BUMP OF CHICKENの新曲がEDMだった

 僕の友人に、BUMP OF CHICKENのファンがいる。それ自体は全くもって珍しい事ではないのだけど、そんな彼が、先日公開されたバンプの新曲には苦言を呈したいという。元々、彼は割と保守的なタイプのファンである。「ray」で電子音を大々的に投入し、更には初音ミクとのコラボまでやってのけた時にも、彼は疑問を感じていた。

 彼と話をしたあと、僕は別の友人と、一体バンプの新曲に何が起こっているのかを予想することにした。僕は、「バンドという制限がある以上はそれほど予想外の事は出来ないだろう。SEKAI NO OWARIみたいにEDMでもやるのなら話は別だろうけど」と答えた。僕もバンプは好きだ。今までのアルバムは全て聴いてきている。彼らとEDMの距離が遠いことくらいは分かる。だから、このEDMという発言は冗談だった。

 それでは、聴いてみよう。

 カラフルなレーザーの飛び交う、すっげぇキラッキラの空間の中を踊る、西欧諸国の戦士のようなBUMP OF CHICKEN。優しい手触りでありながら、輪郭のはっきりした、彼らの持ち味ともいえるギターのコードストロークが響く。時に優しく語りかけるように、時には力強く鼓膜を突き刺す、抑揚の効いたボーカル。そして、常に4つ打ちのキックが鳴り続け、最も盛り上がるパートで印象的に挿入される、ハードなシンセの音色間違いなくEDMだ

 いやぁびっくりした。荒削りなギターロックと共に思春期の少年の内面をえぐるように書き出して、挙げ句の果てには綾波レイへのラブソングまで作り出した、非リアのカリスマみたいな存在のBUMP OF CHICKENが、2016年現在、リア充音楽のシンボルともいえるEDMを鳴らしてるんだもの。

 とはいえ、流れから考えると実はそれほど違和感は無かったりする。ドーム公演、紅白歌合戦、そこでも演奏された新たなアンセム「ray」など、ベスト盤のリリース以降のバンプは明らかに舵を取る方向を変えた。僕は、彼らは国民的バンドになる覚悟を決めたのだと思っている。「ユグドラシル」までの彼らは確かに少年達のカリスマだった。実験の季節ともいえる「orbital period」、「COSMONAUT」を経て、更に過去を総括し、辿り着いた「RAY」。なんとなくだけど、今はバンプにとって二度目の黄金期なのではないかと感じている。そして、今一番みんなが一つになる音楽はもしかしたらEDMなのかもしれない。興味深いのは、この曲が来たる新作のリード曲だということだ。数多のゼロ年代ロキノン系がその勢いを失った現在、変わる事を何一つ恐れない彼らはどこまで行くのだろうか。僕はこの曲を結構気に入っている。

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