返礼として、アリババ創業者ジャック・マーさんより寄贈された箱にも漢詩がありました。

唐代の詩人王昌齢(Wang Changling)の送別詩「送柴侍御」の一節だそうです。国境なんて関係ない、苦しみを分かち合おうというメッセージは、今の日本にはありがたいものですね。

雨森芳洲と漢詩

このエピソードは私にとって、漢詩文化との思わぬ再会でした。

1990年、当時の盧泰愚大統領が訪日し宮中晩餐会で「雨森芳洲は、誠意と信義の交際を信条としたと伝えられます」と発言がありました。私はこのとき新聞社勤務だったこともあり、「雨森芳洲(あめのもりほうしゅう)」ってだれだ?と興味を持ち調べたことがあります。

調べれば調べるほど、目からウロコのことばかり。

語学が達者
雨森芳洲は江戸時代中期の儒学者ですが、鎖国をしていたこの時代に中国語と韓国語が話せたそうです。そして韓国語通訳として対馬藩に仕え、対馬-韓国の貿易(密貿易)を仕切っていたとのことでした。

朝鮮通信使
朝鮮通信使、ご存知ですか?鎖国していた江戸時代でも、李氏朝鮮の王と江戸幕府の将軍が新しくなったたびに、お互いの国に挨拶に行っていた使節団がありました。李氏朝鮮から来る使節団を朝鮮通信使といいました。釜山-下関-瀬戸内海-大阪-京都-中山道-江戸。日本史の教科書には一切出てきませんが、鎖国の時代に外国人一行が日本を横断していたのですね。雨森芳洲はこの先導役、もてなし役を務めていました。

中国を中心とした文化圏に取り込まれていた時代。漢詩は李氏朝鮮でも文化人の必須項目。江戸幕府は屈指の知識人、雨森芳洲に漢詩のもてなしを担当させます。李氏朝鮮の役人の漢詩に対し、最上級の漢詩で返礼した雨森芳洲が高く評価されたとあります。

その頃まだ20代だった私は、文化的成熟度を国家間で競い合うこの時代にとても憧れたものです。なにしろ大好きな鬼平犯科帳の時代にも一度朝鮮通信使が来ているのですからね。

中国文化圏にあった時代はすでに遠く、現在、韓国は漢字を教えなくなり、日本も明治以降は漢字は韻律が変わってしまい正統派の漢詩ができなくなっているそうです。

しかし表意文字としての漢字は、音がわからなくても見ただけで気持ちを伝えます。漢詩の文化は今あらためて必要となっているのかもしれません。

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